第14話 一段落

 キングゴブリンの首元から鮮血が吹き出す。上手いこと頸動脈を切れたようだ。相手は弱っているが、これ以上深追いするとなにをされるかわからない。


 距離を置こうと振り返り走り出そうとした瞬間、

「ユートさん!」

 次の瞬間には体は大きな手で覆われていた。やばい握りつぶす気だ。しかし、なにか魔法を使おうにも魔力は底をついている。

「ウゴォー!」

 キングゴブリンは叫びながら俺の体を握り潰そうとしてくる。体からバキッということが聞こえ、激痛がはしる。

 

「ハイヒール!ハイヒール!」

 彼女は何度も回復魔法をかけてくれている。そのおかげで何とか生きている。しかし、彼女もなかなか回復魔法を使っているのでいつまで持つかわからない。


 何分続いたのか、もしくはまだ数十秒なのか、激痛によりありえないほど時間が長く感じた。

 

 そして、キングゴブリンの握力は無くなり体からは痛みが消える。危なかった、彼女の魔力が底をつきるのでは無いかと心配であった。

 

「ユ゛ゥゥゥドざーーん゛!!」

 泣きながら彼女はこちらに向かってくる。

「ミールさん、ありがとうございました。あなたがいなければ死んでいました。」

「よ゛がっだでず。」

 さすがに、このままという訳には行かないので少し落ち着くまで深呼吸を促した。

 

 鼻はすすってるが、だいぶ落ち着いたようであった。

「しかし、ほんとにすごい魔力量ですね。さすがにもうやばい感じでしたか?」

「いいえ、まだ大丈夫です。半分いってないくらいですかね。」

 さすがにすごいとしか言えない。驚きのあまり目を見開いていると、

「私の体質なのか、回復魔法の効率も良くて、普通の人が使うのより10倍は効率的なんですよ。」

 本当に回復魔法にだけ特化してるんだな。


 「さすがに疲れたので帰りますか。」

 激戦を繰り広げ、2人とも疲れ果てたため、まだ昼辺りだか町に帰ることにする。


 町につき、ギルドによると、新人冒険者がキングゴブリンを倒したのはあまりに珍しく、受付の人も驚きながら心配してくれていた。

 ゴブリンを討伐した数とゴブリンの集落を壊滅させたことで、かなりの報酬金を貰うことができた。これで少しは楽に生活を送れるだろう。


 町には銭湯のようなものがあり、そこに行くことにした。日本出身の自分からすると凄く嬉しいものがある。ミールさんには少し不思議そうな顔をされたが、行くしかない、あまりにも疲れ果てているから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る