第232話 ログレスダンジョン 一層目

「シローーー!ここだ!」

「すみません!お待たせしました!!」

「大丈夫だ。ログレスのギルドは混んでただろ?いつもあんな感じだから、ギルドに用がある時は、俺達も待つ覚悟をしてるから気にするな!」

「………1箇所だけ空いてるがな。」

「そりゃそうだろ!用もないのに、好んでギルド長の所へは誰も行かないぞ?」


 ああ……。それ先に教えて欲しかった……。空いてるからって、ギルド長の所に行っちまったよぉ〜〜!


「………シロー、まさかギルド長に受付してもらったのか?」

「……はい。何であの人カウンターに居るんです?!巫山戯てるんですか?!」

「…………ま、まあそうみたいだな。居ない時もあるんだが、事情を知らない新人が来るのを待っている節がある。それで最後に名乗って、驚かすまでが一連の流れみたいだ。」

「そ、そうか、行ってしまったか…。前もって教えておけば良かったな…。だが、何か用があって行ったんだろ?『入場許可証』って何処に入る許可証をもらって来たんだ?」

「……ダンジョンです。」

「「は?」」


 ですよね〜!トラキオさんにまで、間髪入れずにツッコまれたじゃないか!

 そこで、止む無く経緯をロレンドさん達にも話した。クソぅ!!ゴリラのバカ!!


「…大事にされてるな。」

「………ギルド長、もはや親代わりか?」

「辺境に戻ったら、過保護かよ?!って言ってやって下さい!!」


 俺も言うけど、他者からの意見の方が効果が出そうなんで、お願いしゃす!!


「で、その通信のダンジョン品を持たされたのか。」

「………いざと言う時には役に立つ。そう邪険にするな。」

「そうだな。まあ気にするな!じゃあ、準備も問題無いなら、早速ダンジョンに行くか!入口は街を出て、少し歩いた所にあるぞ。」

「はい、お願いします!!」


 過保ゴリラは忘れてフルーツダンジョンを楽しもう!ヤツラムシ共は、索敵にかかり次第殲滅してやる!!


 門を通る際に、さっき親切にしてくれた衛兵さんを探したが、交代したのか姿が無かった。お礼は今度見掛けた時にしよう。


 街を出て、東へと進む。そこから更に南に向かうと、大きな平原となっていた。膝上まで草が伸び、風になびいてサラサラと揺れている。


 うわーー見渡す限りの平原だ。木もねぇし。

 ………馬で駆けたら気持ち良さそうだな……。

 ……馬……俺の馬はいったいどこなんだ?


 ん?索敵に何か掛かった…。ウサギか?馬では無いから討伐しておくか。


「…………よし。」

「ん?どうした?」

「何かいました。とりあえず討伐したんで、取って来ます。」


 2人に断って獲物を取りに行く。ヤツだったら、速攻土に埋めて見なかった事にしよう。

 草の影に横たわる白と黒のまだら模様の魔物。足は………4本あるな!ヤツでなければ良いんだよ!!そして全体を見て“しまった!”と討伐を後悔した…。


「シロー、どうだった?何が取れたんだ?」

「……実はこれです。まだ子供ですよね?」


 討伐したトリュイション(野ブタ)を見せる。これは俺の知ってる普通のブタの大きさだ。異世界サイズには程遠い…。きっと子豚だ。お前にはもっと育ってから会いたかった!


「やったな!トリュイションじゃないか!!しかもいい型だぞ!」

「…………シロー、これで成体だぞ?トリュイションの一般的な大きさだ。ゴローも喜ぶだろう。」

「え?これで大人ですか?……もっと大きいのを想像してました…。」

「十分大きいと思うが……まあ、ゴローに掛かればすぐ無くなりそうだがな。」


 トリュイション野ブタは、草に隠れて単独で活動している事が多い為、見つけたら即討伐が基本らしい。

 ダンジョン前に狩るつもりは無かったけど、ロレンドさんからは見付けたなら討伐してOKと言われたんで、入口に着く迄の間、索敵に掛かった分はしっかり狩らせてもらった。


「……シローあそこだ。ダンジョンの入口が見えて来たぞ。」

「…結構、街から離れているんですね。」


 歩く事10分。ログレスのダンジョン入口に到着した。平原にミステリーサークルを描いた様な入口で、一方向に倒れた草の中央がダンジョンの入口になっていた。


 周りには冒険者が数十人と、ポーションや食物を売る商人の姿もある。街まで戻るのが面倒なら、この場で割高の品を買ってしまう人もいるか…。


 そして、ロレンドさん達に続き、ログレスのダンジョンにいざ!入場?


