十話 暴露系Vtuberから連絡がくる

オーディションにも無事受かって、ブレイキングダンジョン本戦出場が決まった。

オーディションの反響で登録者も更に5万人増加して、

現在25万人を突破した。


これなら一年で本当に100万人いけちゃったりして…


いやーまさか元はチャンネル登録者5000人ぐらいで企業勢のVtuberとしては、初期メンであることが唯一の取り柄だった俺がここまでこれるとは、やっぱ外見が可愛い女の子って大事だな。


うちの箱も初期は女性Vtuberの人気が先行して男子は全然だったから、人気に差がありすぎて男女コラボできない時期もあったし。


俺の箱なんて、良い方で、確かサンライブには男性Vtuberだけを集めたサンクチュアリという男性Vグループがあるのだが、サンクチュアリのメンバーはサンライブと実質コラボできないという謎の暗黙のルールがあるんだよなー。


他箱の俺ですら初期の頃サンライブのVtuber達がまだ登録者が1000人もいってないときだったとはいえ、コラボして、その後FPS系の大会とかだと一緒に組むことは0ではないのだが、サンクチュアリのメンバーは同じ会社の箱なのにコラボしたことがないという可哀想なことになっている。


サンクチュアリのメンバーの登録者も確か平均で1万人ぐらいでサンライブの女性メンバーが平均で60万人だったから、60倍以上の差があったはずだ。


他箱に所属してる俺ですら、ちょっと可哀想に思ってたけど、

まぁVtuberって異性コラボって燃えやすいし、特に同じ企業だと、直接顔をあわせる機会とかもあるかもしれないってなったら、男性ファンからしたら見たくない気持ちもわからなくもない。


まぁ、そんな事を考えていたら、パソコンのディスコードに通知がきた。


天誅【…ご主人様、最近まるで別人みたいです…何かあったんですか?】


「ん…この名前にこのアイコン…もしかして天誅ちゃん…?」


天誅ちゃんは、いわゆる暴露系配信をするVtuberだ。


暴露系配信者ってのは、自分が取材した情報をライブ配信しながら、裏事情を暴露しまくるヤツらだ。有名人や企業の闇を暴いたりするから、一部の視聴者からは支持されるんだけど、真実と嘘が入り混じった情報を伝える場合もあるから、信頼性に欠ける場合もある。プライバシーの問題もあるから、法的な問題も起こりうる。社会的に許容されるかどうかは議論が分かれるところだ。まあ、彼らが暴露する情報ってのは、たまに興味深いものがあるから、ついつい見ちゃうんだけど、なんか疑ってかかって見る方がいいかもしれない…暴露系配信者への俺の認識はそんなものなんだが。


天誅ちゃんは暴露系Vtuberの中では登録者20万以上いる影響力のある配信者だったが、確か最近活動休止していたはずだ。


「いや、だけどなんでこの人が屑霧レーナのディスコードにいるんだよ…」


だって…天誅ちゃんって屑霧レーナがサンライブ追放されるきっかけになったIP流出事件を一番早くに取り上げたVtuberだぞ…?

あれ…そういえば、天誅ちゃんが活動休止したのって屑霧レーナの事を取り上げた後だったよな。世間ではサンライブから訴訟されてるんじゃないかとか噂されてたいたが。


俺は不思議に思い、過去ログを調べてみた。


そこで明らかになった真相に俺は衝撃を覚えた。

途中、所々に天誅のリアルらしき姿で、裏アカ女子のえちえち画像みたいなのが、送られてきてる事も謎だが、それよりも俺が驚いた事がある。


「…どういうことだよ…?屑霧レーナは自分で暴露させたのか…一体何のために…?」


ログには、屑霧が自ら証拠となるファイルを天誅ちゃんに渡して、暴露するように指示した内容があった。天誅ちゃんが過去ログでもずっと屑霧のことをご主人様よびしてる事からもこの2人はどうやら主従関係にあるようだ。


俺はこの屑霧レーナがわからなくなった。

自分が人気者になるために他人を犠牲にして、それがバレて消えた最悪の悪女…それが屑霧レーナの世間一般のイメージだし、俺自身もそう思っていた。


とりあえず、天誅ちゃんに聞いてみるか…?

