第18話 普通に依頼をこなすのは初めて

 オークは足場を奪われ、その場に崩れ落ちていく。最後の力を振り絞って攻撃しようとしていたのか、倒れていき、そのまま動かなくなる。大量の血が流れ、やっとの思いで討伐に成功する。

 

 今回もなかなか運任せの戦いをしてしまった。最後に使った魔法のパワーウィンドは、残りの魔力をすべて使用して、その魔力量に応じた強化がされる。本来はキングゴブリンの使っていた腕を切り落とすようなものであるが、魔力が少ないため、短剣を強化することしかできない。それでも至近距離であれば、十分な威力を出せる。


「やりましたね!」

 腰を抜かしながらも喜んでいる彼女の姿は少し面白かった。

「回復魔法ありがとうございます、少し痛いだけで済みました。」

「何で笑ってるんですか!」

 彼女は少し怒りながらも、差し出した手につかまり立ち上がる。まだ、怖いのか手が震えているのを感じた。

「大丈夫ですか?」

「まだ少し怖いですけど、安心しました。」

 まだ本調子ではなさそうなので、少し休憩をしてから町に帰ることにした。

 

 町に帰り、ギルドで報告をしようとすると、

「ユートさん、ミールさん、何も変なことはなかったですか?」

 なんでそんな心配をされるんだ。

「ユートさんはいつも戻ってくると、大体違うことをして帰ってくるじゃないですか」

 確かにそうだ。今まで冒険に出て、依頼をそのまま達成するなんてことは一度もなかった。それなら受付の人がそう考えるのも無理はない。今回は本当に何もなくてよかった。このままだと疫病神かなんかかと思われる。

「なんか、いつも心配かけてすみません」

 一応謝っておき、この場を後にする。これといってすることもないので町の近場で魔法の練習を少しだけして宿に戻る。


「今日はお疲れさまでした。また明日も冒険に行きましょう!」

「お疲れさまでした。そうですね、無理のない範囲で頑張りましょう」

 明日の冒険も何もないことを祈って寝るとしよう。

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