第16話 最長片道切符の旅16日目(村上~かみのやま温泉)

 今日は村上駅から坂町まで行き、米坂線に乗り換える。目的地はかみのかわ温泉だ。1泊4300円と今回も高めであるが、温泉につかれるという大義があるため村上の宿ほどの割高感はない。しかし、途中米坂線は大雨により坂町―今泉間が不通区間となっている。しかも代行バスとの乗り換え区間である坂町、それに今泉での接続が非常に悪いと来た。つまるところ、本日の予定は代行バスをどれだけ効率的に使えるかにかかっている。と言っているそばから時刻表を読み間違えてしまい、村上発8時43分電車を見送ってしまった。次の代行バスとの接続する列車は12時14分のものである。さらに、今泉での接続が非常に悪いため米沢に着くのが当初の予定より4時間以上遅い、16時59分着になってしまった。これで米沢城を観光しようとしていた予定が大幅に崩れることになってしまった。


 しかし、村上では昨晩訪れることのできなかったイヨボヤ会館が気になっていたため、そこに行くことでなんとかことの正当化を試みる。実際、500円の入館料を支払う価値のあるところだった。村上市と鮭のつながりを網羅し、また、水族館的要素もある。駅からのアクセスも悪くなく、貧乏旅行にはもってこいである。駅に向かう途中ではたまたま観音寺というところで日本最後の即身仏を見学することができた。即身仏は初めて見たので思いも見ない収穫だった。しかし、これらをもってしても村上駅にて1時間ほどの待ちぼうけをくらうことになる。


 予定などを組みなおしていると、ようやく電車がやってきたので乗り込む。10分ほどさらに発車時刻まで待った後、12分後に坂町に着く。12時26分に坂町に着いて、13時30分の代行バスに乗り換える。ここでも1時間ほどの待ちぼうけ。今日はずいぶんとのんびりした旅である。だが、これはこれで退屈なのだ。


 坂町からは代行バスだが、嫌いではない。リクライニング式のシートから景色を眺めるのは快適だからだ。それに不通区間というのは大抵は工事が難航する峠のようなところで景色も悪くないのだ。列車の旅であることを忘れさせてくれる今泉までの2時間半だった。


 当初の予定では、米沢まで直行する代行バスに乗る予定だったが。しかし鉄道の旅たれ。今泉での40分ほどの待ちぼうけの後やってきた電車で20分ほどで米沢駅にやっと着く。1時間と30分ほどの時間しかない。その時間内で徒歩30分のところにある上杉神社を見学し、お堀の周りをぐるっと一周して駅に向かう。上杉神社というところは素晴らしくきれいに整備されとり、歴史ある建物とモダンな建物が広い公園内に入り混じるようになっている。そこでは老夫婦が参拝する傍らでサッカーをする少年にtic tokにいそしむ女学生なども見られた。


 米沢駅を電車が出るころには外も真っ暗だった。7時12分、かみのかわ温泉駅に到着。改札で下車印をもらったが、駅員の反応が今まで一番良かった。3分の1以上が下車印で埋まった私の切符にもそろそろ貫禄が出てきた。して今日の宿はまたもや奮発して4300円ほど。何かのサービスでずいぶん安く素泊まりができるらしかった。その宿の外見は歴史を感じさせるも清潔感のある風光明媚な建物だった。おおよそ私の旅にはふさわしくない外貌にやや狼狽してしまった。早速、温泉などに入り疲れを癒す。周りにはちらほらとクーポンが使えそうな飲食店が見えるが、一切使わず昨晩村上のスーパーで購入した総菜パンでつなぐ。明日の山形駅で再度、食材を買いだめるためにここでは我慢である。それに私がホテルを二晩もとった理由はここからは5泊連続でネットカフェに泊まる見込みだからだ。予算に少々の余裕があるのと、ホテルの個室でガンガンにエアコンを焚いて下着類の洗濯をしたい。洗濯を済ませることでやっと宿代の200円分ほどを回収できたような気がした。

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