第153話 顔合わせ
あれ?山男は?
「シロー、もう平気なのか?さっきは顔も見えなかったから、本当にどうしたかと思ったんだぞ?!」
「さっきは悟郎さんを吸ってました。風呂にも入って来たんで、もう大丈夫です。お待たせしてすみません。」
「………ゴローを吸うって何だよ。だがシローよぉ、虫嫌いってのは分かったが、ここより種類も多くて、型もデカいのがいる地域が沢山あるんだぞ?辺境はこれでも少ない方だからな?今の内に克服しておいた方が良いんじゃないか?」
「……………マジで?」
苦手の克服ってどうすんの?
因みに、ショック療法的なのは絶対にやっちゃいけないヤツだぞ!絶対に絶対に悪化するからな!
「ここより南の地域は特に多いぞ?ランティエンスの周りはゴローに馴染み深い砂漠もあるし、そこにはデザートワームが出るしな。」
「……!!!」
ダンジョンの砂漠では出なかったのに!!
悟郎さん、砂漠に行きたいかな?
因みに俺は行きたくないよ?でも、悟郎さんが行きたいって言うなら行くよ?俺は行きたくないけどね?
俺がギリ大丈夫なのは、鳥○砂丘か東京○漠くらいなんだからね?
……あぁ、でも悟郎さんと一緒なら辛くは無いのかな……でも、そもそもここ異世界だから無理だよね。
「……ギルド長。ギルド長なら苦手の克服ってどうやりますか?」
「ん?俺はあんまり苦手な物も無いしな…。」
「あんまりって事は、多少でも苦手な物があるんですよね?」
「まあな…。子供の頃に旅先の宿屋でネズミに耳を囓られた事があってな。それ以来ヤツ等はあまり好かんな。」
まさかの、ドラ○もん!!
ギルドのゴリラでドラちゃんだなんて、属性盛って来たな!
確かによく見ると、ギルド長の耳チョット欠けてるし。
しかし、これ普通に有りなのか?だったら俺、絶対にコッチの宿屋は使わないぞ!
「……あの〜〜南の山に調査へ行く話し合いは、何時始まるんっすか?」
「!ああ、すまないな!レントマン!待たせた上に脱線してて。じゃあ今から南の山の調査探索についての説明をする。カレント、シローもそこ座れ。」
えぇー!!山男じゃなくて、山女だったのか?!レントマン!!
俺のイメージが……。雪焼けした無精髭で、山じゃなくてもチェック柄の服を着ている、そんな山男が来ると思ってたのに。
「じゃあ、南の山の調査探索について説明する。今現在の調査対象はダギアルバードだ。これは調査の進展如何で変わる場合がある。そしてダギアルバードの営巣地帯に辿り着いたら、今回の原因、ダギアルバードの異常行動の原因を探ってくれ。薬師組合のランディエーヌさんからは、ダギアルバードが食いそうな物の中に原因がある可能性が高いと言われてる。ダギアルバードについては、低木地帯に降りてきている個体は発見次第こちらで全て討伐する。高所に当たる岩山地帯でダギアルバードを発見した場合は、可能であれば討伐してくれ。だが、あくまで調査を優先としてくれれば良い。討伐は二の次と思って、降りてしまったヤツ等は任せてくれ。何よりお前達の安全を最優先すること。手に余る状況と判断した場合は、すぐ撤退してくれ。その決断はレントマンに一任する。」
「分かりました。同行するこの子は何が出来るんっすか?足手まといになりそうな臭いがするっす。」
おおぃぃ!!クソ女!足手まといの臭いってどんなだ??!!俺に分かる様に説明してくれねぇかな?!
「レントマン、ここ最近の大物を討伐したのがこのシローだ。魔法と投擲に長けている。それに鑑定と大きな収納もあるんだ。体力は……そこそこ?あるか?どうだ??」
「あるんじゃないですか〜?」
「……まあ、あるらしい。今回は、素早い判断と行動を求められている。レントマンにも無理を言うが協力を頼む。こちらも薬師組合、狩猟組合、冒険者ギルド、商業ギルド総出で動いてる。領主様の方でも人が口にする全ての食材の再調査、外部からの出入の規制と管理、更に有事に際しての受け入れ用意と周辺警護の強化と他にも、色々動いて貰ってるんだ。会ったばかりで、連携や意志の疎通にも不安を感じるだろうが、シローと協力してやり遂げて欲しい。シローも行き成りの同行者で、いつもと違ってやりにくかったり、不満に思う事もあるだろうが、本当に頼む。お前が薬師組合で見た事が人に出る前に何とかしたいんだ。」
「……分かったっす。」
「……了解です。」
むう。しょうがないな…。これは報酬をはずんでもらおう。
「今回、協力の報酬の一部として、御領主様から岩山地帯でお前たちが採った採取物については、全て自由に出来る許可を貰った。ただ、売却する場合は辺境内に留めるものとする。レントマン、薬師組合から治療薬の調合受諾が出ている。お前が求めている物が出来るかは約束出来ないが、今回の件が片付いた暁には、最優先で調合してくれるそうだ。」
「マジっすか?!!」
ギルド長の言葉に最速女が色めき立つ。
何か欲しい薬があるのか?
