第13話 強奪のスキル
夕食中にユウミがやってきた。
「コンビニにある物は均等に分けないといけないと思います。
自分だけ優先的に取って行くのは違うと思います」
何を言っているか分からなかった。
「何を言っていますか?」
ユウキとカナが急いで走ってきた。
「ケンゾウさん、すいません。
ケンゾウさんでないと言っていたのですが、コンビニからビールとおつまみがなくなっていたんです」
ユウキの一言で意味が分かった。
「ユウミさん、ビールとおつまみを持って行ったのは自分ではないです。
疑うなら、今から部屋に来て頂いても問題はありません」
ここはハッキリさせないと問題がこじれてしまうと面倒だと思った。
たぶん、コンビニから持ってきたのは異世界から来たもう一人の男性だと思う。
「そんなはずはない。
あなた以外にコンビニで取って行く人はいません」
ゆっくりと立ち上がると食器を片付け、部屋まで一緒に来てもらった。
部屋に支給品以外は何もない事にユウミは驚いていたが、マジックボックスに隠していると騒いだ。
ユウキにマジックボックスの中の物を出させるとビールやおつまみは全く出てこなかった。
「この世界に来た日に腐る物は均等に分け、欲しい物は取りに行って欲しいと言いましたよね。
欲しい物があったなら、早い者勝ちだと全員に言っていたと思いますが、違いますか?」
赤の他人が集まっていて、法律もない異世界でルールを決めても守る人がいないと思ったから早い者勝ちにしたのに。
本当に辛いな…
「なら、残っているビールを全部持ってきても問題はないですね」
ユウミは怒りが冷めない態度で強く言っている。
「お好きにして下さい。
残り物で十分ですので、自分は明日の朝に見に行くつもりです。
それまでに必要な物を取って頂けると有難いです」
ユウミが出ていくと、ユウキとカナはこちらを見ている。
「ユウキさんとカナさん、余計な事かもしれませんが聞いてもらえますか?
ユウミさんとメグミさんがコンビニに行った後でいいですが、飴やチョコレート等の長期保存が出来て、糖分があるお菓子を取りに言って下さい。
この世界に甘い物は果物以外はないかもしれません」
カナが少し微笑むとユウキが一礼をして、部屋を出て行った。
ユウキとカナを見ていると大人の目線からもう少し助言をするべきか悩んでいる自分の不甲斐なさを感じる。
マジックボックスに出した物を片付けているとベットの上にある箱入りのクッキーチョコレートを開けた。
一口食べると涙が出そうだった。
勉強をし直そうと携帯電話を見ると充電が少ない事に気付いて鞄から充電器を取り出して、充電を始める。
充電まで時間があるので、交換日記のノートを書き始める。
図書館にスキルや色々な情報が載った本がある事と短剣と弓の訓練の内容を書き、携帯電話のカメラ機能で翻訳ができる事はユウキに話したので書かなかった。
携帯電話の充電が貯まるとカメラで撮った動画を止めながら、読み進める。
スキルは体内の魔力を消費して、転換する方法でスキル自体は神の能力の一部であり、魔力がないと使えないみたいだ。
シア・レが言っていたが、スキルはクラスアップすると星が1つ与えられるがクラスアップにもスキルポイントを消費する。
最も驚いたのがレベルアップして与えらえるスキルポイントは2~5pである事と他にスキルポイントを増やす方法は神名石を割る事以外はないらしい。
言語取得と調薬のスキルを取得している事で80pの消費はポイントが足りずにスキルの上昇が途中で止まっていたかもしれないと考えると怖くなった。
スキル取得やクラスアップに関しては慎重に考えてから行なわないといけないと本気で思う。
次にトトス神のスキルが書かれている動画を見ており、たぶん身体強化系魔法が主な気がする。
スキルをクラスアップする毎に新しいスキルが追加され、系図が書かれているからスキルを増やす為にはクラスアップが必要な事が分かる。
【身体強化】1分間の身体能力を5%上昇
↓→【筋力上昇】1分間の筋力を5%上昇
【身体強化★】3分間の身体能力を5%上昇
↓→【持久力上昇】1分間の持久力を5%上昇
【身体強化★★】5分間の身体能力を5%上昇
↓→【敏捷上昇】1分間の敏捷力を5%上昇
【身体強化★★★】10分間の身体能力を5%上昇
【身体強化★★★】までしか書かれていないって事はそれ以降は分かっていないのかもしれない。
星が付く度に身体強化の時間が延びるだけなら、今は必要ないから魔法の使用は止める事にする。
【魔力回復】も同様に星が付く度に時間が延びるが、【身体強化】よりも戦いで重要になりそうだが時間があればって感じだった。
それよりもレアスキルが書かれている事に驚いている。
レアスキルの宙に浮く【フライ】や短距離で転移する【セコンド】等が書かれており、一般スキルよりも魅力的なスキルが多かった。
これを見ると一般スキルの能力とレアスキルの能力に差があり過ぎるからレアスキル取得にスキルポイントを使う方が有効的に思える。
それでも貴重な情報だったので、スキル情報をノートに記録した。
風の神の本の動画に移ると、【ウインドアロー】は星が2つまでしかわかっておらず、派生は【ウインドランス】と【ウインドカッター】になっている。
【ウインドガード】はもっと酷く、星1つで派生は【ウインドウォール】が書かれている。
レアスキルに分身を作り出す【陽炎】や風の竜巻で全体攻撃をする【サイクロン】が気になるけど、どうする事も出来ないからノートに記録した。
勉強も一段落して、魔法の自主練を考えていた。
身体強化系魔法の訓練をするなら能力の強さが分からない勇者スキルを強化する方が有効な気がしている。
体力回復薬や魔力回復薬があるならその薬に頼るのが得策でしょう。
机の上に置いたクッキーの箱に日本の硬貨を入れて、魔法で硬貨を取り出してみる事にした。
「強奪」
何も起きない。
何が悪いのか考え、500円玉のイメージをして魔法を唱える。
「強奪」
握った右手の中に硬貨らしき物が握られている。
手を開くと500玉が握られている。
500円玉がないから右手のひらを上に向けて、50円玉をイメージながら行う。
「強奪」
手のひらの少し上から50円玉が1個落ちて、手の中に入る。
確実にイメージをしないと物が奪う事は出来ない事が分かった。
次に10円玉が数枚あったので複数枚取れるか、チャレンジしてみる。
「強奪」
50円玉と同じ様に10円玉が1枚だけ手のひらに落ちてきた。
イメージが1枚だけだったから駄目だったかと思い、2枚でイメージをする。
「強奪」
頭が痛い。
手が動いたので床に10円玉が1枚落ちた。
対象の物を1回に1個しか物を奪えない事が分かった。
それにしても、魔力切れが速いから魔力消費が高いんだと思いながらベットに横になっていた。
頭の痛みが取れると、直ぐに『強奪』を唱えたが発動しない。
5分間経ってから、『強奪』を唱えると頭痛と共に10円玉が握った手の中に入っいる。
魔力切れは魔力値の1割で起こると言っていたので、『強奪』のスキルは魔力を10消費する事が分かった。
それにしても、『強奪』のスキルは何の役に立つのだろう?
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