第40話 謎の男
確かに休暇を取るとは言ったが本当に暇である。ほかの人は何かしらの趣味を持っている。ミールは読書、ガーベラは料理作り、クロは人間観察をしに行った。ちなみにこの人間観察をしている途中に俺を見つけたそうだ。
各々自分のしたいことをしているみたいだが、俺だけはどうしてもやることがない。やりたいことね~。とりあえず町の中を適当に歩き回って面白そうなものを探しに行くしかない。
普段通る道は何も面白いことがないことがわかっているので、裏道とか通ってみるのも楽しそうである。
出店などがある通りはにぎわっているが、すごく栄えている町ではないので一本違う道に入るだけで人の声が遠くなる。そして、建物の陰になっているので昼間のまぶしさがだいぶ和らぐ。
「そこのきみ、こんなところで何してるんだい。」
裏道の奥に進んでいくと物陰から声がする。確かに治安がいい場所ではないだろうけど、こんなに早く声をかけられるとは思わなかった。
「暇つぶしに歩いているだけですよ。何か用ですか?」
「なに、こっちも似たようなもんだよ。」
物陰から男性が現れた。身長は俺より少し高いぐらいで、ガタイはいいが顔は随分と優しそうである。
「僕は久しぶりにこの町に帰ってきてね。ふらふらしてたら君を見つけたんだよ。」
「はあ、そうですか。」
「ふむ...」
物陰から出てきた男性はまじまじと俺のことを見ている。何か観察をされている感じである。
「そんなにまじまじと見て何ですか?」
「すまない、そんなつもりはなかったんだ。ところで君、冒険者だろ。そのステータスだと随分と戦いずらいじゃないか?」
「えっ。」
何だこの人、俺を見るなりステータスについて見抜いている。
「そんなに警戒しないでほしい、君と戦うつもりとかはないんだ。僕の能力でステータスが見れるんだ。」
そんな警戒しないで欲しいなんて怪しすぎるんだが、まあいいか。相手のステータスを見れる能力か、羨ましいな。
「まあ、戦いづらいですけど。」
「そうだよな。君ほどではないんだけど僕も似たようなステータスだったんだよ。」
「はあ。」
そんな同族感を出されても怪しいだけなんだよな。
「そんな君に戦い方を教えてあげてもいいかなって思ってね。」
「ん~」
「まあ、信用できないだろうね。じゃあこうしよう、僕を思いっきり殴ってみて。何もスキルとか魔法とかは使わない。教えようと思ってる技術だけ使う。」
急に殴れか、なんとなく試してみるか。しかし、どう見てもこの男性のガタイ的に堅そうではある。まあ、魔法とか使わないのであれば少しは痛いだろう。
「じゃあ行きますよ。」
俺は少し後ろに下がり助走をつける。そして、目の前にいる男性の顔に向かって思いっきりこぶしを振る。
「いっ...!」
なんだこの人、鉄よりも固いんじゃないか?人間を殴った感覚ではない。
「わかってくれたかな?」
目の前の男性は全くの無傷でこちらを見ていた。
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