第29話 暇つぶし

 鍛冶屋の男には随分と失礼なことを言われたが、武器は作ってもらえるようであった。しかし、新しい武器にすると言っても俺の体型や力はあまりにも普通すぎるのでブロードソードと盾のスタイルでいくことにした。前よりは刀身は長くなったので威力は出るだろうが微々たるものである。

 剣は謹慎が終わる頃にできるみたいなのでそれまでゆっくり過ごすとしよう。しかし、何をして過ごすか。流石に魔法の練習だけだとすぐに魔力が底をついてしまう。だからと言って他のことか、何も考えつかない。2人にどう過ごすのか聞いてみるか。


「私ですか?私は読書でもして過ごしていようかなと」

「あたしは料理の研究してる!」

 なるほど、2人には趣味があるみたいだ。いいな、なんか俺も好きなことでも見つけられるといいんだけど。そうだ、明日からは趣味探しと行こうか。


 次の日。俺は町の中を散歩することに決めた。いい天気だ。なんて思いながら歩いている。しかし、何もない。もう少し町の奥の方に行ってみるか。しかし、何もない。これでは謹慎中は虚無な時間を過ごすことになってしまう。

 町の中を歩いていると茂みの方から音がする。

「誰だ!」

「何か用でしょうか?」

 後ろから声をかけられた。えっ、茂みの方にいたんじゃないのか。後ろを振り返ると深くフードを被った男が立っていた。

「今茂みの方にいませんでした?」

「今のはサウンドデコイというもので遠隔で物音を出すことができる魔法です。あなたがあまりにも暇そうなので驚かせようと。」

「そ、それはどうも……」

 なんなんだこの人は。なんともつかみどころがない感じである。

「あ、あのあなたはどちらさまでしょうか。僕は冒険者のユートと申します。」

「これは丁寧に。私はシーフのクロと申します。シーフといっても物を盗んたりはしないですよ。」

「そ、そうですか。」

「なんか足元に落ちてますよ。」

「ん?なんだこれ」

 足元にある黒い種?みたいなものを屈んで取ろうとすると、顔に向かって煙が噴射された。

「うわ!なんだこれ!」

 クロの方をみると表情までは見えないが肩が上下に動いている。さっきからこいつはなんなんだよ。

「これは失礼しました。私の魔法です。」

 笑っていたとは思えないほど無表情で言ってくる。

「つい出来心で。お詫びにこれを上げます。」

 そういって彼は少しばかりのお金を手のひらに乗せて渡そうとしてくる。

「お金は大丈夫ですよ。」

「いえいえ、お気になさらずに。」

 まぁーそこまで言うなら仕方ないか。手のひらに乗っている小銭に手が触れ瞬間、バチっと電気が走る。

「いっった!」

 またしてもクロは肩を上下に動かしていた。本当になんなんだよこいつは!

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