人喰い族って本当にいたの?ー1

食事中の方は、あまり読まないでください。


グロテスクな表現などはしていないつもりですが、苦手な方はご遠慮ください。



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 突然ですが、『パイレーツ・オブ・カリビアン』はお好きですか?


 ジョニー・デップ主演のディズニー制作の超大ヒットファンタジー映画です。

 この2作目に『デッドマンズチェスト』という作品があります。

 この作品では、共食いをする邪悪な人喰い族が登場します。

 ジョニーが演ずるジャック・スパロウやオーランド・ブルーム扮するウィル・ターナーが、原住民に食べられそうになるシーンを覚えている方も多いのではないでしょうか。

 この人喰い族を演じるエキストラとして、映画ロケ地でもあるドミニカ国に現在でも暮らすカリブ族のコミュニティから、100人余りの人達がキャスティングされ出演しています。


『インディ・ジョーンズ/ 魔宮の伝説』という映画があります。

 金曜ロードショーで何度も繰り返し放送している、ハリソン・フォード主演、スティーヴン・スピルバーグ監督作品の名作アクション映画です。


 この作品に人喰い部族は出てきませんが、未開の地を掻き分けてジャングル奥地の遺跡に辿り着くと、人喰い部族に襲撃された!なんていう冒険小説は沢山ありました。

 ですが、今ではそのような表現を見かけることはほとんど無いでしょう。


 なぜでしょうか。


『倫理的にNG』という事と、『事実に基づかない差別的な表現』だからということでしょう。

『未開な地に住む野蛮な部族だから食人行為もする』などという誹謗・中傷は、名誉毀損だけでなく風評被害にも繋がりかねません。


 デッドマンズチェストに至っては、実際に、ドミニカ国のカリブ族首長チャールズ・ウィリアムズから

『ディズニーは、我々カリブ族の祖先が人喰いの風習を持っていると言う誤ったカリブ族の神話を映画で蔑視してカリブ族を描こうとしている』

『我々カリブ族の先祖はヨーロッパからの征服者たちの侵略を食い止めるべく、立ちあがった為に、野蛮人であり人食い人種であるという言われなきレッテルを貼られ蔑まれてきたのだ』

 という批判を受けています。


 色々な映画や漫画、小説などで『カニバリズム』という言葉を目にしたり、耳にした事がある人は多いでしょう。

 この言葉は、コロンブスによって生み出されたそうです。


 クリストファー・コロンブスは、探検家であり、航海者であり、奴隷商人です。

 スペイン王室の援助を受けて、新大陸発見のため航海に出ました。


 アメリカ新大陸を発見したコロンブスは、発見した地をアジアのインドだと考えました。

 その誤解から、現地の人を『インディアン(インド人)』と名づけました。

 現在では差別的な言葉とされるため、『ネイティブ・アメリカン』になっています。


 また、新大陸を発見したコロンブスは、現地で接触し友好関係を築くことが出来たアラワク人を水先案内人として頼みにし、航海を行いました。

 拙い会話ができるだけで、完全な意思疎通はできない状態で、アラワク人から色々な情報を得つつ航海をしていたようです。


 そんな中、現在の西インド諸島で遭遇したのがカリブ(カリナゴ)族です。

 カリブ族はアラワク人と敵対関係にあったようで、コロンブスはアラワク人から

『カリブ族はアラワク人を襲ってくる。非常に好戦的な部族だ』

 ということを聞いていました。


 コロンブスは、第一回の航海を終えてスペインに戻り女王に報告をあげた後、次回の航海のスポンサーを得るために、スペインの高官に向けて自分の成果を喧伝しました。

 己がいかに勇気を持って未開の地を進んだか、どのような業績を残したか。

 そんな中、実際に食人行為を行っていたのを見聞きした事実は無いのに、一つ『武勇伝』を作り上げました。


 今でいう『話を盛った』というやつです。

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