第18話 森の女神

 昨日と違い、午前中から森へ行く事になった。

 薬草採取の話をしたら、シア・レが冒険者時代に薬草の採取をしていた話してきて、森の付近にある薬草を教えてくれる事になった。


 早朝のランニング後に立ち寄った礼拝堂でステータス画面の経験値の数字が光っている。

 “レベルアップ”画面を開き、『はい』に触れるとレベルが2になった。

 

 【木田賢三 46歳 地球

  職業:勇者 レベル:2

 生命値 101  魔力値 99

 基礎攻撃力 66 基礎防御力 36

 筋力 40

 耐久力 24

 俊敏力 25

 知力 53

 集中力 53

 経験値 135 スキルポイント 223

 スキル 強奪3/1p 身体強化1/2p 魔力回復0/8p

   ウインドアロー9/6p ウインドガード0/3p】


 一番の上昇は知力と集中力が5で、他の能力値は2~3の上昇だった

 スキルポイントは3しか上昇しておらず、書物に書かれていた通りにスキルポイントの上昇率は低い。

 それよりもレベルが上がっても経験値は0pにならず、ポイントが残っているって事はレベルを上げなくてもいいって事になる。

 ゲームの世界だとモンスターのレベルが離れる程に経験値が多く貰えるシステムがある。


 この世界にも同じシステムがあるのだろうか?



 朝食後に昨日と同じ格好をするとシア・レと共に森へ行った。

 昨日、ムス・デテとお祈りをした森の入り口にある女神像が気になって、ウイスキーを1本持って来た。

 この女神は他の像と違い、優しくて、懐かしい感じがする。

 女神の像にウイスキーを置くと身分証を置いて、【貢ぐ】の部分に触れる。


「これはなんじゃ?」


 女性の声がした。

 シア・レと森の入口にいたはずが、白い壁の部屋で手に貢物のウイスキーを持っている女性が座っている。

 女性は森の女神よりも幼い印象があるが、服装が森の女神だった。


「私がいた世界のお酒です」


「ちょっと待て」


 そう言うと女性の手にグラスが握られて、宙に浮いたウイスキーのボトルからお酒が注がれている。


「これは美味しいぞ。

 まだあるのか?」


 銘柄は別々だがコンビニから持ってきたウイスキーは10数本ある。


「あります。

 今度、持ってきます」


 森の女神は満面の笑顔で近付いてくると肩を組んだ。


「お前は気に入ったから加護をやろう。

 加護は星1でいいな」


 え、加護って何だろう。

 シア・レの勉強でそんな話は聞いた事はない。


「あ、はい」


「加護を与えたから、能力とスキルは何にしようかな。

 狩人をするのか?」


 話が理解できなかったが、ゲームで考えるといい話だと思う。


「分かりません」


 何をするかは決めていないし、選択肢は多い方が良いに決まっている。

 今は曖昧でいいと思う。


 森の女神は右手を掴んできた。


「風の神と弓、【強奪】か…


 じゃあ、【クリエイティブ・ウッド】星1でいいかな。

 加護のスキルとしては、弱いから能力は効果向上と消費魔力軽減(森)、森の囁き、植物鑑定の4つでいいかな。


 この能力があれば狩人として生計も立てれるじゃろう」


「あの、何を言っているか分かりません」


 森の女神は自分を狩人にしたいのだろうか?


「知らんのか?


 神に貢物をして、認められると加護が貰えるんよ。

 マイナーな女神だから、ここ数百年間はろくな貢物がなくてな。

 加護を付けて、貢物を増やそうとしているのじゃ」


 貢物が欲しいと自分で言うな。

 友好的な神みたいだし、加護を貰っているから何か聞いても怒らないかな。


「聞いてもいいですか?」


「いいぞ」


 森の女神は手を離すとウイスキーを飲んでいる。


「神は二つに分かれていないのですか?」


 森の女神は驚いている。


「何も知らんのじゃな。


 神は自由気ままに生きておるぞ。

 私はこの世界で言う中立神で森の中でしか使えないスキルも多いから、ダンジョンに行く勇者が多くなると貢物が貰えなくなったんじゃ。

 そんな事も知らんのか」


 森の女神の顔が嬉しそうだ。

 絶対にお酒で上機嫌になっている。


「はい。

 加護について教えて下さい?」


「中立神だから、勇者の有利になる事は教えられないけどな。


 神に貢物をして、気に入られると加護が貰える。

 加護に星が付くたびにスキルを1つ渡す事になっていて、それに対する能力も渡す事になっている。

 星は付けなくてもいいけど、加護が星3の場合にスキルや能力に星がないとバランスが悪いので付ける神が多い。


 ケンゾウは弓以外は大した事がないみたいだから、植物で出来た物を作り出すスキルを授けたんじゃ。

 何処でも矢を作り放題じゃ。


 いいスキルじゃろ」


 森の女神が名前を呼んでいる。

 握手をした時に情報を読み取ったのだろうか?


「この世界の神について教えて下さい」


「どこまで教えられるかの。


 戦いの神が双子で姉のトトスと妹のメナスと言う。

 姉妹のどちらが戦いに秀でているか競って追って、それに付き合っている神も数名はいるが、ほとんどがどっちでもいいから中立神になっておる」


「風の神はトトス神側なんですか?」


 自分に相性がいい神の事を知っておけば、加護を貰いやすくなる。


「中立神じゃぞ。


 トトス派は光の神とお金の神、芸術の神で、メナス派は闇の神と知恵の神、模造の神、迷宮の神じゃ。

 それ以外の神は全て中立神になっておる」


「森の女神様は貢物は何がいいですか?

 風の神様は何を喜びますか?」


「私はお主の世界で言う“蜂蜜酒”や“薬草酒”の様な色の濃い酒と花も好きじゃぞ。

 風の神は“蒸留酒”や“透明なお酒”と白い宝石を集めておった」


 この世界の神様は酒好きなんだなと思う。

 貢物の上位が酒なんてな…


「今、いらん事を考えていなかったか?

 加護を与えると触れなくても心が読める様になるから気を付けるんじゃ。

 悪い事をすれば、加護の剥奪もあるからな。


 それにしても【強奪】のスキルとはレアじゃの。

 精進するがいい。」


 周りの景色が変わり、森の女神の像が見える。

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46歳が転生って、何するの? @polipuro

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