第260話 茶器の購入〜商機を逃すな!
「…………おい、まだあるのか?」
「はい……もうダメですか?もう少し放出したいんですが…。」
「どんだけ容量あるんだよ……。なら、ランティエンスで出難い物を頼むよ。でないと、値崩れさしちまいそうだ。」
ギルドの売却カウンターで、たくさん引き取って貰いたくて交渉中だったんだが…。
特にゴミムシの魔石。
だけど、ストップが掛かったんで、ランティエンスに出難くて、悟郎さんのオッケーが出る物を………。
悟郎さん、フォレストラビットとディアがたくさんあるから肉を売ってもいい?大丈夫?ありがとう!
「…なら、これはどうですか?辺境のフォレストラビットとフォレストディアです。」
「おお!辺境の魔物の肉なら大歓迎だよ!……因みにホロトリは卸せないか?」
「悟郎さんホロトリはどう?結構いっぱいあるから俺は売っても良いと思うんだけど。」
「…………ニャニャゥ(いいよ)。」
「じゃあ、これホロトリです。」
「悪いな、ありがとう!!ドドモラゴンの肉と一緒にいい値を付けさせてもらうよ!!」
肉の種類が増えてきたお陰で、悟郎さんから売却の了解も出た。ホロトリだけは、若干のシンキングタイムがあったけどな。
それにしても、ランティエンスは採取品の受け取りカウンターも広いな!
これは、全部出ししてみたい衝動に駆られる…ドドモラゴン丸ごととか。
「じゃあ、精算の査定控えを渡しておくから、明日カウンターで受け取りしてくれ!」
「ありがとう。よろしく頼むよ。」
「よろしくお願いします!あ、これ良かったらどうぞ。今度、辺境から新しく流通される予定の果物です。」
「おお!良いのか?ありがとうよ!!他の奴らに見せられないから、ここで頂くよ。……良い香りだ。甘いし果汁が凄い!酸味もキツくなくて美味いな〜。今の寒い辺境で採れるのか?」
「はい。寒くなってから採れる果実なんです。ログレスにも同種の果物は無さそうなんで、よろしくお願いします。」
ログレスでもギルド長に出したら、ウチの採取物には無いって、悔しそうにしてたからな。
ギルドに精算を依頼し、街に出ると、案の定引っ付き虫が湧いて来た。
ストーカー禁止令でも出してもらわねぇとダメか?あまりに目障りだったら………あのリーダー風のヤツを飛ばすか。
「………シロー、この店だ。色々な焼き物や金物、調理器具を売ってる。茶器もそうだが、料理を盛るにも良いものが多いぞ。」
「試してみます(買えるかどうか)!」
虫は店にまでは入って来ず、外を張り込んでいるみたいだな。なら、今は放置で品物を見せて貰おう。
「トラキオさん、ここって……」
「………料理人も買いに来る問屋だ。一般向けにも販売してくれるから、シローもきっと気を引かれる物があると思うぞ。」
ええ!特にあのデカイ鍋!!給食で使われていた様な寸胴鍋で、悟郎さんのリクエストに応える為にも是非欲しい!そして、お代わりラッシュに耐える力を俺にくれ!
「すみません!この鍋っていくらですか?」
「はい、そちらは12,000ゼルになります。他の大きさの物もございますよ!」
色々なサイズの鍋を見せて貰い、1番デカイものとその次のサイズを2個購入。蓋が無いから………辺境に戻ったら鍛冶師のキャスレイさんに作って貰おう!