「暑っ!!」

「はは!そうだろ?辺境の夏より暑いよな!」

「…………しかも湿気てる。」


 熱帯雨林気候か?!って暑さと湿度だ。悟郎さんとチビには、すぐモコモコスリングから定位置に移動してもらい、エアコン魔法を発動させる。


 ロレンドさんとトラキオさんも、サッと上着を脱いで軽装になった。


「ニャンニャゥ(あったかい)!」

「キュ!!」

「いや2人共、極端で申し訳ないけどメッチャ暑いからね?!俺から離れる時は注意してよ?!」


「この階層は、ヘビの魔物と猿の魔物がいるからな。ヘビは木々に紛れた色をしていて毒を持っているから注意しろ。猿は遠距離から、自分の糞に石を詰めて投げてくる。」

「最悪!!」

「…………俺も猿が一番嫌い。」


 うわ…。しかも入って早々、結構な数の魔物がいるんだけど。俺のフルーツ狩りを邪魔するじゃねえよ!


「悟郎さん、チビ!食えない魔物だからドンドン倒していいぞ!あ!他にも冒険者……人がいるから間違っても攻撃しないように!」

「ニャッ(わかった)!」

「キュ!」


 俺は氷雪の段位を上げたいから、石の代わりに氷を作って投げよう!冷たくて丁度いいしな!


 悟郎さんは飛爪斬で、チビは風薙を使って競う様に倒して行ってる。ロレンドさんとトラキオさんも戦闘を開始した様だ。


 いた…猿だ。うわっ!手に持ってるのが糞投石か?アイツ木の上から狙って来るつもりだな…。


「そんなもん、食らうかよ!!」

「ギャァー!」


 一回では倒し切れなかったんで、もう1投。よし! 

 猿が落ちた辺りを見て魔石を拾う。薄黄色の魔石だ。もう、クソのイメージのせいで色味が最悪。しかも、猿の手まで落ちてたんだけど?!食用可能とか出たんだけど?!ヤツがクソを捏ねた手だぞ?!!


 ログレス……マジでフルーツ以外の食事は気をつけなきゃなんねぇ!!どうしてそんな物ゲテモノを混ぜて来るんだよ!!


 悟郎さんとチビが倒した方はどうだろう?あ、あった!ヘビの魔石と…ヘビの皮と肉だ…。

 やっぱり、俺が最初にいたところはダンジョンじゃなかったのか?


 ドロップが分かったら、後はさっさと討伐しよう!フルーツ狩りの時間が減るからな!

 30分程は魔物を討伐していたと思う。やっと気配が無くなったんで、ロレンドさん達と合流しよう。


 2人も討伐がすでに終わった様で、何かを話し合っている。


「ロレンドさん、トラキオさん!こっちは討伐終わりました!」

「ああ!俺等の方も終わってるよ。……今、トラキオとも話てたんだが、いつもより魔物が多いんだ。もう少し様子を見るが、この状態が続く様なら一度戻ってギルドに報告をしようと思ってる。」

「報告なら………コレ使いますか?」


 じゃ~ん!通〜信〜機〜〜!!

 通信機を持たされたのは俺だけど、報告はロレンドさんに任せよう!


「あ!そうだった!シローが通信のダンジョン品を預かってたな!」

「…………良かった。それなら必要な時に報告が出来るな。」

「じゃあ、その時は使わせてくれ!それなら心置きなく、果物を採りに行こうか!この先、右手に進んだ場所にあるぞ!」

「はい!」


 やっとだー!はじめは何の果物だろう?

 チビのもキュキュキュと鳴いていたから、近い場所なのは間違い無い。


 樹々の合い間を歩いて行くと、赤銅色の実がたくさん生っている。あれは………ライチだ!


「キュキュキュキュキュキュ!!!」

「ああ、あったな。採るから待ってろ」


 木から一房落としチビに渡してやる。俺も1つ味見〜!………甘くてジューシー!ドリンクでしかライチは知らなかったけど、実も美味い!しかし種がデケェな!


「お二人はあの実はどうしますか?」

「俺たちは大丈夫だ。好きなだけ採っていいぞ。」


 じゃあ遠慮なく〜!見える所をさっさと採って完了!ダンジョンって、時間経過でまた生えてくるそうだから、次の事を気にせず採取が出来て気楽だな!


 しかも、ロレンドさん達に方向を示してもらえるから、採取場所への移動も超楽ちん!チビセンサーは距離をある程度つめないと反応しないからな。


 お陰で、最初のフロアは天敵もおらず、快適に探索と採取が出来た。ライチ、マンゴスチン、ランブータンそれと、予想外でアボカドが取れた。


 次の階層もこうだといいな〜

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