八話 悪女、ブレダンのオーディションに出演する
喧嘩自慢のダンジョン探索者の若者たちが、探索前に集まる控え室は、熱気に溢れていた。中には、自慢の拳法や剣術を持つ若者が集まり、大声で自分の腕前をアピールしていた。壁には、これまでの戦歴が掲示され、誰が一番強いのかという議論が繰り広げられていた。
一人の若者は、軽くストレッチをしてから、パンチングマシンに向かった。彼はパンチングマシンに拳をぶつけ、数値を競い合っていた。周りの人々は、彼のパンチを見て、感嘆の声をあげた。
また、別の若者は、自分の剣術を披露していた。彼は、木刀を携え、控え室の中で華麗な動きを見せていた。誰もが彼の技に見とれていた。
控え室の中には、若者たちの中には古株のダンジョン探索者も混ざっており、彼らは若い探索者たちを見守り、アドバイスを与えていた。
控え室の中には、喧嘩自慢の若者たちの緊張感や興奮が溢れていた。彼らには、オーディションでインパクトを残そうという熱い空気が漂っていた。
そんな中異様な雰囲気を放っているのは、屑霧レーナだった。
彼女は、静かに銀色の髪を整え、赤い眼を閉じて深呼吸をしていた。彼女が息を吸うたび、彼女の周りの空気が一瞬だけ揺らめき、彼女を取り巻く空間が浮遊感に包まれた。
喧嘩自慢の若者たちの中には、彼女に興味を持つ者もいたが、彼女の存在は、彼らにとってあまりにも不可侵であり、彼女に近づくことをためらわせた。
彼女は、一瞬目を開けると、静かに控え室を出ていった。彼女の浮遊感が消えると、控え室は再び喧騒に包まれ、若者たちが喧々諤々と話し合う様子が戻ってきた。
悪女、真剣ニキ(ラッパー)を制圧する
「いやー緊張したなぁー」
控え室の緊張感にいづらさを感じた俺は、控え室の外に出て、トイレにでも入って落ち着こうと思ったのだが…
「おい、ふざけんなよ…てめぇ、攫ってやろうか?」
何やら、不穏な発言が聞こえた。
そこにはリーゼントで太めな男と、サングラスをかけた爬虫類顔の男と揉めていた。むむ、あのリーゼントの男は見覚えがあるぞ。
たしか元々不良上がりで探索者やってて、MCバトルとかにも出てるやつだよなー。確か「俺はヤンキーじゃねーラッパーだぜ、ラッパーだぜ」が口癖のやつだよな。
いやー何か揉めてるなー大変そうだなーと思って、傍観していたら。
リーゼント頭の男が懐から取り出した警棒をカチャンと伸ばして、警棒のカバーを外すと刀身が出てきた。いや、あれ真剣じゃん…やばくね?
爬虫類顔の男はそれにもひるまず。
「何だおめぇー?剣抜いたって事はそっちも斬られる覚悟はできてんだろうなー?」と挑発している。
俺はリーゼント男との距離を詰めて、刀を握る右手に手刀をたたき込む。
すると、男は右手を抑えるようにして、その場に倒れた。
警備のスタッフが倒れた男を担ぐようにして、会場の外につれていった。
そこに騒ぎを聞きつけたのか夜蔵終焉がやってきた。
「レーナ君だよね、ありがとう…参加者の中にはああやって暴れる奴もいてね…控え室には警備のスタッフも配置してるんだけど…今回は通路だったので、対応が遅れてしまって申し訳ない」
「いえ、俺の方こそ出過ぎた真似をしてしまって…すみません!」
やべー…本物の夜蔵終焉だー。オーラすごいなー。
「じゃ、俺控え室戻りますね!」
「中田君…あのリーゼント頭の子って書類審査でCランクでレベル23ってかいてあったよね?」
「まいったね…ちょっとソラちゃんじゃ勝負論にならないかもしれない…」
「よぉー!終焉!!久しぶりだなぁー!」
煉獄錬次。
燃えるように長い赤髪が特徴的な男。
夜蔵が出場するA級探索者のみが出場を許される世界で最も人気のある探索者の格闘技リーグDFCに所属する、ダンジョン探索者である。煉獄はかなり辛口のダンジョン探索者として知られていて、同業の探索者達が不祥事を起こすとよくSNSなどでネタにしている。
煉獄は夜蔵のこともかねてから、「探索者として牙が抜けた実業家」「金で肥え太った豚」など批判している。
「錬次お前のことをよんだ覚えはないぞ」
「いや~ちょっと興味があってよー例のあの悪女がブレダンに参加するっていう噂を聞いてよぉー、ダンジョン界隈の治安を守る俺としては見過ごせないと思ってきてみたんだがよぉー… ちっと、噂とは大分ちげぇーみてだなぁ…?」
煉獄は少し困惑してるようだ。
夜蔵も驚いていた。
屑霧レーナといえば、とんでもなく性格が悪い悪女で有名だ。
配信外では傍若無人な振る舞いをすると聞いていた。
炎上して反省したのか…と考えたが
しかし、先ほどの態度は反省していて恐縮してる人間の態度というよりは、元から温和で物腰の柔らかい人間のような雰囲気だったと夜蔵は感じていた。
「そういえばネットで二重人格説があったな」
「おぉー!?なんだそりゃー面白そうじゃねぇーか!
