第32話 戦いの初めは逃走が基本

 前線は自分だけであることを確信しながらも森の奥に進んでいく。いやーつらい。クロからの目線がまぶしすぎてプレッシャーがすごい。

「本当に期待しないでほしんだけど。」

「またまた~、そんなこと言って~」

 こいつ本当に俺が強い奴だと思っているよ。何度も同じようなことを繰り返しており、話が進まない。何かしらサポートできることを見つけてほしんだが。

 

 森の奥に進んでいくとクロが急に立ち止まる。

「待ってください。魔物の気配がします。」

 マジが、俺もサーチを発動させているが全くその気配がない。

「どのくらい先にいる?」

「そうですね、僕の索敵範囲は1㎞くらい先までわかるのでそのあたりだと思います。」

 驚いた、本当に索敵範囲が広い。本気で言ってるのなら俺の10倍くらいは違う。いや、シーフなら当然なのかな。

「クロさんすごいですね、普通のシーフの方でも索敵範囲は、あっても200mくらいだと聞いていたんですが。」

「昔から魔物と戦うのは嫌いで、気が付けばこんなに広くなってしまって。」

 どんだけ戦いたくないんだよ。しかし、昔から魔物と戦いたくないからと、ここまでの技術を身に着けていることはすごいことである。


「結構大きい奴ですね。」

「このあたりで大きいといえば、オークぐらいですね。そうでなければオーガだと思います。」

「やっぱりそうですよね。」

 クロの表情がだんだん曇ってくる。戦いが近づいてくることで恐怖が大きくなってくるんだろう。しかし、俺たちについてくるってことはオーガと戦わなくてはいけないから仕方ない。あきらめてもらおう。そして、少しは戦いに参加してもらおう。


「一応聞くけど、クロは戦いに関しては何ができる?」

「前線は無理です。しいて言うなら、索敵と目くらましみたいなこと、罠を張るとかはできますよ。あとは相手によりますけど武器を奪うとか?ですかね。」

「なるほどね、ありがとう。」

 前線に関してはきっぱりと断られた。しかし、俺の使っているトラップとかは代わりに使えるのだろうから魔法に余裕ができるわけだな。

「じゃあ、作戦を伝えるからそれに合わせてやっていこう。」

 全員が頷いたことを確認し、作戦を伝える。この作戦がうまくいけばいいんだけどね。


 そして、さらに森の奥に進んでいくとオーガの姿が見えた。

「よし、作戦通りにいくぞ。」

 オーガはこちらに気が付いたのか、こちらを向き眼を鋭くさせる。隣ではクロが震えているような気がした。

 

「やっぱり無理です!」

 クロは勢いよく来た方向に走っていく。なぜそうなる!

「いったん俺たちも走るか!」

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