第295話 酔っ払い悟郎

「……………………この年で育児?に悩む事になるとは」

「育児と言うか……『教育』の方が正しいんじゃないか?ピヨ達の行動は、経験不足から来る短絡的なものだろうし。ただ、人の近くで生活をするなら覚えて貰わないと、さっきのは本当に危なかった……」

「…………あれで『弱』だよな?まあ、3羽が2回ずつ放って、合計6回も魔法攻撃を受けたら、結果はああなるか……。しかも今回は、最初の一撃で以前のシローの様に、痺れて行動不能になった所を追撃された形だから、沼の生物は逃げようも無かっただろう…」


 街への帰り道は、ピヨ達の話となった。やっぱりアレはヤベぇよな。これは、先に辺境に戻って従魔登録をして、日々の中で教えて行かないと駄目だコリャ。


「先ずは、辺境に帰ろう。ハウスに入れっ放しの状況が変えられないなら、ピヨ達の事は戻ってから考えた方がいい」

「そうですね…」

「…………今は待ち合わせの場所へ早く行こう。どうやらロシェルが既に待っているみたいだ」


 指定の場所には、父親に肩車をされたロシェルが、キョロキョロと辺りを見回して、俺達の到着を待っているのが見えた。


「すみません、お待たせしたした!」

「ああ、とんでもない!ロシェルが『早く行こう!』と、言って聞かなかったから、こちらが早く着いたんです」


 ロシェルが俺達を見付けて、肩車のまま腰を浮かせてしまい、父親が慌てて降ろしてやる。


「シローおにいちゃん!なにをしていたの?」

「小麦畑で虫取りしてたよ。悟郎さんが虫をたくさん取ったよ〜。チビは虫と小麦を食べる鳥の魔物を狩ったんだ」

「すごい!あのおおきいむし、ぼくもみたことあるよ!とりだって、ぼくとおなじくらいのやつだ!ゴローさんも、チビもちいさいのにつよいなぁ……ぼくもつよくなりたい!」

「そうだな……悟郎さんもチビも、身体は小さいけど、もう大人なんだ。だから、ロシェルより小さいのに強いんだよ。でも人はゆっくり大きくなって、力も強くなるから直ぐには無理だよ。それに強さは1つじゃないから、ロシェルに合った方法を探すんだぞ?」


 ステータス的にロシェルは知力と魔力が秀でてたから、間違ってパワー系に行かれても、望んだ伸びは得られないだろうしな。


「ぼくはなにがつよくなるのかなぁ…?」

「俺には分からないし、それはロシェルが探して見付けなきゃだめだ。迷った時はお父さんやお母さんに聞いてみな?」


 昼食を食べる店に向かいつつ、質問者さんに答えていく。俺の中に君の求める正解はありません。頑張って探してくれ。

 ただ今回の件で、若干、母親の過保護に磨きが掛ったかもしれないがそれは許して欲しい!


「ニャゥニャッ(美味しそうな匂い)!」 

「そうか、もう匂うか〜〜悟郎さんは、美味しい物の探索センサーが優秀だね〜〜」

「ゴローさん、なんていったの?」

「美味しそうな匂いがするってさ。いっぱい動いたから、お腹が減ったんだよ」


 あ!本当だ…いい匂いがやっと俺にも伝わって来た。焼き立てパンと肉の焼ける匂いだな!

 

 スティンムロシェルパパさんが予約を入れてくれたのか、直ぐに個室の様な席に案内された。

 

 席につくと、頼むまでもなく、次々と運ばれてくる料理。悟郎さんの嬉しそうな声が鳴り止まない。

 ああ!!せめて食べ終わってから鳴いてくれ!クチャ食いは、お爺さんになるまで許しません!


「悟郎さん、少し落ち着いて食べようか?」

「ニャオゥン(うるさい)!」

「……行儀悪過ぎ。何でそんなにガッツいてるんだよ?!他のお店では、もっとゆっくり食べていただろ?」

「……………………ニャウ(無理)」


 え?!何で!!

 この飯に何かあるのか?!調べたけど、変な所は無かったぞ…………………あ?……これ…まさか……。



【バインの木の実(またたび) バインの木に生る実。一部の動物や魔物を酩酊状態にする事もある。人が食べた場合は、利尿作用を良くする効果がある 食用可能】



「……悟郎さん、またたびで酔っ払いかよ…………」

「ニャオゥン(うるさい)!!ニャッゥニャォ(お肉全部)!!ニャウニャッ(はやく)!!!」

「しかも、絡み酒とか最悪なんですけど?『解毒』、『回復』……………どう、悟郎さん?」

「……………………………ニャウニャ(平気)…………ニャゥゥニャッ(ごめんなさい)……………」


 最初の方に出て来た、肉の炒め物にナッツぽく絡んでいたのが、刻んだ『バインの実』だった。


 この近くで採れるんだろうな……。今回はしょうがない…不可抗力だ。だけど、今後は絶対に食わせないぞ!!

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