第7話 礼拝堂

 神託の儀を終えて、ユウキとカナの神託の儀を見ていた。

 ユウキの後ろをカナがついて歩いて、話しながら進んでいた。

 本当に二人は仲がいいんだなと眺めているとユウキが手を振ってきた。


「礼拝堂でお祈りは許可してもらえますか?」


 信仰心がある訳ではない。

 ステータスの確認が礼拝堂以外で出来ないから毎日ここで自分の成長具合を確認しておきたいと思っている。

 成長具合が分かる事によって、今後の戦略が変わってくる。


「お祈りは司祭が居れば、開いているのでお祈りは可能です。

 朝は掃除があるので日の出と共に礼拝堂にいると思います。

 入る時は司祭に挨拶をしてから行なってください。


 ケンゾさんは言語理解を取得しませんでしたね」


 シア・レの一言に息が止まった。

 スキル取得の情報が分かっているのだろうか…


「言語理解を取得すると勇者語からこちらの世界のエベツト語になります。

 ケンゾさんは勇者語のままですので分かりました。

 取得をしないと会話を最初から覚えるので生活が大変ですよ」


 言語理解のスキルの習得はしたかったがスキルポイントが高い事と習得させる事に疑問が残っていた。

 自分の好きなゲームやアニメは異世界にいった者は確実に言語理解のスキルをただで与えられている。

 なので、この世界の言語は頑張れば習得できるレベルじゃないかと思ている。

 

 それよりも習得したスキルの情報が分かっていた訳ではないのか確認したかった。


「言語理解の取得は迷っています。

 スキルポイントが高いので、旅立ちの儀まで時間があるのでゆっくり考えます。


 何のスキルを習得したのか、聞かないんですか?」


 シア・レはこっちを見て、少し嬉しそうに見えた。


「習得したスキルに関しては旅立ちの儀までは聞きません。

 その後は城や街に入出確認、ギルドや取引所の使用の際に情報が王城に集まる様になっております。

 城にいる1年間をどう過ごすかは、勇者様が考えて行ってもらうのが一番だと考えております。

 我々は勇者様の管理を行う者になりますので、誤解しないで下さい。


 言語理解を習得していないので、言語学習をスケジュールに入れておきます。

 午後から時間がありますので何かしたい事はありますか?」


 シア・レが言っている事に恐ろしくなった。

 勇者を尊敬している感じが感じられなく、本当に国民の1人として考えている様にしか感じられない。

 何十人もの勇者が来ていれば、悪い勇者もいたのだろうと思うと不安になった。

 異世界の国民も他の勇者も信じられないのかもしれない。


「このまま、城内を散歩してもいいですか?

