第12話 最長片道切符の旅10日目、11日目(高崎~盛岡、盛岡~弘前)
昨日は丸一日高崎にて用事に費やす。しかし、北国使用の荷物を家に捨て置いて、洗濯などを出来たのは大きい。それに食料も確保できた。十分に体力を回復し高崎から盛岡まで1日かけて18きっぷを使い戻る。12時間ほどの道程だ。しかし、本日の天気は1日雨。本来の予定だったリゾートしらかみに乗っても大した景色は拝めなかっただろうし、移動に費やすのは損ではない。電車に揺られながら、予定を組みなおす。これもこれで有意義だろう。乗り換えに乗り換えを重ねて北上してゆく。同じようなルートを行く鉄道マニアがちらほら見えるのには慣れた。18きっぷのシーズンにはよくあることだ。外が暗くなっても雨が窓に打ち付ける音で天気がわかる。
21時過ぎに盛岡駅に到着。12時間近くの乗車は長いとは思わなかった。本日の宿は盛岡駅近くのネットカフェである。というのも旅行支援が岩手県ではどうも終了しているらしいのと、ギリギリのため安宿が見つからなかった。長身の私にとってネットカフェのフルフラットの寝床は手狭なのだが、すぐに寝る準備に入る。料金制ゆえの安宿なのだ。6時間を少々超えた頃、料金の安い作業机スペースに移動する。6時からの朝食サービスに質素な食パンと体に悪そうなマーガリンを塗り、二枚ほど食べて気持ち悪くなったのでやめる。旅の準備を整えて7時頃にネットカフェを出る。9時間ほど滞在して学割適用の1842円。シャワーやら使えて、急な予定にも対応できるので使い勝手は良い。しかし十分な休養が取れないので多用すべきではないだろう。
盛岡駅周辺はなかなか見どころがある。東京駅を建築した辰野金吾氏の建築物である旧盛岡銀行や盛岡城公園は悪くない。そしてそれらと駅を境に逆側に行けば盛岡市内を一望できる展望フロアがある。やや曇天ではあったが素晴らしい景色だった。
IGR線好摩行きの9時55分の電車に乗り込み、渋民で途中下車。石川啄木の故郷である。駅には郷愁漂わせる歌が所狭しと飾られている。駅から30分ほど歩くと石川啄木祈念館なるものがある。本日は運悪く休舘日であったが、それでもかつての住居や母校、愛宕山などを見ることができた。また、それまでの道のりにも歌碑などが置かれているためそれほど長く歩いた気はしなかった。2時間以上の待ち時間をつぶせるか不安ではあったが思ったより退屈な町ではなかった。
次の好摩駅にて下車印をもらい、花輪線電車との乗り継ぎのため20分ほど待った。これにて盛岡―好摩間の他社経由区間は終了である。ついぞJRの旅と勘違いしてしまいがちだが、この短いIGR区間なくしては最長片道切符は完成しないのだ。
好摩から花輪線に入る。この路線は岩手山などの連なる奥羽山脈を横切る山岳路線である。スイッチバックの跡や33.3パーミルの急こう配が当たり前のように続く。残雪もそれなりにあるため、どこか汗ばむ陽気と矛盾して混乱する。また、花輪線は鹿角花輪駅から大館駅まで不通区間になっており代行バスにて振り替え輸送を行っている。他方で、盛岡から秋北バスという大館までの直行バスを運転する会社がある。このバスは花輪線より早く安く本数も多いため、ほとんどの乗客はこちらを使う。つまり、ほとんどお役御免状態なのが花輪線の実態なのである。現に安比高原駅で家族連れと観光客が下車した後は終点鹿角花輪まで2両編成の車両の中には私ともう一人しかいなかったと思う。湯瀬温泉で後期高齢者を二人ほど乗せて乗客は3人。しかしワンマン運転ではないのが謎。
終点鹿角花輪に到着。思ったより駅前は大きい。人の姿こそ少ないが観光案内所と待合室を兼ねた綺麗な建物を添えた地方にしては立派なバスターミナルまである。15分ほどバスが遅れて到着。それなりに長距離を移動するためこれくらいの遅れは誤差だが、鉄道マニアにとっては気が気でならない。
1時間弱で大館に着いたが、16時を過ぎているためできることはない。歩いて20分の所に秋田犬研究室という興味深いところがあるのだが。この町はハチ公で有名な渋谷とは交流がある。というのもハチ公は秋田犬であり、大館は秋田犬の里を自称している。しかし大館駅は工事中であり、駅舎がプレハブのような面白味のない時期に来てしまった。40分ほどの待ち時間さえ退屈だった。
弘前行き電車に乗り込み、本日の旅は終了である。まだ夕暮れ時ではあるが、朝早くネットカフェからのスタートではここらが限界である。今日に明日と弘前城近くのカプセルホテルに二泊する。ここは大浴場がついて旅行支援も適応される。さらに明日は弘前から18きっぷを使って竜飛岬までいくため、荷物を置けるのは有用である。
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