第5話 求める亡者

 怪物モンスターは求めていた。

 自分には無いものを求めていた。

 いつ失ったのか覚えてはいない。

 目覚めたら既に空っぽだったのだ。

 だから他の生命を喰らう。

 喰らう。

 喰らう。

 喰らう。

 喰らう。

 小さなもの、大きなもの。

 若いの、老いているの。

 動いているもの、動いていないもの。

 逃げるもの、逃げられないもの。

 鋭く尖った骨の手で貫き、舌が無い口で噛み砕き、他の命を啜っていく。

 渇きを満たし、飢えを満たし、思いを満たすため。

 しかし幾度喰らってもそれらが満たされることはまるでない。

 あぁ、足らぬ足らぬ。これではまるで足らぬ。

 もっと、もっともっと喰らわねば。更に命を吸い上げねば。

 この周りにはもういない。次に行こう。

 命たちが向かった先、そこに強い命たちが集まっているのがわかる。

 行かなければいけない。

 進まなければならない。

 失ったものを満たすためには。

 

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