水が合う?合わない?ー1
さて、生活が安定したら食にこだわりたい。
特に故郷の味である和食や日本食を食べたい!
そう思うことはあるでしょう。
異世界ものの定番として、米食や醤油や味噌、昆布で出汁をとった日本食を作って異世界で大ウケ!という展開を目指したいですね。
でも、少し待ってください。
前回までの『水』の問題は、『食』にも大きな影響があります。
テレビなどで料理人さんが
「ウチは水にこだわっているので、何処そこの湧水を毎日汲みに行っているんです」
なんて話をしているのを見た事はありませんか?
一流の料理人だけでなく、通常の料理においても水は重要です。
『軟水』と『硬水』では、合う食材・合わない食材があるのです。
勘違いして欲しくないのは、『軟水』が優れているとか『硬水』が劣っているという話ではなく、あくまで合うもの・合わないものがあるという事です。
そのことを理解していないと、せっかく用意した食材も美味しく無くなってしまいます。
いくつか例を挙げてみましょう。
お茶の場合、好みによって水の種類を変えるのがおすすめです。
基本的に、日本茶を入れる際は『軟水』を使用するのがよいとされます。
お茶の成分がしっかりと抽出されるので、うまみ・苦味・渋味がバランスよく出て、お茶本来の風味を最大限に楽しめます。
日本茶や紅茶の渋味が気になる際は、『硬水』を使用するのがおすすめです。
硬水にはミネラルが豊富に含まれており、そのひとつであるカルシウムが緑茶に含まれる「シュウ酸」と結合することによって渋味が和らぎます。
これにより、日本茶や紅茶がまろやかな味に変化して飲みやすくなります。
お茶は使う水によって味が異なるので、好みに合った水を使用するようにしましょう。
コーヒーは、『軟水』『硬水』のどちらを使用するかで風味が変わります。
『軟水』で入れた場合、軟水本来のまろやかな甘さを感じられる上に、コーヒーの酸味が際立つ仕上がりになります。
まろやかな口当たりでコクが感じられるコーヒーを味わいたい方におすすめです。
『硬水』で入れた場合は、酸味が打ち消されて苦味が際立つ仕上がりになります。
硬度が高ければ高いほど苦味が際立つので、深みを感じられるコーヒーを味わいたい方におすすめです。
水の種類でコーヒーの風味は変化するので、「酸味」と「苦味」のどちらを味わいたいかで使い分けるのがおすすめです。
焼酎を『軟水』で割った場合は、焼酎の原料である芋や麦の味・甘さが引き立つ仕上がりになります。
また、口当たりがまろやかで飲みやすくなるのも特徴です。
焼酎を『硬水』で割った場合は、ピリッとした感覚を楽しめる仕上がりになります。
そのため、人によっては飲みづらさを感じるかもしれませんが、甘さのある食事を合わせるとおいしく飲めます。
ウイスキーを『軟水』で割った場合は、口当たりがなめらかでさっぱりとした風味を楽しめます。
その一方で、ウイスキーを『硬水』で割った場合は味の深みが増し、ウイスキーの風味が強くなります。
お酒を飲む際もコーヒー同様、どのような味わいを楽しみたいかを考慮して使用する水を選ぶようにしましょう。
飲み物の話はここまでにして、料理のお話に入りましょう。
和食を作るのであれば、出汁文化は避けられません。
まずは、基本のお出汁からですね。
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あなたは、味噌や醤油を手に入れました。
日本食の基本、昆布や鰹節で出汁をとってみましょう!
水はこのあたりで一般的な『硬水』を使いましょう。
手順に沿って出汁をとっているつもりですが、出来上がったのはなんだか磯臭いだけのスープです。
………残念ですが、あなたが考えていた美味しいお出汁はとれませんでした。
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美味しい出汁を取るには、素材はもちろん、そのうま味成分を抽出する基本となる水の硬度が重要となります。
それが、地域で違う『軟水』と『硬水』の違いです。
日本では、ほとんどの地域で『軟水』が使用されています。
『軟水』は、和食出汁の基本の一つである昆布の旨味成分グルタミン酸を効果的に抽出することができます。
グルタミン酸は、乾燥昆布に浸み込んだ水によって抽出されます。
この時『硬水』を使用すると、硬水に含まれる成分の中でも、特にカルシウムが昆布のぬめり成分であるアルギン酸と結合して昆布の表面に皮膜を作り、十分にグルタミン酸が抽出されなくなってしまいます。
つまり、出汁は『軟水』であればとれますが『硬水』ではとれないという事なのです。
実際に、『軟水』と『硬水』の両方で出汁をとり、料理人などのプロではない一般の方を対象に味の違いを比較してもらう実験をしたところ、95%の方が旨味や甘味が違うことを認識したそうです。
地域別に水の硬度は異なります。
京都の井戸水は他の地域の軟水よりカルシウムの少ない『超軟水』が多いと言われています。
京料理の名店では、井戸水で出汁をとっています。
昆布は『超軟水』の方が出汁が出やすく、関東は関西に比べると『軟水』の硬度が高いので、昆布ではなく鰹節文化が栄えたと言います。
関東でも和食の名店と言われるお店は、水まで関西から取り寄せているそうです。
そのため、『乾燥させた昆布を水出しすれば、出汁なんて簡単にとれるだろう!』なんて考えていると、手痛いしっぺ返しを喰らうことになるでしょう。
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