第2話 先輩のふたり
あわてて転んだ先輩に声を掛けると、先輩は泣きながら私に抱きついてきた。
さっきは咄嗟のことで気づかなかったが、なんだか先輩が少し小さい気がする。これは中学生の頃くらいの先輩かな?
兄弟や歳の近い従兄弟がいるという話は聞いたことがないから、小さくてもこれは先輩なんだろう。
まるで子供のように泣き喚く先輩をなだめる。不思議な気分だ。
「先輩、さっき制服を返せとか言ってましたよね?」
「うん、あのね、あいつにとられちゃってね、それでね...うわああああん」
だめだ、小さい先輩は見た目以上に中身が幼くなっているみたい。
「先輩、とにかく先輩を追いかけましょう!」
よくわからないけど、何が起こったのか確かめなくちゃ。
私は小さい先輩の手を引っ張って、大きい先輩をおいかけた。
「先輩!まってください!」
大きい先輩は特に逃げるような素振りもせず、普通に歩いていたので簡単に追いつけた。
「なんだお前か。」
大きい先輩は私を見てやっぱり少し嫌そうな態度をとったけれど、小さい先輩も一緒に来ていることを確認して、何かを諦めたようなため息をついた。
そして、
「そこの公園でいいか?学校は遅刻するけど話さないわけにはいかないだろ?」
そういって近くの公園に向かって歩き始めた。
公園のベンチに座ると、大きい先輩がまた大きなため息をついて、そのあと口を開いた
「さて、何から話すか…。」
先輩が話してくれないことには私には何もわからないので、とにかく一番気になることを聞いてみた。
「はい!先輩は私のこと嫌いになったんですか!?」
「はぁ?まずそこかよ。」
大きい先輩は呆れたような顔をするが、私には大切なことなのだ。
「ぼくはお姉ちゃん大好きだよ〜」
さっきから放置気味だったが、横にちょこんと座った小さい先輩がスキンシップ多めにアピールしてくる。本当に幼い子供みたいだ。
「はぁ…。そいつは…。なんだ、あれだ、自分に素直というか…。」
「お姉ちゃんすきー。結婚するー。」
「おいやめろクソガキ!」
うーん、意味不明な状況だけど、先輩二人に挟まれてちょっと幸せだぞ。
でも話が進まないのは困るから、ちょっと真面目に質問してみる。
「あ、じゃあ、なんで急に二人に増えたんですか?」
「「朝起きたら二人になってた。」」
大きい先輩は声がハモったことにちょっとムカついてるみたいな顔をしながら続ける。
「そうだな、先週の話になるんだが…。」
「なんかね、クラスの女の子に告白されちゃったの。」
「おい、お前ペラペラと」
「だって恥ずかしがってたら話進まないじゃない。」
素直な小さい先輩がちょっと頼もしい。
「その子、ずっとお友達だったんだけどね。うーんってなっちゃって、ぐぬぬぬってなっちゃって、多分そのせい。」
前言撤回、やっぱり赤ちゃんは頼りなかった。
「だから、お姉ちゃんのこと大好きな僕を切り離しちゃえばいいって思っ...
「まぁちょっと対応に困ってな、少し悩んでいたのが原因だとは思うんだ。その件以外に心当たりがない。」
大きい先輩はわざと少し内容をボカしたいのか、言葉を被せつつ強引にそのまま話を続けた。
ん?今告白された?
わたしの、ふたりの先輩 泡盛もろみ @hom2yant
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