第218話 家の内見 〜1件目〜
「おーーい!!みんな、ここだぞ!こっちに来てくれ!!」
「はーい。今行きますよ〜。」
朝っぱらからテンション高いなぁ…ベルタスさんは。
今日は、狩人組合の近くにある貸家の内見で出向いて来た。ベルタスさんのオススメらしいので、俺が住む訳でも無いのにワクワクだ。
クソセダンガの事が片付き、フェルドとジェインも以前と同じ様に自由に遊びに出たりしてるが、どうやら俺のハウスが人に見えないせいで、友達に路上生活をしていると勘違いされたらしい。
それもあって、ベルタスさんに紹介してもらった貸家を早速みんなで見に来た。
俺はオマケだが、普通の貸家に興味があったんで便乗させてもらった。カレントのメルヘンハウスは全然参考にならねぇからな。
「この家だよ!組合にも近いし、部屋も3つあって値段も手頃なんだ!どうだ?建物が比較的新しいから、台所も綺麗だし使い易いと思うぞ?」
「……ここですか。」
北向きか……。俺は日当たりの悪い部屋がそもそも嫌いだから、それだけで却下する所だけど、住むのは俺じゃないしな。……後は中を見てみるか。
「……シローお兄ちゃん。ジェインここに住むの?」
「ん〜?まだ決まってないよ。何件か見てジェインが住みたいなって思った家にしような!」
「……今と同じく、シローお兄ちゃんと一緒のお家じゃダメなの…?」
「……そうだな。俺のハウスは冒険で外に出る時、持って行く為の家なんだ。いつも街に置いてはおけないんだよ。それにあそこの土地はカレントおじちゃんの庭を一時的に借りただけなんだ。」
覚悟はしていたが、ジェインに言われると辛い…。あのハウスのスペックに慣れてしまうと、見劣りするのは避けられないからな…。とにかく、一先ず中を見てからだ!
ベルタスさんが玄関のドアを開けると、中の空気が押し出されて来た。……うっ!!!カビ臭い!!!待て待て!比較的新しい家でこれって、どう言う事だよ?!
「……ベルタスさん、ちょっと良いですか?」
「ん?どうしたシロー?」
「この家の前に住んでいた人は、どちらかに引っ越しされたんですか?」
「ああ、何でも体調を崩したらしくて療養施設に行ったらしい。それで、いつ戻れるか分からないから家を誰かに貸そうって話になったんだ。」
「……因みに体調はどんな様子だったんでしょうか?咳が止まらないとか息苦しいとか………だったり?」
「え?何でシローが知ってるんだ??この家の持ち主と知り合いだったのか??」
そりゃ、これだけカビ臭い部屋にいたら呼吸器系もイカれるだろうと想像付くよ…。中には入らず家の周りを見てみると、北面以外の3方向を他の建物に囲まれ、しかも窓が一つも無かった。
欲張って隣家ギリギリまで建てるからだ!!しかも、換気扇も無ければ日も当たらないなんて、新築時からカビの温床間違いなしだろ。
「ベルタスさん、せっかくのご紹介ですがこの家はダメです。」
「な!部屋の中も見てないのに何でだよ?!」
「家ってのは、新しければ良い訳でも無いんですよ。この家のダメな所は、先ず一方向にしか外部への開口がありません。これでは風は抜けず、部屋に籠もった臭いの原因でもあるカビを増殖させるだけです。加えて地面と室内の床に段差が余りに低過ぎます。もし雨が降った場合、すぐに床下または床上浸水になり、またカビの発生原因に繋がります。しかも、寒い時期には足元から底冷えして、体調を崩すこと間違いないです。加えて周りを囲むお宅とこの家の持ち主は良好な関係だったんでしょうか?少なくとも俺だったら、後から自分の家のすぐ目と鼻の先にこんな建物を建てられたら、建築反対運動を起こしますよ?この建て方は、近隣住民との協調性が全く感じられない、極めて自己中心的で自分勝手なものです。以上が、俺がザッと見てダメだと判断した理由ですね。室内を見たらもっと増えると思います。」
「…………。」
こんなに良い所が一つも無い家も逆に珍しいくらいだ。引っ越し貧乏にならない為にも、ストレス無く値段も手頃で住める家を探さないとな。
「お、お、お前は冒険者じゃなくて建物の専門家だったのかぁ?!」
「あ〜〜違います。俺の住んでた村が、建築基準と言う建物を建てる為の法律が定められていたからなんですよ。それに準じた建物でなければ建築が許可されなかったんです。今指摘した事はごく一般的なものばかりですね。」
どうやらベルタスさんは、ここが気に入ってもらえると思っていたみたいで、俺の話を聞いてガッカリと肩を落とした。駄目なもんは駄目なんだから、切り替えて次に行こうぜ!!
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
体調回復したので、更新頻度戻せそうです。
皆様も熱中症には気を付けて下さい!!
そして、今更ながらタイトル付けようかなとか思ったので、ボチボチいじります。……気長に。
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