第15話 最長片道切符の旅14日目(羽後牛島~村上)
今朝もシャワー室から出る「成功者」に励まされた。即刻、快活クラブを後にして酒田行き電車に乗り象潟に向かう。春休み中なので部活に向かう学生がちらほらいるだけで座席に余裕はある。
象潟には8時11分に着いた。象潟と言えば奥の細道にて松尾芭蕉が松島と並べて目的地の一つに挙げた場所である。そして象潟町もそれを前面に押し出している。駅を出て視線を下に向ければ道路に芭蕉が歩いたルートを辿れるように丁寧にマーキングがしてある。無論、私もその通りに象潟の町を回る。2時間ほどあるのでゆっくりと回れる。今日は天気にも恵まれ、鳥海山がよく見える。芭蕉も同じ景色を眺めたことだろう。そんなことを思いながら、芭蕉の轍を追う。蚶満寺に着く。かつては浅瀬に小さな島が浮かぶ松島のような景勝地だった。しかし、地震によって土地が隆起して一夜にして現在のような、田んぼのなかに不自然にいくつもの丘がのぞくような景観になった。九十九島と呼ばれるその丘はウォーキングコースにもなっている。途中まで行き、時間が来たので引き返す。やはり歴史ある景勝地は面白い。さらに財布にやさしいのもなお良し。
次は30分ほど電車に揺られて酒田に行く。ここでは山居倉庫が目的である。日本有数の米どころである庄内の米の倉庫である。明治時代の雰囲気がそのまま残る。それに、この酒田のまちは北前船という西廻り航路を走る船の寄港地として江戸時代頃から栄えた歴史ある街である。1時間半ほどでは見切れない思ったよりも充実した街である。
次は鶴岡で途中下車。ここでは出羽三山が一つ羽黒山に行こうと3時間半ほどの時間を取っていた。しかし、観光案内所ではそれではじっくり見ることができないとのこと。そこで駅前で自転車を借ることにする。15分ほど漕ぐと鶴岡公園につく。ここは鶴岡城がかつてあった場所であり、庄内藩という戊辰戦争では朝敵側に着いた藩の城下町がここ鶴岡市である。ここは戦災を免れた幕末の建物が多くみられる。色々と見たが、致道館という藩の教育施設が入場料も無料でコストパフォーマンスに優れている。しかし、どうも出羽三山が頭から離れずすぐに飽きてしまった。何よりもネットカフェから朝早く出てきているので少々疲れた。
駅での待ち時間が長いことを言い訳に特急で鶴岡から村上までひとっ飛びする。なかなか日本海側の景色は壮観なのだが、西日が目障りでブラインドを閉める。村上に着いた時にはまだ夕暮れ時だった。しかし、17時30分頃ですでに観光案内所も閉まっていた。今日のホテルはやや奮発し1泊4500円。地域クーポン2000円がお目当てである。近くのスーパーで2000円分の大量の食料品を買い込み、ホテルで夕食とする。この大荷物を持って明日は歩くのかと思うとやや憂鬱ではある。弘前で買った栄養補助食品すらまだ残っているのに。次は積極的にネットカフェを利用しよう。治安の悪さと疲労の回復は心配なところだが、そろそろ資金面に陰りあり。
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