お風呂に入りたい!ー3
水質の問題からヨーロッパでは入浴が一般的ではないということをご理解いただけたかと思います。
貴重な水を浪費しないために、短時間のシャワーで済ませるのが一般的なようですね。
でも、なぜ私たち日本人はお風呂にこだわるのでしょうか?
それは風土と文化にあるとされます。
まず風土・環境面ですが、日本は高温多湿な気候で汗をかきやすく、土ぼこりも起きやすいことから頻繁に入浴する習慣が古くからあります。
次に文化面ですが、日本のお風呂文化の始まりは、仏教の伝来と同じ6世紀ごろとされます。
火山国である日本列島には、全国様々な場所に温泉が湧き出ています。
当時はお風呂というと、火山によって湧き出た天然温泉か自然の洞窟を利用した石風呂での蒸気浴のどちらかを指しました。
仏教で、お風呂に入ることは「七病を除き、七福が得られる」と説かれていたことから、お風呂に入ることは健康に良いと理解されていました。
仏教の教えが広まってからは、入浴を行うための「浴堂」という施設が寺院に設置されます。
当時の庶民の家にお風呂はありませんでしたが、寺院の浴堂を利用できたため、入浴して体を清める習慣が身についていきました。
宗教的なものではなく、純粋な公衆浴場「銭湯」が登場したのは江戸時代になってからです。
当時の銭湯は、蒸し風呂の一種である「戸棚風呂」という形式で、熱く焼いた小石の上に水をかけて湯気を出し、上半身を蒸らし、浴槽に膝の高さ程お湯を入れ、下半身を浸す仕組みです。
今でいうサウナ方式ですね。
浴室の湯気が逃げないように、出入口に引違い戸を付け湯気が逃げるのを防いでいました。
開閉が頻繁になると湯気が逃げてしまうので、工夫されたのが「
三方はめ板で囲まれた小室に浴槽を置き、出入口に天井から低く板をさげ、湯気が逃げるのを防ぎました。
客はこの板をくぐり出入りします。
家風呂が普及したのは、慶長年間の末頃と言われます。
たっぷりの湯に首までつかる「据え風呂」は井戸水を沸かして入れるので「
湯舟は湯量が少なく済むよう、人一人が入れるほどの木桶を利用。
浴槽の内側の縁に通気口のついた鉄製の筒をたて、この中に燃えている薪を入れます。
通気口から入る風で薪が燃え続け、鉄の筒が熱せられることによって湯が沸く「鉄砲風呂」が発明され、江戸の主流となりました。
一方関西では、桶の底に平釜をつけ、湯をわかす「五右衛門風呂」が普及しました。
この頃には、柚子湯や菖蒲湯などの薬湯を専門にした公衆浴場も開設していたようです。
『千と千尋の神隠し』ぽいなあ。
明治以降になると、銭湯も蒸し風呂から現在のようなお湯をたっぷり張ったお風呂へと変化したそうです。
また、戦後になると欧米文化が庶民に浸透し、住宅の進化とともに『家風呂』が各地に普及していきます。
電気・ガスを 利用した様々な風呂の登場後、温度自動調節機能や乾燥機能付きの浴室や、ジャグジー、水中照明、 テレビ付きなど、暮らしのエンターティメントのひとつとして、日本の家風呂は独特の発展を遂げたのです。
これも『軟水』が『豊富』な日本だからこそ発展した文化と言えるでしょう。
それにしても、『入浴習慣をつけて石鹸を使わせることにより、人々が健康でいられるように衛生環境を改善しよう!』と考えるお話は異世界転生物の定番としてよくありますが、『6世紀に仏教という宗教を利用して、民衆の衛生環境や衛生理念を改善した』人々が実際にいたという事に震えます。
特定の宗教を信仰していない無宗教な人や、『代々◯◯宗だから…』的なふんわり仏教徒な人が多い日本人ですが、仏教って生活に結構強く紐づいているもんだなあ。
ちなみに筆者はふんわり仏教徒?な人です。
クリスマスもお祝いするし、『聖☆おにいさん』も結構好きです。
ガチ目な仏教のことは、ほとんど知りませんので悪しからず。
ということで、安易にお風呂を作っても、その水が入浴に適しているかわからないから気をつけてね!というお話でした。
あ、軟水処理装置は色々種類があるから頑張って日本から輸入してください。
自作は、多分、大変だから。
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