第258話 ハウスで休憩

「はーーーーー!落ち着く!!ハウス最高!!」

「最後にゴタ付いたからな。……シロー大丈夫か?」

「はい…。思ったよりも平気です。それ以上に、皆にも危害を加えようとした、アイツ等への怒りが勝ってます。」

「………適度な怒りならば、その場での力や瞬発力になる。だが、その場限りにするんだぞ?あの感情は人を飲み、変えてしまう物だ。結果、怒りの原因さえ見失う。」

「そうして、何だかいつも何かに不満を持って、怒ってるヤツの出来上がりだな。」

「気を付けます。」


 先にピヨ達を畑に戻して、追加の野菜と肉を置く。


 悟郎さんがカエルを上げても良いよと言うんで、それぞれに一匹づつ出したら、美味いのかガツガツと夢中で啄んでいた。


 チビにも協力してもらったから、各種フルーツ盛りとマカダミアナッツを渡しておく。


 悟郎さんは、さっきのカエルを食べたいんだよね?え?トカゲも?わ、分かったよ。ちょっと待ってて。


「………ゴローは、洞窟で獲った肉をご所望か?」

「はい…。それと、ドドモラゴンを。」

「そうだろうな!庭の焼き場で焼く物があったら、渡してくれ。俺が焼いて来る!」


 トラキオさんと一緒に遅い昼めしを作っていく。

 カエルとトカゲ………。


「………シロー、どっちも癖の無い肉だ。骨を抜いて部位ごとに切れば……ほら、ただの肉だぞ。変に意識し過ぎるな。それにキズンリーゾで買った防具服も慣れたろ?」

「はい…。」

「………嫌いな物を好きになる必要は無い。だけど、お前は少し意識し過ぎだ。それは時に自分にも、周りにも良くない効果を齎す場合もある。お前を良く思わないヤツからしたら、自ら弱点を曝す様なものだ。1度に変えなくていい。食材なら、ゴローが喜んで食べる姿を考えて作ればいい。」

「……分かりました。」


 カエルはきっと脂も少なく蛋白な肉だ。揚物と濃い目の味付け、クリーム系も良いな。


 ランティエンスで新鮮な香辛料も買えた。トカゲは悟郎さんも大丈夫なくらいのスパイス効かせて作ってみるか!

 

 玉ねぎとマッシュルームをみじん切りにして、バターで炒め、ストックしてある野菜スープで煮詰める。カエルは軽く、塩・胡椒で下味を付けたら軽く粉をまとわせ、焼色が付くまで焼き、そこに炒めた具材と牛乳を入れ、肉に火が入るまで煮て、チーズを少々、仕上げにクリーム一回し、皿に盛ったらレモンを絞って、別茹でのほうれん草を添えて簡単クリーム煮の完成。


 悟郎さんは葉物野菜はあんま食わねぇから、ほうれん草は俺用だ。


 トカゲは若干、硬い肉質だって聞いたから、一つは悟郎さんも好きなチャーシューにしよう。

 圧縮を使い、圧力鍋の要領で煮て、濃縮で染み込ませる。魔法があるからこそ出来る時短調理だな。


 トラキオさんがステーキを焼いてくれてるし、ロレンドさんには、他の肉の串焼きを頼んでる。


 余っても収納すれば良いし、唐揚げを作るか。一口大に切ってタレに漬け込んでおく。

 唐揚げといっしょに、マイタケとエリンギは天ぷらにして揚げよう。


 あとは、ログレスのダンジョンで採っておいたバナナの葉を広げ、食いやすいサイズに切ったキノコ類を包める限界まで入れ、塩、胡椒、バター、白ワインと一緒に包み、ロレンドさんの焼き場の網で蒸し焼きに。


 もう一つ、エリンギ、マッシュルームとカエルのアヒージョにしよう。


 シイタケはそのままだと、とても網焼きが出来るサイズじゃないから、厚めに切って炙って醤油掛けて食おう。


 乾燥させたシイタケとエリンギを水で戻して、酒の代わりに白ワイン、砂糖、醤油を煮立たせ、生姜の千切りと水で戻したシイタケとエリンギを戻し汁ごと煮詰める。照りが出て来たら、時短の濃縮&圧縮で簡単佃煮の完成。


