第9話 「ほしいから」 の呪い
「ほしいから」。
この感情って、どう思うのだろうか?
私は常にこの「ほしいから」と戦い、敗北してきた。
前回、「安いから」の話をぼんやりしたが
私は寧ろ「ほしいから」の呪いのが恐ろしいと思っている。
たしかに、「ほしいから」を満たすっていうのは、人の心の充足にはとても大事だ。
大事だが、本当に「ほしいから」で動いていいのだろうか。
私は、公言してるが、貯金ができない。
文字通り通帳はすっからかんだ。
だって、「ほしいから」ついついお金を使ってしまうせいだ。
それでも、今はまだいい。
昔は、もっと酷く、「ほしい」のミスをした。
私がまだ社会人一年目の頃だ。
私は可愛い服が欲しくて、好きなブランドの服を新作出るたびに買っていた。
給料のハミ出て、クレジットカード限度ぎりぎりまでやっていた。
全く似合わないのに。
その時の私はどうして、そんな服を「ほしい」と思っていたのだろうか。
今考えると、あの頃の私は他人から少しでも「可愛い」と思われたかったのだと思う。
私は正直言って容姿は良くない。
でも、服装に気をつければ、お洒落だねとか、服可愛いねとは言ってもらえてた。それが心地よかったのだと思う。
店員さんにも豪遊すればするほど、優しくしてもらえて、そういう特別扱いが若輩者には心地よかったのだ。
でも、その頃私は本当にその「ほしい」もので、本当に満たされていたのだろうか。
可愛い服だったが、その分機能性は良くなく、着心地も好きではない。服はお洒落だが、やはり顔と服はマッチしていない、
書きながら、よくこんな地獄みたいなことしていたなと思う。でも、それでも、その可愛いに縋りつきたかったのだろう。
しかし、「他人から可愛い」と思われたくて「ほしい」と思っていたのに、結果として服だけ褒められる始末だった。
そして、ある日それに気づいてしまい、私は負の遺産と化した服の前で項垂れた。
今目の前に積んである服は、私が好きでほしいからではなく、他人から私を可愛いと言ってほしいから買ったのだと。
そして、他人からの目線を除外したら、この服をほしいとは思ってなかったのだ。
あの瞬間の絶望は、正直一生忘れないだろう。
なんならトラウマだ。こんなもんに、クレジットカード溶かしていたのか? と自問自答した。
負の遺産は、その年の大掃除で古着屋に売りさばいた。二束三文にしかならなかった。
本当に「ほしいから」となった時は、
何故ほしいのかをちゃんと考えなければならない。
あの「安いから」の人に言いたい、安いからは明確な数字があるから、負の遺産もそこまで大きくならない。
しかし、「ほしいから」に明確な「根拠」はない。
だからこそ、「何故ほしいのか」を考える必要があるのだ。
そう、精神医学的に「物欲」というものを話そう。
というか、「欲」という字が着くものには殆ど共通する話だ。
人間は欲求を満たそうとした時、快楽物質「ドーパミン」が脳内出てくる。
言わば、宝くじを買う時、「もし当たったら」とドキドキと期待を募らせるあの感じである。
このドーパミンというのは、人間の気分を高揚させ、いわば幸福を感じさせてくれるものだ。このドーパミンが分泌不足になると、所謂やる気等が出てこず抑鬱状態というものになってしまう。
しかし、このドーパミン、いいところばかりではない。なにせ、厄介なのは、「脳内麻薬」というほど、身体が慣れてくると強い刺激を求めてしまうのだ。
ギャンブラーも、最初は千円とかで済んでいたのに、最終的には給料全額突っ込んでしまうようになるのもこれのせいだ。
または、買い物でも、昔は五千円のもので満足していたのに、気づけばバッグに百万円というのもこれに似たようなものだ。
前者は置いとき、後者は本当に欲しくて、それを一生使うなら問題ないだろう。
けど、結局使わずに部屋の棚にずーっと眠ったままなら、次は質屋に入れるときにしか役に立たないだろう。
とにかく、「欲」、「ほしい」というのは、あやふやでありつつも、人間の快楽に結びつく厄介なものなのだ。
そんな「ほしいから」に対抗するために、散財欲にまみれた私の対抗策の話をしよう。
さて、前回私は買う時、いくつか項目を設けて考えていると話した。以下がその内容だ。
「何故ほしいのか」(必須)
「どういうものなら買いたいのか」(必須)
「どのくらいまでにほしいのか」(任意)
「いくらまで出せるのか」(任意)
マジで、これは大事だ。
特に必須の部分はしっかり考えよう。
「何故ほしいのか」、ここで、「他人の目」「限定品」「最後の一点」「評判が良いから」のどれかしかないのならば、買うなやめとけ。
そのモノの肩書きか、他人の目でしかなく、自分の意志はないからだ。
「どういうものなら買いたいか」、他人の目も肩書きも排除して、自分が欲しい物を頭で描け。
もし描けなければ、今買う時ではない。でも、インターネットでどういうものがあるのかは、調べて行こう。
どういうものが自分にあってるのか見つかるはずだ。
そして、「何故ほしいのか」「どういうものがほしいのか」がわかったら、それは買う時である。
散財チャァァンス!
世にある全ての情報ツール、そして自分の足を使って、あなたが求めてるもの見つけにいこう。
時はまさに、大散財時代である。
残り二つは、財布の保全のために設けてある。
ぶっちゃけ、予算なんて気にすることはない。
自分で見つけた条件を満たした上で、気に入ったものを買いなさい。
そうすれば、「ほしいから」の呪いに抗えば抗うほど、購入する時の濃厚な「ドーパミン」が貴方を幸せにしてくれるだろう。
そして、買ったあとも、貴方のそばにいてくれる相棒になるだろう。
どんなモノを選ぶときも、「ほしいから」「安いから」「高いから」ではなく、もっと多角的な思考からそのモノを選んであげてほしい。
そう、私は思いつつ、今一番「私がほしい」財布を探しに行くのであった。
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