第7話 最長片道切符の旅5日目(網走~釧路)

 本日の列車は10時24分発の釧網本線釧路行き、快速しれとこ摩周号である。しかし、その前に網走観光を済ませたい。昨晩、網走駅に着いたのは20時を回っていたため街の景観はわからなかったが、やはり寂れ具合がはなはだしい。街とは反対側の網走監獄博物館へと向かう。バスの本数の少なさに加え、駅から4キロも離れているアクセスの悪さである。9時開館の博物館を見学する時間は40分ほどだ。宿の者が言っていた通り時間は足りなかったが、来てよかった。さて、小走りで宿に向かい宿で荷物を回収したのちに駅に向かう。道を間違えたため汗だくながらもタッチの差で電車に乗り込む。次の電車が5時間後なのは難儀である。


 快速しれとこ摩周号の車内は外国人観光客が目立つ。本数が少ないため、乗客が集中するのか席はほとんど埋まっていた。古い車両のキハ54系による1両編成ではあるが、設備が面白い。まず、車両真ん中にボックス席が配置されテーブルまでついている。海側の席を確保できた者は紛れもない勝ち組である。そして、前後それぞれの方向に固定されたクロスシートのような座席の配置。これの進行方向窓側が二番目の良席だ。そして、気持ちばかりのロングシート。初めて見るタイプの車両だった。北浜や標茶でちらほらと客が入れ替わる。しかし、ボックス席に座っていたものは釧路まで乗り通すらしい。標茶では10人ほどの学生が乗ってきたが、無論座れるところはないため、両端に立っていた。地方の観光路線で通学する学生にとって、われわれのような鉄道マニアは目の敵だろう。


 目的地は茅沼。タンチョウヅルがくる駅として有名である。ここで降りたが最後、次の列車は5時間後の17時50分である。さて、釧路湿原をおおむね回ったあとに駅に戻るとまだ2時間半ほど時間があった。隣の塘路まで乗り通して、茅沼まで歩いて展望台などを散策しながら戻ってくるのが面白い観光方法だったらしい。時すでに遅し。塘路まで歩いていけなくもないが、その場合は茅沼―塘路間を抜かしてしまうことになるため、ここでどうにか時間をつぶす。駅舎にはタンチョウヅルの写真が所狭しと飾られていたが、退屈しのぎもならない。駅前には野生のタンチョウヅルがいたが、これも10分と持たなかった。携帯のバッテリーを気にしながら暇をつぶす。


 どうやら網走行きの普通列車が釧路行きの40分前に来るらしい。茅沼ー標茶間の往復乗車運賃340円の大金をはたいて暇つぶしに1駅前の標茶に戻ってみる。特段面白いことはないが、あのまま茅沼にいるよりはましだろう。地元の農業高校生の物品が販売されていた。


 さて、少しすると目当ての列車がやってくる。外はほとんど夕暮れだが、残りの釧路湿原を堪能しよう。先の茅沼を通過し、次の塘路では9分の列車待ち合わせ時間がある。この時間で駅舎や列車の撮影を降りて行うものはまず鉄道マニアのである。多分に漏れず私もその儀式を済ませる。


 日も完全にくれた。本日の目的地は釧路駅に到着である。駅から徒歩10分ほどの宿に厄介になる。外をぶらついたがほとんどの店はしまっており、近くの観光施設の集合体は3階のフードコートエリアのようなものを除いて閉まっていた。地域共通クーポンを消費する私はいつものようにセイコーマートで明日の昼の分まで食料を買い込み帰路に就く。今日はなんだかんだで3万歩以上も歩いてしまった。

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