第2話 コンビニ
高校生のカップルと自分の3名はコンビニに行く事にした。
他の人はコンビニの往復する事を嫌い、自暴自棄になっている様に見える。
考えている事も分からない事はないけど、今は現状を受け入れるしかないと思っている。
「すいません。
工藤祐樹と言います」
高校生の男性が話しかけてきた。
「あ、木田賢三って、言います。
ユウキくんでいいかな?」
これ以上の嫌な思いをさせない様にユウキに穏やかな顔で返す。
これからの生活で数少ない男性のユウキとは仲良くなりたい。
「ユウキでいいですよ。
ケンゾウさんって、呼びますね。
これからどうしたらいいですか?」
今する質問にしては重たい…
自分も何をしていいのか、分からないし。
「したい事をすればいい。
協力をしてくれるなら、異世界の情報を共有したい。
後はコンビニで」
「分かりました。
カナも協力してくれる?」
男性の横にいる高校生の女性は頷くとユウキを見つめている。
2人に手を振ると世話役の2級書記官のシェルアシアレに近づいて、世間話をしてみる。
会話に違和感がなく、コミュニケーションが取れている事に驚かされる。
それにしても、シェルアシアレは漫画の世界でよく見るエルフに似ているがこの世界ではシェルという種族らしい。
なので、シェル族のア地域のシア・レさんが名前なので“シア・レ”と呼ぶ事にした。
「シア・レさん、勇者を見るのは初めて?」
シア・レは不思議そうな顔をしている。
「いいえ、勇者を見るのは30回以上ですよ。
平和の神が5年に1回のペースで勇者を召喚します」
「勇者はいっぱいいるの?」
「ケンゾさんと一緒で異世界から来た人を勇者と言います。
なので、ケンゾさんを含めると40人位はいますよ」
え、勇者が多すぎない。
勇者が5年に1回も召喚されるって、何もしなくても定期的に来る人みたいで特別感がなさ過ぎる。
だから、お祝いムードもなければ、46歳の自分を見てもがっかりしない訳だ。
普通はこの年齢の勇者はがっかりするでしょ。
「これからどうなるの?」
「説明はゆっくりした方がいいから、簡単にします。
ケンゾさんの地域の人は大人しいから強制的な事はない予定だけど、1年間は反抗や抵抗をしないで下さい。
反抗や抵抗をすると首輪を付けて、大人しくさせる事をしないといけない。
1年間は戦い方や魔法の使い方、法律や植物、モンスターの勉強などをします。
その後は旅立ちの儀式が行われて、冒険に行ってもらいます。
旅立ち後に法律を犯すと普通に罰せられるから気を付けて下さい」
シア・レは初めてでないから事務的な説明と無表情に近い感じで話しているが、言っている事が恐怖に感じるのは自分だけだろうか?
反抗や抵抗をすると首輪を付ける…
奴隷扱いにしか感じられないから話を逸らす事にする。
「自分は冒険をすればいいのですか?」
「冒険です。
おかしいですか?」
おかしいだろう。
勇者は魔王を倒す為の者って、ゲームの世界では決まっている。
ただ、冒険する為に異世界に呼ばれた事になる。
「魔王を倒す使命があるとかではないの?」
「魔王もいっぱいいます。
倒しても、次の魔王が生まれるから倒す事は望んでいません。
ただ、魔王が侵略をしてきた時に勇者は強制的に戦ってもらいます」
「どうやったら帰れる?」
「帰り方はあって、魔王が作ったダンジョンにあるゲートで帰れます。
ゲートは5個で移動するので、どのダンジョンにあるか分かりません」
魔王が30人居たら、30個のダンジョンがあって、その内の5個にゲートがある。
ダンジョンを攻略してもゲートがないと帰れない…
なんか、複雑な気持ちになる。
それ以上に元居た世界に戻る為で戻りたくなければ侵略してきた魔王以外と戦わなくてもいいって事だろう。
もっと言うとダンジョンに行かなくても、モンスターと戦わなくても問題がない事になる。
この世界は勇者をどんな存在だと思っているのだろう。
突然、太陽の光で目の前が明るくなるとコンビニが見えた。
コンビニの中に入ると変わりがなく、人が入った形跡がない。
高校生達がコンビニの中を走っていく、雑誌売り場に落ちているビジネスバックを拾うと携帯電話を見る。
圏外…
高校生のカップルが走ってきて、携帯電話を見せたが圏外になっている。
2人とも分かっていたから落ち込みもしないでポケットに携帯電話をしまう。
「ケンゾウさん、どうします」
高校生は頭が良く、単独行動を取らない選択は間違っていない。
ここは数日間は安全な生活ができる様に食料品の確保を優先にすべきだと思う。
「食料品と水の確保をしましょう」
そう言うとシア・レを見ると言葉が分かるから笑っている。
「ここにある食品や飲み物を持って行きたいが荷物を入れる袋とかありますか?」
「マジックバックは渡せないのでマジックポーチならお貸しできます。
一様、予備を持ってきたので使って下さい」
シア・レは服の内側から2個のポーチを出した。
全体が茶色の麻袋の様な質感で等間隔で赤と黒の糸で模様が入っている25cmの正方形の巾着袋を受け取った。
「どれぐらい入ります?」
シア・レは少し無言で無表情のままで答えた。
「量の回答が難しいです。
でも、星2魔具なので入れた重量の20分の1の重さになります」
冷蔵食品と冷凍食品を優先的に食べたいが、この世界は夏の様な温度なので腐る事を懸念した。
「肉は腐る?」
「肉はポーチだと時間はそのままなので腐ります。
バックなら時間が遅くなるので10時間で1時間くらいの経過になります」
マジックバックがあればここにある冷蔵と冷凍の食品を腐らせることなく食べる事が出来るので手に入れたい。
ここはダメ元でお願いするしかない。
「マジックバックが欲しい」
「差し上げる事はできませんが、お部屋に用意はさせて頂きます」
シア・レは冷静に答えるから拍子抜けしている。
過去に同じ事をきいた勇者がいたのだろうか?
横で話を聞いていた高校生に監視役からマジックポーチを出させると5個のマジックポーチが手に入った。
高校生達に必要な数日間の食料品を確保する事とタオルや下着を優先的に取る様に指示した。
お菓子も持って行こうとして、口喧嘩になっていたが大切な事だと説明すると入れられるだけポーチに詰めていた。
自分はポーチの1つに余った冷蔵食品と冷凍食品、お茶とジュースを詰めれるだけ詰める。
これはここに来ていない人と分配する為に詰め込んでいて、揉め事を回避する為に必要な事だと考えている。
もう一つのポーチは自分用としてカップラーメンと水、ノート、筆記用具、飴、チョコレート、バームクーヘン等の甘い物を詰めるだけ詰める。
冒険に行くならカップラーメンは必需品で川の水が飲めるか分からないから水は欲しい。
後はチョコレート好きなので…
「シア・レさん、ありがとうございます。
移動しましょう」
シア・レにコンビニのチョコレートを差し出さすと目の前に手を出して拒否をする態度をとった。
「異世界の食べ物は毒が入っているかもしれません。
なので、受け取れません」
毒って言われると胸に棘が刺さった感じがする。
この毒入りの食べ物は自分にとって重要なんだけどな。
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