第23話 最長片道切符の旅23日目(新潟)

天気予報は的中し朝から雨だった。佐渡島を諦めたのは正解だったらしい。鍼灸の効果が出ているかどうかは無自覚ではあるが、昨晩はたっぷりの睡眠と久々に湯船につかれたため快調である。今朝は別の同部屋人が話し相手になった。高校を出た後はアルバイトなどをしながら自転車で旅をしているとのこと、年下かと思ったがまさかの同い年であった。私は思ったよりも貫禄が出ているのかもしれない。キャンパスライフに憧れがあるらしく、大学に入りなおしたいなどと言っていたが言葉に重さがあまり感じられなかった。大学に関して聞かれたことを須らく答えてあげた。どうか現実を見てほしい。


さて、件の鍼灸師とも別れを済ませて宿を出る。今日は予定を変更して市内循環バスで市内の観光地を巡ろうと思う。平日で雨なのでバスは空いていると高をくくっていた。しかし、今日はたまたま海外からのクルーズの停泊日らしく外国人が多数乗車していた。なんとか席を確保したが立ち客まで出ていた。循環バスの終点が新潟駅なので、ぐるっと遠回りをして40分ほどかけて駅に着く。特段、駅に用はないのだが新潟駅は現在工事中でこの姿はなかなか見れるものではないのでじっくりと見学することにした。その後は例のごとく循環バスで再度回ろうと思ったが、外国人観光客によって乗車率が異常だった。駅の前の万代シティというところで新潟で有名なチェーン店、イタリアンが堪能できるらしい。イタリアンという店名であるが私が頼んだ料理の名もイタリアンである。祭り用の使い捨て容器にミートソースがかかったうどんのような柔らかい麺だった。二度目はないだろうが、件のクーポンが使えたので特段損した気分にはならず。その後はバスに乗ることに嫌気が差していたのと雨も上がっていたので20分ほど信濃川沿いを歩きながら新潟市博物館に行く。やはりどこに行っても例の外国人観光客を目にする。その後は市場のようなところに寄ったり、旧斎藤家別宅などで時間をつぶす。どれも入館料が手ごろだったの良いが、やはり天候は大事である。どうも雨降りの中では何かをしようという気持ちが奮い立たない。


早めに宿にチェックインすることにする。まだ15時過ぎである。今晩の宿は「くく」から徒歩で15分ほどの距離にはあるが新潟駅にはこちらのほうが近い。1泊2400円の2人部屋に泊まる。今晩の同部屋人は2年以上もこの宿に厄介になっている65歳の訳あり住所不定人だった。とても興味深い人間だ。どうやら中国で日本語教師をしていたらしい。しかし、ビザの関係で一時帰国をしたその時にコロナに当たったという。中国領事館が新潟市にあるため、一時的に宿を借りることになったらしいがずるずると今日に至るらしい。今や中国での当てはなくなり、日本か台湾で働くために英検準1級合格をめざしているとのこと。中国旅行の写真やら講義の動画やらはなかなか面白く、長話をしてしまった。


明日から最長片道切符の旅は再開である。休日に走る観光列車の指定席券を何枚かとった。同じところにとどまるのはどうも性に合わないようだ。明日に備えて準備期間ということで今日は雨降る日を有効に使えたことにしよう。

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