第5話 ジャガーイーモと、彼でない過去
(JuggerPotoooooooo and not-his past.)
ぜんかいのあらすじ
実は、ジャガーイーモは超古代文明の人類の生き残りであった。ジャガーイーモという、名ではなかったが。
ジャガーイーモ達は、今までのことを全て話した。その結果、カリフリーグは全てに合点がいったようだった。そして全ての情報をまとめ、話し始めた。
「私は、地下に閉じ込められていた
二人とも、まだよく話が理解できていません。
「順番に話そう。世界が滅びてから暫く経って、監獄すらも朽ちて壊れ、私は生き埋めになっていた。地殻変動だとか自然災害が起きたことで地表に掘り起こされたんだが、丁度体の半分が出たところで地面が固まってしまった所を、君たちに助けられたというわけさ」
二人と一匹は黙り込み、静かに耳を傾けた。
――かつて、死を望んだ人々がいた。いや正確には、終わりを求める人々が。死という概念が、痛みへの忌避がなくなった世界で、悪に意味はなくなっていた。政治は腐敗し、罪への罰は無意味か、冗長なものになった。
裁きは裁きに値せず、罰の所在は曖昧になった。そんな世界でも、悪は存在した。だからこそ、恐ろしい死を求める人々がいた。脅威が恐怖として存在することを。
ジャガーイーモは、そういった人々を指揮した、扇動者であった。技術者と化学者が手を合わせ、不死性を失わせる化学兵器を秘密裏に開発した。
ジャガーイーモは、無期懲役に処された犯罪者と、腐敗した政治家たちをこの兵器で殺害し、世間に公開した。
人々は、恐怖を思い出した。
ジャガーイーモ達はすぐに捕らえられ、地下の奥深くに永遠に埋められることとなった。
皆不老不死であり、痛みも感じなくなった世界では、大抵は牢獄に入れられ、終わりのない労働に従事していた。だが最も重い罪の場合、棺桶に入れられ地下深くの土の中に永久に埋められることになっていた。棺桶で生き埋めになっていたジャガーイーモは、何度も発狂を繰り返すうち、自分を死んでいることにして休眠状態に入った。
彼が殺されなかったのは、世界が死の兵器を否定するという立場であったからこその体面上の問題であったからだ。
しかし、だから。人々は皆して、死の兵器を作り始めた。
人は再び、死の恐怖を利用し始めた。
ほどなくして、大きな戦いが起きた。死の兵器の処遇を巡って、それ以前からの禍根を巡って。
或いは皆して、その力を使いたかったからか。
兵器は改造され、多くの人を一度に、それどころか無差別に殺せるようになった。
人々は、力に飲み込まれたのだ。
その結果人々は再び争いを起こして、そうして誰一人としていなくなった。
それから何年も経って、新たな人類が生まれたのだ。
――村の人々が採掘をしている時、ジャガーイーモは掘り起こされた。
その頃には、ジャガーイーモは全てを忘れていた。脳に異常など何もないのに。
「きっと、忘れてしまいたかったのかもしれない」
ジャガーイーモ自身にも、分からなかったけれど。
「逃げたかったんだ、たぶん。そして、新しくやり直したいと思ったのだろう。救いと赦しを求めて。罪を犯した、くせにさ」
ジャガーイーモは、うなだれた。
「結局、こうなってしまうみたいだ、僕は。結局、どんなに命を繰り返しても、畏れられ、遠ざかり、疎まれる。結局、そういうやつなんだ、僕は」
沈黙が、少し。けれど。
「ジャガーイーモ。俺はあんたに、救われた」
クロップクロウは、自信をもった声で話した。
「それが扇動者の記憶からのものだとしても、俺には関係が無い。あんたは、俺の罪を許した。温情から言うんじゃない。その心が、あんたにはあった。それだけが証明なんだ」
「クロップクロウ……」
「勿論、あんたに罪が無いとまでは言わない。けれど、少なくとも俺にはあんたを糾弾する権利なんかない。お互い咎人というわけさ。なら俺たちは罪人らしく、贖罪でもしよう。そうだ、誰かを助ける、旅をしよう」
キャロップも、頬をすり寄せた。
「キャロップ……」
彼らの温もりに触れ、ジャガーイーモは悲しげに微笑む。そして、決意した。
「ああ……そうだな。今、分かったよ」
ジャガーイーモは、立ち上がった。
「僕は、罪を背負っていると思って生きる。そうすれば、僕は優しくなれるから。――僕が自分に優しくしなきゃいけない時は、君に頼ることに、なってしまうかもだけれど」
「なら、俺はあんたに優しくするさ。あんたがあんたを罰しなくなるまで、何度だってあんたに優しくしよう」
二人と一匹は抱き合い、涙を流しながら微笑みました。
「どうやら、君には新しい仲間が出来たようだな」
カリフリーグは優しく笑いかけます。
「ああ。しかし、どうだい。君も仲間に加わらないか。再び」
「そうだな、いや、遠慮しておくよ。せっかく人類も新しくなったことだ。私も新しい人生を歩むことにするよ」
ジャガーイーモとクロップクロウはキャロップに乗りました。
「それじゃあ、元気でな」
「ああ、それじゃあ」
かつての仲間と分かれ、ジャガーイーモはまた歩き始めました。
――二人と一匹は、今日も今日とて各地を旅します。
二人と一匹は、いつも一緒でした。
人に会うたびに二人と一匹はいっぱい優しくして、そうしていっぱい優しくされました。
そうしてみんな、幸せになりましたとさ。めでたし、めでたし。
―――――――――――
「ああ、我が同士。君は、変わってしまったのだな。ならば、私は私の手で、世界を変えることにするよ。それじゃあ、あばよ、我が同士」
つづく?
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