第22話 最長片道切符の旅22日目(長岡~新潟)

今日の目的地は新潟なので朝もできるだけゆっくり過ごす。とはいっても今後の予定を組んだり、最終日の航空便を取ったりするので決して暇ではない。宿を9時半ごろに後にする。が、すぐに長岡から新潟に行くわけではない。昨日は疲れていたのであまり長岡を回れていないのでいくつか行く場所の目星をつけてある。長岡大空襲があった歴史を戦災資料館にて知る。その慰霊のために長岡花火大会があることは知らなかったため勉強になった。その後はアオーレ長岡で無料のシアターにて長岡花火大会の映像を見る。やはり滞在時間とその街の理解度は比例する。午前中いっぱいをつぶすことができた。

新潟までは上越新幹線にて長岡から二駅。途中駅は燕三条駅。とりあえず下車印をもらうために燕三条で降りる。駅前に地場産業振興センターという長岡のモノづくりを紹介する場所がある。モノは確かなので値は張るが高くはないのだろう。駅前にはそれぐらいしか見るものがないので次発のとき号に十分間に合った。新潟には15時少し前に着く。明日は新潟に滞在し佐渡島に行く予定だったが、悪天候により方々から中止を勧められた。観光案内所で代替案を思案する。しかし雨なのでやはりどうも気乗りはしない。まだ夕暮れ時なので近くの展望ビルからの眺望を眺める。どこも似たり寄ったりではあるが、新潟はやはり港があるのと新潟市のシンボルでもある萬代橋が見てて面白い。郡山とは比類にならない。そのまま歩いて今日の宿に向かう。「ゲストハウスくく」。くくはどうやらオーナーの飼い犬の名らしい。人懐っこい白いマルチーズだった。この宿でももちろん相部屋だが、同部屋のものがずいぶんとおしゃべりであった。

私は今日中に昨日の分のクーポンを消費するためにすぐさま街に赴くが、やはり対象店の多くが飲み屋なのには閉口してしまった。総菜屋で割引のハンバーグを買い、帰りしなにドラッグストアでパックご飯やら総菜パンやらを買い込んでショッピング終了である。予定とはずれ宿で夕食を食べる。安上りではあるがこれでは旅情に欠ける。そんな思いを打ち消すために近くにある銭湯に向かうことにする。入湯量は480円と安くはない。しかし銭湯の歴史ある佇まいは魅力的である。迷わずに銭湯の暖簾をくぐる。客は年寄りばかりでどこも同じである。軽く体を流して湯につかろうとするがあまりに熱い。背中に和彫りの入った40代ほどの男性が忠告してくれた。この銭湯は熱さで有名らしいと。腹立たしい歌い文句ではあるが、後期高齢者にとってはこの温度が適温なのだろう。郷に入っては郷に従えの精神をもつ私は、水で薄めるのもほどほどにして3度目のチャレンジでやっとスムーズに入湯することができた。体が尋常じゃないほど火照るなかで銭湯を後にする。宿に帰るとおしゃべりな同部屋人と話を弾ませる。奇遇にも昨晩、同じ宿に泊まっていることが発覚。私はすぐさま思い出したが、相手方は記憶にない模様。私も普通の見た目ならすぐに忘れてしまうが、特徴的な見た目だったのですぐに思い出せた。話を聞くとなんと鍼灸師だった。見た目からは1ミリも想像できなかった。私が連日のハードワークを語ると、たまたま針を持ってきているから打ってくれるらしい。初対面の人から針を打ってもらうのはなかなか勇気が必要だった。しかし腕前は確かで、痛いと感じることは数本しかなかった。明日から少しは疲れがましになるとのこと。鍼灸の効用については半信半疑ではあるが貴重な経験だった。

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