ネットでも噂されてるように頭をうって記憶喪失中ってことにして。


【実は記憶喪失になってしまって…私と君の関係を教えて貰えないかな?】


そうメッセージを送ると、ディスコードの着信音が響いた。

相手はもちろん天誅ちゃんだ。俺は少し迷ったが出ることにした。


「ご、ご主人様!!記憶喪失になっちゃったんですか!?おいたわしい…一体なぜ…」


「あぁ…まぁそうなんだけど、俺と君の関係を教えて貰えないかな?」


「私はレーナ様の忠実な雌豚奴隷でございます!」


「…そ、そうなんだ…出会いとかは教えて貰えるかな?」


「はい!それは私がリアルで男達に襲われそうになっているところをレーナ様に助けていただいて、その時から、私はレーナ様の雌犬奴隷なのでございます……炎上系Vtuberを始めたのも全てレーナ様からのご指示で、普段の活動は私に任せていただいていて、都度レーナ様の指示を仰ぐという形でやってきました…」


なるほど…ってことは、屑霧レーナは暴露系Vtuberの黒幕だったって事か。

これだけ見るととんでもない悪女だが、最終的には自分自身すら暴露の対象にさせて辞めた


「なんで、君に俺自身の暴露をさせたんだ?」


「それは…詳しい理由はお聞きしておりませんでしたが、よくレーナ様が口癖のようにおっしゃっていたことがありますのでそれが原因かも知れません」


「口癖?」


「はい…レーナ様は、よくヌルゲーってつまんないと言っていたので…私はレーナ様がVtuberをやることに飽きたので、辞める前にむちゃくちゃに掻き回してやめたくなったかと思っておりました」


「なるほど…」


確かに屑霧は何をやっても天才的な才能チートの塊みたいな女だし、ヌルゲーすぎてつまらないっていうのはわかる気がする。

失敗があるからこそ成功が嬉しい。負けることもあるからこそ、勝利が価値あるものに感じられる。人生ってそんなもんだと考えると、負け知らずな才能を持つ屑霧にとっては人生はつまらないものだったのかもしれない。


底辺Vtuber兼凡人探索者だった俺からしたら、羨ましい話だが。


「ありがとう…話を聞かせて貰って…そういえば、天誅ちゃんって活動休止してるのは俺の影響?」


「まぁ、そうですね。ご主人様のご褒美がないと暴露配信なんて頑張れないんですよー、だって暴露配信って大体は男女関係とか、個人同士のくだらないトラブルとかなんですけど、そういうの相談しにくるのって頭空っぽな陽キャばっかなんで委員キャの私は相手するの大変なんですよ…あ、レーナ様がご褒美くださるならいつでも再開しますよ」


「ご褒美ってなにしてたの俺…?」


「そ…それは私の口からとても言えません…それはベッドに入ってもうあんなことやこんなこと…」


「あんなことや…こんなこと…おいまさか俺って…」


女同士で不健全な事をしていたんじゃないだろうな…?

そう考えると送られてきたえちえち画像にも納得がいく。


「はいぃ…寝落ちもちもちさせていただいておりました」


「寝落ちもちもち…?」


Vtuber界での寝落ちもちもちといったら、寝落ちするまで通話することだ。

なんだ…良かった。普通に健全な関係だったかぁ。


「ちなみに所々送られてきてる君の自撮り画像って…なんなのかな?」


「それは私がレーナ様に忠誠を捧げる証として、日課のようなものです!私の心も身体もレーナ様のもの!それだけは忘れないでください!あ、今日の分も後ほど送らせていただきますね!」


「いや、これからはやめてね…困るから」


「そ、そんなー!!」


「じゃ、さよなら!」


俺は、ここで通話を切った。

こうして、天誅ちゃんとの初めての会話が終わった。


なんだか、すごく疲れたよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

Vtuber史上最大最悪の悪女に転生した俺、S級探索者になって無双する ホメコロ助 @baranoyuri

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