第35話 シーフの魔法は結構便利

「シャドウ」

 クロが身代わりとして魔法を使ってくれたが、これが適正にあった魔法なんだなと感心した。分身の魔力量とか全然違いがないし、姿は真っ黒ではなく見た目はそのままである。

「僕が使うのとは全然違う…」

「こればっかりは適性が違うので仕方ないことです。」

 てか、感心している場合ではない。あっちに先攻を譲ってしまったら、どうやっても勝てないことは明白である。なので、うまいこと奇襲をする。作戦がうまくいくことを願うばかりである。あとは俺の全力が効けばいいんだが。

「私も一応近くにはいるので全力でやってください。」

「ありがとう、そうさせてもらうよ。」

 ミールが近くにいるのは危ないが、回復がないとさすがにきつい。そして、全力で戦いやすい。クロがいるので逃げれしないが時間は稼げるとのこと。


 木の陰から分身が飛び出していく。

「やっと来たか、分身みたいだが全部切れば問題ない。」

 一瞬にして分身の一体が両断される。相変わらず太刀筋は見えない。ただ、腰の刀に手を置いたのが見えたので魔法の類ではないと思う。


「トラップ」

「ふんっ」

 クロがトラップを仕掛け、一瞬引っかかった。しかし、地面が抜ける前に違うところに移動していた。

「小賢しいな。そろそろちゃんと攻撃してきてもいいんだぞ。」

 人型の魔物は若干声に怒気がこもっておりイライラしている感じがする。てか、さらっとトラップに引っかかってる。オーガとは違って、こいつ魔法を全く感じることができないんじゃないか?


「シャドウ」

 クロはさらに分身を作り、あいつに向かわせる。そして、俺に対して魔法を一つかけてくれた。俺の予想が当たれば攻撃が当たる。

「何回やっても同じことだぞ」

 あいつはそう言いながら次々来る分身を切り倒していく。最後の一体を切ったとき、その分身から煙幕が噴き出す。

「ぬっ」

 あいつの声色からわずかな動揺が感じる。俺はその瞬間を見逃さない。煙幕の中からあいつの腹に剣を突き立てる。

「やるな、どうやったかは分からないが我に剣を刺した奴はおぬしが初めてだ。」

 ほめてくれているようだ。クロにかけてもらった魔法は足音などを一時的に消してくれるようで、効果的面だった。ちなみに自分にかけることはできないとのこと。

 てか、おかしい。腹に剣が刺さっている割には何も動揺していない。さすがに上位の魔物は腹に剣を刺しただけではダメージにならないのか。


「ここまでやったんだ、お礼に本気を見せてやろう。」

 そう言ってあいつの全身から何かオーラのようなものを出し始めた。そして、あいつの額には左右対称の角が生えた。

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