ツイッターでつぶやくかー」
「辞めろ阿呆、ブレダンの動画が出るまでネタバレするな」
「あぁー?もうネットで噂になってるだからいいだろうが…」
「営業妨害で訴えるぞ」
「おいおい辞めてくれよ訴訟ニキ…
探索者なら拳で決着つけようぜ…
裁判なんてまだるっこしいことすると考えたら
頭痛になっちまうぜ」
「…拳で決着つけてもいいが、ブラック次第だな」
DFCのCEOランチ・ブラックは、金にならない試合は組まないことで有名である。
「たっくよぉーお前と対戦組んでもらう為にトラッシュトーク仕掛けるのはこっちだってめんどくせぇーんだよ…どうだ?お前さえ良ければ俺はココでやっても一向に構わねぇーが…?」
「…悪いが金にならない試合は俺もやらない主義が」
「ちっ…守銭奴が…まぁ今日はいいや、おもしれぇー女も見れたし…帰ってやんよ…」
煉獄はきびすを返して、その場から立ち去った。途中の通路で先ほどリーゼント頭と揉めていた爬虫類顔の男が煉獄と肩をぶつけた。
「あぁん!?てめぇーぶつかっといて謝りもしねぇーのか!?」
「…あ?何か言ったか?」
(あ、ダメだこいつつえぇーわ)
爬虫類顔の男はすぐさま、その場から逃げていった。
「さてツイートするか」
煉獄はスマホで先ほどの撮影していた映像をツイッターに投稿した。
【朗報】例の悪女、真剣振り回すヤンキーを秒で制圧するwww
1名前:○さんはV好きのROM専
煉獄のツイッター見た?やばくねwww
2名前:○さんはV好きのROM専
仕込み刀を振り回すC級探索者を秒で制圧してたな
やばすぎた
3名前:○さんはV好きのROM専
あのラッパーヤンキー上がりでいっつもタイマンとかステゴロとかいってるくせに喧嘩で真剣出してて草www
4名前:○さんはV好きのROM専
なんかよくわかんなかったけど…
どういう映像なのあれ?気づいたら、ラッパーが
刀落としてうずくまってたけど
5名前:○さんはV好きのROM専
煉獄の解説だと、手刀をラッパーの刀を握ってる手にいれてるらしいな
早すぎて、ダンジョン探索者じゃなきゃ見逃しちゃうだろうな
6名前:○さんはV好きのROM専
まだレベル低いはずなのにすでにカメラでは捉えきれない速度で
動くとか草生えるわwww
7名前:○さんはV好きのROM専
Vtuber界一の才能の塊だった例のあの人が探索者格闘界隈で話題になってるのは想像しなかった…いや才能がやべぇーのは知ってたけど、まさか腕っ節まで強いとは
8名前:○さんはV好きのROM専
歌とかゲームド下手になって、言語力も日本語しか話せなくなってるらしいし、ライバーとしての才能全て捨てる代わりにダンジョン探索者の才能を手に入れるっていう契約を悪魔としたんじゃねw
9名前:○さんはV好きのROM専
等価交換草www
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