 城内を知っておきたい。


 散歩が終わったら、この世界について知りたい」


「分かりました」


 ユウキとカナはこちらを見たので、手を振ってからシア・レと共に礼拝堂を出た。

 礼拝堂は城の1階の城門の近くにあり、騎士団の待機所や食堂、調理場、鍛冶屋が並んでいた。

 その他に会議室みたいな部屋があり、複数の宿泊部屋の1つを使っている。

 2階は何百冊の本があるか分からない程の大きな図書館と7個の訓練所、近衛兵団の待機所、貴賓用の宿泊施設があった。

 貴賓用の宿泊施設は自分の部屋の3倍以上はあり、ベットはフカフカで装飾がされており、ソファーやテーブルまでが高い事が分かる作りになっていた。

 ここまで違うと勇者である事に得を感じない…


 魔法の訓練場は屋外にあり、転移した時にいたコンビニがある場所だった。

 コンビニは場所は中央に近い場所にあったが端に寄せられていて、兵士が入口に立っていた。

 3階以上は王族や貴族がいるので、立ち入らない方がいいと教えられた。

 細かい規則があるみたいで過去に王族や貴族へ失礼な行為を行った勇者がいて、監視用の騎士が付いた話をしだした。

 普通に話すシア・レに少し驚いたが今までの流れだとこれはこれで普通なんだろうを思った。

 それと旅立ちの儀までは城から出る時にシア・レが同伴でなければ、罪になると言われた。

 ま、話せないからシア・レが通訳としていないとダメだけどね。



 午後からは食堂でシア・レと勉強をする事にしたので、部屋にノートとペンを取りに行った。

 席によく分からない香りがするお茶とパンに肉が挟んであるサンドイッチが用意してあった。

 多分、お昼を用意してくれたのだろう。

 サンドイッチの肉を見て、ハムやベーコン等はないのだと思った。


 「この世界の事を教えて欲しい」


 シア・レはマジックバックから大きな地図を出すと中央の大陸の下側のと丸を指差した。


「今はここにいます。

 この世界は五大陸から出来ており、ここはエベツト大陸のアセト国家の首都にいます。

 エベツト大陸は下の3分の2がアセトの国家、上の3分の1がエセテの国家、左下の森林部分がシェルの国家になります。

 左の大陸はシェルの国家で、右上の大陸はエセテの国家です。

 右下の2つの大陸はテミアセトの国家です。


 アセトはケンゾさんみたいな種族、エセテは背が低く力の強い種族、シェルは私達種族、それ以外はテミアセトになります。

 言語はエベツト語が共通語で会議や交流に使われており、アセトはエベツト語のみしか話せない人が多いです。

 シェルは7部族いるので4つの独自言語があり、エセテは3部族いますが独自言語は1つになります。

 エベツト大陸以外はエベツト語を話せない人が多いので、知っておいて下さい」


 この世界は3種類の種族で成り立っていて、言語理解のスキルを習得しないとエベツト大陸以外に行く事は考えない方がいいかもしれない。

 地図だと大きさが分からないけど、車や飛行機がないとエベツト大陸を回るだけで人生が終わってしまうのではないかと思った。


「通貨はどうなっていますか?」


「通貨は銅貨、大銅貨、銀貨、大銀貨、金貨、大金貨の順で10枚で次の硬貨に交換出来ます。

 それと王家が発行する魔金貨があり、大金貨100枚相当です。


 物の価格は自由に決める事が出来るので、同じ様な物でも2倍以上の値段がする事がありますので気を付けて下さい」


 銅貨を1円だとすると、大金貨が100,000円になる。

 貨幣に関してはこの考え方で問題はないと思うが、自由相場って所が外国感を感じてしまう。

 元いた世界でもよく聞く話を思い出すと勇者価格が存在するのではないか。


「このマジックポーチはいくらなの?」


「そのマジックポーチは星1なので金貨5枚くらいが妥当です。

 スキルやダンジョン、物等の全てに関して、星なしから星5で判断をします。

 物で例えると星が多くなる程に性能が高くありますが、星3以上の物はほとんど存在しません。

 星4だと王家や一部貴族以外は購入する事さえ出来ないから見る機会すらありません。


 マジックポーチとマジックバックは星が上がると入れた物の重量が軽くなります。

 星3は重量が24から20分の1、星2は重量が19から10分の1、星1は9分の1以下の重量になり、星なしは普通のポーチやバックで分けられています。

 入る量は星の等級と関係がなく、使ってみないと容量は分からないです。


 星1以上はダンジョンで手に入り、星1と星なしは道具職人で作れます。

 星2は稀にしか作れず、星3を作った魔具師はいないのでダンジョンで入手できるアイテムの希少性を理解できると思います。


 城にいる時は商人が来ますのでそこで購入するか、旅立ちの儀以降は取引所を通して購入する事をお勧めします。。

 他はルテール商会やミスアル商団はエベツト大陸で最大の商人集団なので、取引所にない物を扱っている場合もあります。


 今回、お渡ししたマジックポーチはダンジョンで手に入れた古い物なので差し上げます」


 シア・レの説明に少し不思議な所があった。

 容量が分からずに入れた物の重さで等級が決まるって事は秤で測って、等級を決めている事になる。

 ゲームの世界で鑑定のスキルがあったが、この世界に鑑定のスキルはないのだろうか?


「鑑定のスキルはないの?」


「鑑定のスキルは勇者様が持っている事はありますが、取得した人の情報はありません。

 なので、商品の等級は取引所が定めて付けおります」


 鑑定のスキルがないって事は自分のスキルやレベルが他人に知られる事はないって事だろうか?


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