第11話 最長片道切符の旅9日目(函館~高崎)

 朝からホテルで朝食をとり、すぐに朝市に向かう。休日ほどの活気はないが、やはり函館といえば朝市なので何度来ても飽きない。例の旅行支援のクーポン1000円で気合の入った市場の売人から乾燥ホタテを買う。朝の八幡坂に寄り道をして摩周丸の前を通ってホテルに戻り、すぐに五稜郭公園に向かう。


 昨晩は件の旅人と函館山にレンガ街、八幡坂など一通り街中の観光地は網羅したため、少しはずれにある五稜郭にバスで行く。五稜郭という駅もあるが、どうやら2キロほど離れているらしく詐欺駅などと揶揄されている。しかし、歩いて30分ほどならば造作ない。前にも訪れた五稜郭公園では時間を持て余してしまったため、歩くことにした。五片道程度なら良い運動になるしバス代の節約にもなる。それに函館駅から新函館北斗駅までの乗車券より、五稜郭公園駅から乗ったほうが100円安い。30分程度の歩きなどこの旅では歩いたうちに入らない。函館ライナーにて五稜郭駅から新函館北斗駅に向かう。駅でお婆さんに列車の到着ホームを聞かれとっさに答える。初めて使う駅でも鉄道マニアなら容易に対応できる。


 新函館北斗駅から東京行き新幹線に乗る。全席指定のため最長片道切符のルートである新函館北斗―盛岡間の特急券だけでも7000円を超えた。車内アナウンスでは青函トンネルの通過時刻を伝えていた。北海道新幹線において青函トンネルの重要性がよくわかる。


 無事、本州に突入。盛岡にて下車印をもらい。最長片道切符の旅はここで小休止。明日の大学の卒業式のため高崎に戻る予定である。しかし、都合上18きっぷでは2回の消費を迫られるし、通常ルートの新幹線で盛岡を通過して大宮まで行く金などなかった。仙台からの夜行バスや18きっぷの普通列車と新幹線などを組み合わせて安く帰ることができる方法はあったがどうも面白みに欠けたので、行けるところまではヒッチハイクなどをして少々金を無心しようと思う。


 盛岡インターの前にて仙台行きの文字が堂々と描かれたノートを掲げ直立不動する。40分ほどで見つかった。花巻まで下道で乗せてくれるらしい。高速を使わないのは痛いが、この場所も飽きてきたので乗せてもらう。50代ほどの中年男性。かつてヒッチハイカーの経験があるため乗せたくなるとのこと。おのずと話を勝手にするため沈黙がないのがありがたかった。


 花巻の道の駅前にて下車。これが悪手であった。この道の駅は工事中のため利用客が少ない。それに加え、ほとんどは盛岡方面に行く際の休憩場所として利用するらしい。刻々と時間が過ぎていったので、近くのコンビニの喫煙スペースに営業に行く。運よく北上に南下する人が捕まった。30分ほどの道程だが、ありがたかった。これまた50代ほどの中年男性であった。何度かヒッチハイカーを乗せたことがあったため、抵抗はないらしい。北上市内某所で降ろしてもらう。近くの北上インターに歩いて行き例のごとくボードを掲げる。しかし誰も止まらない。私のことを見世物のように興味深げに眺めながら通り過ぎていくのだ。


 屈辱感に押しつぶされそうになったころ、日も暮れかけてきたのでここらが潮時だと思った。北上駅まで1時間弱歩き、新幹線と普通列車を駆使して高崎駅に終電間際に着くようにする。浮いたのは盛岡―北上間の特急券及び、乗車券。対して要したのは4時間ほどのヒッチハイキング。割に合わないのでこれは最後の手段だろう。夜半に高崎に着く頃には雨脚も強くなっていたため、友人を足にして帰った。無論、礼として函館土産などを渡した。明日は1日、卒業する先輩方の恩に尽くす予定のため完全に休みである。

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