 昼めしだし、こんなもんか……。


「………シローは、料理の時の集中が凄いな。いつも通りだが、随分、豪華な昼めしだぞ?」

「あ〜〜……残っても収納出来ると思うと、つい、作り過ぎちゃうんですよ…。それに、いつも思った程の量は残らないし。」

「………ゴローが食うもんな。俺もステーキと、親父に教えてもらった炒め料理を作った。ロレンドの方ももう焼けたろうから、飯にするか!」

「はい!」

「おーーい!コッチも焼けたぞ!ゴローが食いたくて俺の周りをウロウロしてるから、そっちに呼んでくれ!!」


 いないと思ったら!!串焼きをロレンドさんに強請りに行ってたな!


「悟郎さーん!!ご飯はこっちで食べるよ!!」

「ニャッ(わかった)!!」


 テーブルの上で、ハラ天で苦しそうなチビをソファに移して寝かせてから、作った飯を並べる。


 悟郎さんのソワソワが止まらない。


「はい、悟郎さんの希望のカエルのクリーム煮とトカゲチャーシューだよ。トラキオさんにステーキも焼いて貰ったからな。こっちはロレンドさん所で狙ってた串焼き、はいどうぞ!」

「ニャッニャゥ(やったー)!!」

「で?君たちには先にご飯上げたと思ったけど、どうした?足りなかった?」

「「「ピヨッ!!」」」


 そう…育ち盛りだからね………。悟郎さんに了解を貰って、トカゲ肉をピヨ達に追加で渡す。

 すげぇ勢いだな……。ディアとラビも少し出すか。


「シロー!俺達も食おうぜ!」

「………そうだな。これでおあずけは辛いぞ。」

「はい!どうぞ、食べて下さい。」


 悟郎さんの前には、唐揚げとアヒージョの肉を置いたら、俺も食うか!


 ロレンドさんは、相当シイタケ好きなのか?焼いて醤油をしたシイタケと、佃煮から行ったぞ。

 トラキオさんはクリーム煮か。


 俺は、バナナの葉で蒸し焼きにしたキノコを食べよう!あ、ぽん酢モドキも作ったんだ。掛けるか2人に聞いておこう。


「ロレンドさん、トラキオさん、このタケの蒸し物用に掛けタレを用意したんで、お好みでどうぞ。」

「おう!ありがとう!シロー、生を焼いて食べたのは初めてだけどこれ凄く美味い!それに、この甘辛い煮物!これずーっと食べれるよ!」


 そうだな、佃煮ってそう言う所あるよな。生姜も効かせたし、時短にしては良い感じた。


「………クリーム煮も美味い。最後にレモンを絞ってあるから、クリームを使ってるのに少しさっぱりした感じにまとまってる。あと、教えてくれるなら知りたいんだが、途中で入れたスープは何だ?」

「あれは、野菜を色々いれて煮込んだスープですよ。ちょっとした時に便利なんで作り置きしてあるんです。」


 今は“濃縮”を覚えて、煮炊きするのに必要な時間が減ったしな。目指せ顆粒コンソメ!


「ニャオニァッ(もうちょっと)!!」

「はいはーい。お代わりは何がいい?」

「ニャッゥニャォ(お肉全部)!!」

「はい、どうぞ。甘いのも置いておくな。」


 蒸したエリンギを初めて食ったけど、確かアワビの様な食感だって言われてんだよな?


 俺は貝を食う機会が…………給食であったかもしれないけど、記憶に残るほどの量じゃなかったのと、生の状態が…ちょっとグロく見えたせいで欲求が乏しい。


 それに貝はほぼ海の物だから、今後も機会が訪れるとは考え難いけど、湖だったらシジミ、磯だったらサザエとかまでは有りかもな。食った事無いけど。


 ……あ。集中して料理をしたら、少し気持が落ち着いた。


 ここでの滞在を終えてログレスに戻ったら、ダンジョンで果物採取とレベル上げを頑張ろう。



 雇われて人を殺しに来る様なヤツはどうでもいい。


 俺は元々自分本位だ。


 既に俺の“大事”は決まってる。


 それらを揺るがず守れる強さが欲しい。


 心も、身体も。

 

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