第17話 モンスターの解体

 王城に戻ると食堂に隣接した解体部屋に行った。

 狩猟したモンスターを取り出すとムス・デテが1匹づつ確認をしながら重さを計っている。


「モンスターを売る場合は取引所で全売りと部位売り、依頼の3つがあります。

 全売りは解体をしないで売る方法で星1以下のモンスターだとよく行います。

 部分売りは解体場で解体人か自分で解体して、売りたい部分のみを取引所に買い取って貰います。

 解体人にお願いする時はお金がかかりますが、状態のいい物でしたら高く買い取って貰えます。

 依頼は依頼を出したギルドにそのまま引き渡しを行います」


 ムス・デテが重さを計り終わるとシア・レを呼んだ。

 3匹のビック・マウスと1匹のコブ・ラビットが机の上に並んでいた。


「このビック・マウスの顔の部分に魔法が当たっていますが、当たっている部分がバラバラなので同じ位置に当てる様にして下さい。

 少し攻撃する位置を狭めるか、モンスターに近付くと範囲が小さくなります。

 コブ・ラビットを見て下さい。

 攻撃が目の上に当たるとコブに傷が付き、コブの買取が出来なくなります。


 明日は注意して、行って下さい」


 机に置いたモンスターを指差しながら説明をしているが、どうやって攻撃範囲を狭めるんだろうと思う。


 風の矢が真っ直ぐ飛んでいないのだろうか?


 イメージをもっと具体的にすればいいのだろうか?


「ビック・マウスの皮は安いけど、頑丈で色々な物に使われるので少し傷が付いていても買取されます。

 肉は普通に食べられていますが、王城ではモンスターの餌にしかしません。

 コブ・ラビットの皮はビック・マウスよりも柔らかく、衣服で使用されるのでよく売れます。

 コブは薬の原材料になります。


 ビック・マウスの解体を見せますので、覚えて下さい」


 ムス・デテは自分のナイフを取り出すとビック・マウスの腹を切り、ほとんど血が出ずに内蔵を取り出した。


「取引所に売る場合は内蔵を取ってから販売をした方がいいです。

 この部分が砂袋と呼ばれ、鉱物や宝石が溜まる場合になり、全売りだと回収は出来ません。

 不要な内蔵は解体場でモンスターの餌用に買い取ってもらえますので、専用のバケツに入れて下さい。

 モンスターの餌用はバケツ1杯単位で買取ができます」


 ムス・デテは胃の下にある袋を切ると数㎜の金属片が出てきた。

 その金属片を横に避けるとビック・マウスの皮を剥ぎ始める。

 ナイフが皮と肉の間を滑る様に動いており、数分で剥ぎ終わる。


「野営を考えると、この状態まで出来きた方がいいと思います。

 肉の状態にする事が出来れば、長期の移動や調査に持って行く荷物を減らす事が出来ます。


 皮や希少部位がいらない時は内蔵を取った状態で取引所へ売って下さい。

 全部解体を行わなくても、買取価格に大きな差はないです。


 もう一つ、皮や希少部位が欲しい場合は【解体】のスキルか、スキルを持った解体人にお願いする事をお勧めします。

 そのままだと傷んでしまうので、皮は革職人に加工を依頼し、希少部位は薬の原料なら薬師、装飾品や道具なら革職人や装飾職人に加工を依頼して下さい。


 練習なのでビック・マウスの解体からやってみましょう。」 


 ムス・デテは机の上にビック・マウスを置くと机の横に置いてある解体用のナイフを渡す。

 ムス・デテと違い、所々でナイフが滑らずに止まるから切り口が真っすぐでなく、内臓を取り除く時に血が流れ出る。

 皮を剝ぐ時はもっと悲惨で練習の時と一緒で皮にナイフが刺さり、傷つけてしまう。

 難しいがやらないと上達がしない事は分かっていたので、もう一匹のビック・マウスの解体を行った。


「他の残っているモンスターの処理はムス・デテさんが行います」


 ムス・デテに変わり、対面に立ってナイフの動きを見ているが別物だった。

 自分が行った時間の半分以下でモンスターの解体が終わり、取り出した鉱物を水洗いしている。


 【解体】スキルを取得すれば、もっと違うのだろうか?。


 ムス・デテが目の前に鉱物を2つ出してきた。

 1つは濁った銀色をしており、1つは濁った銀色が光の加減で青系の線が見える。

 青系の線が入っている鉱物を渡すと、光に当てる様にジェスチャーしてきた。


「運がいいそうです。

 それが魔鉄で鉄が出る確率の100分の1しか出ず、星1以下のモンスターは銅や鉄などの鉱物はよく出ません。

 その大きさで銀貨3~5枚する貴重な物です。


 鉱物や宝石は商人に売った方がお金が高いので、持っていて下さい。

 ビックマウスの皮、コブラビットの皮、コブは買取しますか?」


 加工をしないと傷んでしまうと聞いている事と城を出る時に荷物を多くしなくないので売ること以外は考えていなかった。


「お願いします」


 ムス・デテはモンスターから出てきた鉱物を入れた小さな袋と銀貨3枚と大銅貨6枚を渡してきた。

 肉は㎏で価格が決まり、皮や希少部位は1個単位で買い取りが常識らしい。

 本当は傷付いた皮は価格にならないらしいが通常の金額で買取った事を聞くと感謝しかなかった。



「マジックバックと魔力回復薬が欲しいんだけど、商人はいつ来ますか?」

 

「マジックバックはダンジョンのアイテムの方が質のいい物が手に入る可能性が高いので商人から買わない方がいいと思います。

 王城にある訓練用のマジックバックを旅立ちの儀までお貸しする事が可能なので、利用して下さい。

 魔力回復薬は商人から買わなくても、騎士団が使うので城の製薬所で販売をしております。

 魔力回復薬の星なし2本で銀貨1枚、星1で銀貨5枚だと思います。


 今日のケンゾさんの魔法は良かったので、ルエデトさんに報告しておきます」


 魔法が有効だから魔力を回復する魔法回復薬は買い溜めをしておきたいからお金を稼ぐ事に集中する。

 それにしても、魔法を褒められた事で不安だった気持ちだったからシア・レの言葉が嬉しい。

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