第338話
龍王たちも今出せる全力の
アルティ曰く今のオディウムはすでに死んでおり操られている状態だ。そして本来魔王が持っている能力も使えない状態でこれほどの強さを誇っている。
ここにいる覚醒者たちは必死で願った。人間の魔法でも魔王を殺す事が出来ると証明させてほしい。
魔法はオディウムが落ちた場所を正確に狙い撃った。轟音と振動がテルセロ全体を包み込む。空まで届きそうな土煙が人々の目を惹きつける。エリスが防壁を張っていたおかげで爆風による被害は出なかった。
やがて風が吹き舞い上がった土煙が晴れていく。そして大きく窪んだ地面の中央にオディウムは倒れていた。ただ手足を失うこともなく倒れているだけですぐに立ち上がろうとしている。
フラフラにはなっているが、魔法の大杖に自分の身体を預けて何とか立ち上がっている。
「今のをくらってまだ生きてるのか」
レインが驚いているとカトレアが叫ぶ。
「もう一度攻撃!!敵は満身創痍!ここで倒し切ります!」
「了解!」
防壁を砕かれ、何とか立っている状態のオディウムに対し覚醒者たちの魔法攻撃が再度行われる。一切の遠慮もなく、属性だけ注意した破壊魔法が容赦なくオディウムへ向けて放たれた。
もうオディウムに対し接近戦をしようとする者はいない。近付けば何をされるか分からないし、そもそも魔道士が多く集結しているこの場所において近接戦の出番はそこまで多くない。
ここでレインはアルティの方を見た。たった1人で覚醒者たちの魔法攻撃よりも強そうな爆発をずっと起こしている。エリスの魔力はこのアルティの攻撃の流れ弾を防ぐ為に全て使われている。
オディウムを見る限りもうレインがいなくても倒せそうな感じだ。そもそもレインはあの攻撃の中に入る事は出来ない。
「アルティ……カトレア、俺はアルルとアルティの方へ行ってくる。このドラゴンたちを置いていくから頼めるか?」
「もちろんです。あの魔王は我々だけで倒してみせます!もう間も無く撤退して来たヴァイナー王国軍とも合流できるはずです。このまま攻撃魔法で削り切ります!」
カトレアのその言葉を受けたレインは足場竜に命令を出す。足場竜は小さな咆哮で答え、防壁の方へと高速で滑空していく。
そしてある程度近付いた所で頭を蹴って飛び降りた。そのまま防壁の上を走ってアルティの近くまで移動する。その途中にはエリスたちもいた。
物凄い魔力の波からエリスを守る為にルーデリアが側に居てくれた。ルーデリアも近接戦特化の為、魔法攻撃戦には参加できない。レインと同じく浮遊能力もないからとりあえずエリスの護衛に徹してくれていたようだ。
「おい!レイン!何するつもりだ!」
「アルティを助けるんだ。アルティはもう魔王じゃない。前よりも弱くなってる。このまま勢いだけで最強クラスの魔王を倒せるとは思えない。少しでも援護しないと……」
「なら私も……おい!レイン!」
ルーデリアが空を見上げる。レインもすぐにその方向を見る。アルティが放ち続けていた壊滅級の威力を誇る魔法を炎で相殺しながら魔王ノクタニスは飛翔した。
ここに来た時の赤龍ではなく人の姿をしている。左手から炎を発射し、右手には燃え盛る炎剣を携えている。
「このクソ女がぁ!お前だけは必ず俺の手で殺してやる!!」
怒り狂ったノクタニスはアルティへ突撃しながら全身から炎を噴き出す。普通の人間はもう近付く事すら出来ない。オルガの氷のスキルを使ってもノクタニスの元に辿り着く前に消えてしまうだろう。それほどの熱量を周囲に撒き散らかす。
「あっついなぁ!…………お?」
アルティはノクタニスの炎から逃れる為に距離を取る。その時にこちらまで来ていたレインと目が合った。そしてオディウムの方を一瞥した後、レインたちの視界から消えた。
レインたちもそうだが、魔王ノクタニスですらアルティの転移に目が追い付いていない。
「アルティ……どこだ……」
レインはノクタニスに悟られないように小声で話す。アルティが戦ってくれているのに、自分が余計なことをして邪魔するわけにはいかない。そんな時、レインは肩を掴まれた。
「オディウムはそのうち死ぬっぽいね。いやもう死んでるんだけどね!」
「…………何してるんだ?」
「え?いやー今の私じゃあの羽付トカゲには勝てそうにないのよ。やっぱり弱くなったもんだ。というわけでさ」
アルティはレインの両肩に手を置いた。そして満面の笑みを見せる。こういう時のアルティは碌なことをしない印象が根強い。主にレインにとってはだ。
「………………な、なに?」
「その身体少しだけ貸してくれる?」
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