鍛冶じゃねぇけど。無理って言われたら、自分で木蓋を作ればいいな。
「………シロー、茶器を見るのも忘れるなよ?」
「はい!買いやすい物から攻めて、最終的には茶器を…必ず…きっと購入してみせます!」
「………その勢いが必要なんだな…。分かった。」
そして見付けた!ホイッパー!!俺は『
「トラキオさん、混ぜるのに便利な道具はこれですよ!」
「!!………ありがとう!辺境では売ってる調理器具が少ないからな。親父にも買って行く。」
そして、色々見て回りやって来た……茶器売り場。
あれこれ買うもんだから、既に店の人に憑かれ……付かれていた。
「ランティエンスは、香辛料だけでなくお茶の生産も盛んで、どれも美味しい物ばかりです。こちらの茶器で淹れて頂ければ、香りを逃さず、より一層美味しくお茶を頂けますよ!」
「…そうでしょうね。(セット売りだと寸胴鍋より高いじゃまいか……)」
「………良いな。そう言えば、カレントさんに聞いたが、みんなで食事をする事もあるんだろう?これくらいあれば、食後に皆にお茶を振る舞えるな。」
た、確かに。カップの大きさも丁度良い。子供でも持ち易いサイズだ。俺製作の竹カップには無い、持ち手が付いてるし。
竹カップも悪くねぇと思うんだけどな……。
ちゃんと削って薄造りにしてあるし、木地が綺麗に見える様にしてるし。
「あの、今使ってるカップを出してみても良いですか?」
「ええ、どうぞ!」
マイ竹カップを出して、サイズ感を確認。少し小さくなるけど、お茶の色を見るのには、陶器のカップの方が良いよな〜。
………買えそうだ。俺も大人の階段を1段登った…って事か。ここが勝機!勝って……いや!買ってやろうじゃねぇか!!
「これ合わせて下しゃい!」
………………噛んだ。やはり、まだ心に幾許かの葛藤が残っていたか……。
「おーーい!買い物出来たか?」
「………シローがついに茶器を買う瞬間だ。」
「そうか!良かったな!俺も
「………ロレンドも好きだな…
「そうなんだよ!シローとトラキオにも食って貰って、真似出来ないか試して欲しくてさ!」
「………なるほど。宿に戻ったら食わせてくれ。」
2人が
「この度はたくさんのご購入、ありがとうございます!ところで……お客様。お客様のそのカップは辺境で売られている物でしょうか?」
「へ?これは俺が作った物ですよ。辺境では不評だったんです。ちゃんとした茶器を買えって。」
「お客様が作られたので?!」
「………そうです。ちなみに、俺は自分の為に作っただけですが、辺境の職人には、同質の材料からこの様な商品を製作する者もおりますよ。」
ミスリアさん製作の、ザルと手提げ籠を出して見せる。この問屋なら問題なさそうだなし。これは商機と見たり!売り込みすんぜ!
「こちらは、辺境周辺の山に生えている『ノビタケ』と言う材料を使用して製作された物です。収穫物を入れたり、水切り・乾燥等にも重宝する物なので、良かったらご覧下さい。」
「……これは!この籠なら茶摘みにも使える!」
「そうですね。空気が通る構造になっていますから、湿気を逃がし、摘んだお茶の葉を加工するまで、より良い状態を保てると思いますよ?それに軽いです。」
「そ、その職人さんに籠の製作を依頼するには、どうしたら良いか教えて貰えますか?」
「商業ギルド経由で、辺境へご依頼されれば大丈夫ですよ。ただ、職人が手作業で編んでいる籠です。大量に発注されても、その製作には日数が掛ることをご理解下さい。」
ここまで言っておけば、あとは
食い付いた問屋の担当さんと、発注時に注意して貰いたい事を追加で話し合い、その店をあとにした。
「………ミスリアさんの仕事が増えそうだ。」
「そうだと良いんですが…。ここは暑い街なんで、あの籠のは向いてると思うんですよ。」
「そうだな。街中なら、砂の心配が少ないしな。」
この時期、辺境は寒くて外に出る事も減るって聞いてたから、ノビタケは多めに置いてあるし、狩りに行けない時にはフェルドも手伝いしてんだろう。
問屋さんが発注してくれたら、売れ行きによっては定期的な取引も見込めそうだしな。
「………シロー、ポタンリーナさんの所でお茶も買わないか?俺も香辛料を合わせたお茶を自分なりに作ってみたい。」
「そうですね!色々揃えてるって言ってましたし!」
ポタンリーナさんの所に行くなら、虫は駆除してからにしよう。2人の後ろを着いて歩き、門兵の時と同じゼスチャーをしてから、風の魔法で脅しの首切り。
大丈夫……だな。街中でうっかり落としたら、流石に俺がヤバい。首の皮が切れる程度の魔法を受けて、腰を抜かすリーダーストーカー。それに驚いて、騒ぐ取り巻き達。
もし、これでも着いてくるなら、全員の足を固定しよう。
虫ってしつこいから嫌いだ。
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