第37話 帰還

 体が重たい。よくわからないモンスターと戦い、相当な疲労が溜まったんだろう。てか、意識が飛んだとこって森の中だよな、眠ってるとまずいだろうな。そろそろ起きないと。



「ユートさん!やっと起きたんですね!」

 気が付くと、隣にはミールがいた。随分と長い間意識が飛んでいたみたいで周りの景色は赤みががっていた。町から出たのは朝早かったのにな。

「みんなは大丈夫?」

「大丈夫ですよ、最終的に怪我をしていたのはユートさんだけですからね。」

 それはよかった。そうだよな、俺だけ回復する前にミールの魔法使っちゃったし。


 やっとの思いでモンスターと思われるやつを倒すことができた。実際のところどんなモンスターなのかさっぱりわからないが、人語を扱う上にコスモのスピードにもついてこれる時点で相当ランクは高いということは予想がつく。また、ギルドに戻ったら厄介なことをしたんだなって言われるんだろうな。そろそろ平凡に冒険者をやっていたいよ。


 ボロボロな体を引きずりながら町へ帰ってきた。ほんとに運がよかった、帰り道でモンスターと出くわしたら確実に何もできない。

 そして、クロがとてつもなくうるさかった。戦う人がいないのに、モンスターがうろうろいるところを歩くなんでできないだ、なんだと言っていた。さっきまでの勇敢さはどこに行ってしまったんだろうか。そんなことを言っているクロは鬱陶しかったけど泣きそうな顔は結構面白かった。


「ユートさん、随分と遅かったですね。ってそんなに怪我してどうしたんですか!」

 まあ、そうなるよな。ミールがいる中で怪我をしたままっていうのがおかしいことである。さすがのミールも全魔力を使ったため、なかなか人を治せるほど魔力が回復していない。


「おい、あいつが怪我したまま帰ってきたことあったか?」

「見たことなーよ、だって回復魔法だけは一級品のやつがいるんだろ。」

「そうだよな。ってことは喧嘩でもしたんか?」

「なら一緒に帰ってこないだろ。」


 俺が怪我をしていることにギルド内がややざわつく。なんやかんや高ランクのモンスターを倒してる俺らは有名になっている。しかし、よく面倒ごとに巻き込まれている様子を見ているので、チームになりたいなんて話はまったくもってない。俺だって好きで厄介ごとを引き連れてるわけではない。

 こっちの世界に来てから俺自身は平凡かもしてないが、それ以外のことが平凡とは程遠い生活となってしまった。まさか、ギルド内ではあるが有名人になるなんて思ってなかった。


「お前たち、事情は奥で聞かせてもらうぞ。」

 事態を聞きつけたギルドマスターは奥から出てくるなり俺たちを奥に案内する。またこれか、この雰囲気は嫌いなんだよな。

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