第55話 不貞腐れ一人跳躍〜新たな街
昨夜は、一晩中雨が降っていた様だ。
地面が泥濘み、風に吹かれた木々から水滴がパラパラと落ちてくる。それが朝日に反射してより一層キラキラと輝いて見えた。
こんな日に歩くのも悪くないよな…。
でも今日は悟郎さん次第で決めよう。きっと、あまり好きな環境ではないはずだからね。
その当猫は?と言うと、リビングのソファの上で、ボア肉の燻製にむしゃぶりついている。もう、ムッシャー、って感じ。
気に入って頂けたら幸いなんですが、朝起きてからずっとですよ?
悟郎さんも燻製好きになったんだね!嬉しいよ!でも、そろそろ止めない?今日はぷち砂漠にも行かずにムシャッてるぞ?!
あ?噛むほど味が出て来る?!そりゃあ良かった!でもそろそろ味より外に出ないかーい?
「悟郎さん、外に行こうよー!」
「ニャムニャムニャッ(味がなくなったら行く)!」
「……………悟郎さん。それ、さっきクマ燻製食ってる時も言ってたよ。」
「ニャ(うん)!」
「確信犯なのか?!潔すぎだよ!!もう…今日はお留守番する?予備の燻製各種置いてくから。ハウスで待ってる?」
「……………………ニャ(うん)。」
クッ!!クソ!自分で作ったとは言え燻製に負けた!いいさ!俺も燻製嚙じりながら進んで行くから!!
ハウスから出て収納し、燻製を咥えた。
俺の好みの燻製時間を増した、特製バージョンだ。悟郎さんには焦げてると不評だったが……。
「健脚の術!跳躍の術!士郎、行きまーす!!」
俺は拗ねて、ガンガン進む事にした。狩りもいっぱいするぞ!ドンドン来いやー!
その日、煌めく朝日に照らされ、健脚でスピードが増し、跳躍の反動で木を蹴り、更に跳躍を繰り返す輩が森を
その後には、木に靴跡のみが残され、獲物は蹴り倒されると、すぐさま収納でその存在を消された。
屍さえ残らず、あとは静かな森となった。
どれだけ進んだか全く定かではないが、周りを見通せる小高い場所に出て来た。
俺はそこで一度落ち着きを取り戻し、燻製肉を口から放す。
そこから森に囲まれた街が見えたからだ。
自分で来ておいて何だが、随分辺鄙な所にある街だな。だけど、しっかりと囲われた外周とその中にある建物を見る限り、寂れた街ではないのが分かった。
むしろ、以前訪れた街よりも大きく栄えている様に見える。
俺はハウスを出し、中に入ると悟郎さんがいるであろうリビングに向かった。そこには、出た時と何ら変わらぬ悟郎さんがいた。
いや、変わってはいるか……。今はクンコウギョの丸ごと燻製を齧っているからな。
間違い探しレベルにしか、変わって無いが……。どんだけ燻製気に入ったんだよ悟郎さん。
「悟郎さんただいま。街が見えて来たけど、一緒に行かない?」
「ニャッニャ!ニャムニャッ(おかえり!食べたら行く)!」
「どのくらいで食べ終わりそう?」
「………ニャッァニャム(多分1時間)?」
「………分かった!悟郎さん燻製齧ったままでいいから俺の肩に乗って!街に入る時は一緒じゃないと駄目だからね!」
「ニャ(うん)!」
燻製に負けた俺は、そのまま悟郎さんを肩に乗せ街へ行く事にした。
うぅ…。耳元でムシャッムシャッが聞こえる……。
街用のステータス偽装をしてから出発だ。俺の穀類確保を最重要目的としいざ出陣!
色々ゆっくり見て回りたいよなー。今回は。
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