「シロー、岩山地帯にはな、今の時期に採れる美味しいフルーツがある。緑色の皮に覆われているが、その実を割ると黄色い果肉が出て来てな、香りよく美味い果汁が味わえるフルーツだ。好きなだけ採っていいぞ!」
「マジっすか?!!」
即物的と言われようと、今は悟郎さんに加えてチビも増えたんだ。
なので
俺は俺の優先基準に沿って行動するだけだ。ふふふ楽しみ出来たぞ!
「現地で必要な装備、食料も全て商業ギルドで用意済だ。今回渡す全ての支給品は、返却不要とする。レントマンは既に持ってると思うが、新しい物を用意した。使う、使わないはお前の自由だ。用意が整い次第、現地へ向かって欲しい。」
「分かりました!!」
「は〜い。」
黄色い果肉のフルーツか………蜜柑か?
でも皮が緑……。うん。これは見てのお楽しみだ。
「カレント、今後の解体については、薬師組合から言われた通りの方法で徹底してくれ。他の者にも周知を頼む。」
「分かりました。」
「それと、レントマン。お前の仲間とシローの顔合わせは任せて良いか?」
「はい!」
お、残念。『はい』には『っす』が付かないのか。
俺がバイトしてた時は、全ての語尾に『っす』を付けてるヤツがいたんだけどな〜。
「あとシロー。魔法の使い過ぎにはくれぐれも注意しろよ。魔力回復薬は支給するが、無くなってから飲んでも遅いからな。魔力切れの兆候が出たら、すぐに飲むんだぞ!」
「分かりました〜。」
それに付いては、経験者なんで切れない様に気を付けますよ。
しかし、
「出発前に何かあった場合、シローへの連絡はカレントに伝えれば良いよな?」
「大丈夫です。」
狩人の奥さんを診てもらうにしても、今回連れて行けない悟郎さんたちのご飯を頼むにしても、
「シロー、ついて来て欲しいっす。仲間には家で待って貰ってるから、そこで顔合わせするっす。」
「分かりました〜。」
ハウスに帰ったら、悟郎さんたちの事を頼むだろ、フェルドに畑の手入れを任せたいから詳しく話して、狩人の奥さんはメリエナさんに任せるとして、気が向いたら竹籠でも編んでみないか相談しよう。
気も紛れそうだし、もし売り物になれば収入にも繋がるからな。
「着いたっす。」
「……あれ?孤児院じゃん。」
「知ってるっすか?」
「この前、フェルドとジェインと一緒に来たから。」
ここの出身なのか?
「あー!!この間の兄ちゃんだ!!ゴローもいる!」
「本当だ!!チビは?触りた〜い!」
流石は悟郎さん、子供達の覚えが良いね!
俺はこの間の兄ちゃんその1だ。
「!!お前、何しに来た!!」
「………泣き虫ロディーが泣いていないか、心配で心配で見に来たんだよぉ〜!」
「お、俺は泣き虫じゃない!」
「うそだ〜〜!この前泣いてた!!」
「う、うるさい!!泣いてないぞ!」
「勉強して『うるさい』以外覚えろって言ったじゃん?勉強もしてないのか?泣き虫ロディー君は?」
泣き虫ロディーと遊んでいると、
パアッと、とびっきの笑顔でこちらへやって来る。
「あ!!シローさん!!この前のホロトリ、とーっても美味しかった!!ご馳走様でした!!」
あ、凄い分かる。美味しご飯がまた来たかも!のとびっきりな笑顔ですね?
大事な事だよな〜。以前、食い物貰った時は、俺だって出来る最上級の感謝を伝えてたからな!
「どう致しまして〜。二羽で足りた?」
「はい!お腹にたくさん野菜や穀類が詰まってたから、みんなでお腹いっぱい食べました!食後にフルーツも!」
これはまた、何か置いていかないといけないパターンですか?
今度はディアでもいいかな…。ディアも結構あるんだよな〜。
「ケイジェン。これからシローと打合せするっす。みんなを読んで来て欲しいっす。」
「はーい。今、呼んできますね!じゃあ、シローさんまたね!」
……何だよ?お前も何か食いたいのか?
「……ケイジェンはまだ11歳っす。手を出したらなぶり殺すっすよ。」
「出すかよ!!しかも殺し方が酷すぎ!!」
どえらい釘を刺された!
不穏な牽制は止めて頂きたい!守備範囲外です!!
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