第30話 男の仲間が加入した

 変な男に付き纏われてしまった。何度もイタズラに引っかかった俺は家に帰ることにした。しかし、クロは後をつけてくる。こういうやつは無視してればどっかにいくだろうと思っていたのだが一向についてくる。

「あの何が目的なんですか。」

「なんでしょうね」

 本当につかめない人である。そうこうしている間に自分たちの泊まっている宿の近くまで来てしまった。

「そろそろ目的を言っていただけないですか?」

「それはですね……」

 クロが真剣な表情になる。

「仲間に入れて欲しいんです。」

「えっと、なんでですか?」

「なんか面白いことが起きそうな予感がするんです。」

 えー、それだけかよ。てか、面白そうなことってなんだよ。そんなことを考えているとクロが続けて話し始める。

「私は他のチームにいたことがあったんですけど、戦闘に使えないし、なぜか色々と厄介ごとに巻きこまるんですよ。それで煙ただられて。」

 なんだか心が痛むな。そんなことを言われてしまったら断るに断れない。正直俺も厄介ごとに巻き込まれるから大して変わりはしないだろうけど。

「はー、わかりましたよ。僕でよければチームになります。けど、チームにはもう2人いるので許可が必要ですが。」

「ありがとうございます!」

 今日初めて元気な声を聞けたような気がする。


「突然なんだけど、この人をチームに入れてもいいか?」

「いいですよ」

「いいよ!」

 突然言われたら断るよね……っていいんかい。急に知らない男をチームに入れるなんて断られるのかと思ってた。

「本当にいいのか?」

「全然いいですよ。ユートさんが連れて来た人なんですから悪い人ではないんですよね?」

「あたしもいいよ!仲間が増えてるのはいいことじゃない!」

 この人たちは何をそんなに信頼しているのだろうか。しかし、こんないい人たちでなんか嬉しくなる。

「あ、ありがとうございます!」

 クロは緊張しながらも自己紹介をする。


「いい人たちですね。」

 自己紹介が終わり、男女別々の部屋に分かれた時にそんなことを言われた。

「まあね。色々とふざげた人たちだけどね。」

「いいじゃないですか、楽しそうで。」

「そうだね。」

「ちょっと水飲んできます。」

 そう言ってクロは立ち上がりキッチンの方に歩き出す。するとばたっと倒れた音がした。

「大丈夫?」

「だ、大丈夫です。よくあることなので。」

 クロは何もないところで転び、その勢いでフードが取れていた。

「イケメンじゃねーか!」

 フードが取れてあらわになったクロの顔はあまりにも整っており思わず声が出てしまった。てか、何もないところでよく転ぶって。 

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