第336話
"レイン、今のそいつはもう死んでいる。別の魔王に殺され、傀儡のような扱いになってる。だから魔法、スキルを完全に無効化する能力は消失してる。
でも魔法の能力だけはそこそこだから注意が必要だ。今の魔法は空間を断絶する斬撃魔法でソイツの切り札だ。いつもなら価値を見極めるとか気色悪い事を言って切り札を使わない間にボコボコに出来るんだが、今のソイツは遠慮なくガンガン使ってくる"
アルティのチクチク刺さりそうな棘のある説明が淡々と行われる。
"とりあえず警戒すべきはそれの切り札の断絶魔法だ。それは発動時に見ている景色の絵を剣で斬り裂くみたいに全てを両断してしまう。射程は地面に当たるか、今見てている範囲……大体14〜15km先までの全てを両断する"
"なんだよそれ……じゃあ発動されたらどうやっても……"
"まあそれだけ聞くとヤバいかもって思うかもだけど、そこまで心配はいらない。弱点もそこそこ多いのが雑魚魔王と呼ばれる所以だ。呼んでるは私とアルルくらいだけどね。まず防御せず逃げに徹する事、斬撃の幅は15cmくらいだからちゃんと見ておけば回避出来る。白く発光してるから分かりやすいね。
あと斬撃を曲げることは出来ないからただ真っ直ぐ突き進む単調さもある。速度も私の本気のパンチの7割くらいの速度だからレインにも回避できるはずだ。それさえ警戒しておけば頑丈なカトレアみたいな感じに思えばいい。なんかこっちに向かってくる魔力も沢山あるからそれまで耐えるんだよ!じゃ!"
とりあえず言いたい事を言ったアルティはレインからの質問も受け付ける事なく念話を切断した。それと同時にオディウムは別の魔法を放とうとする。
次は槍ではなく白銀に輝く剣が数十本連なって輪っかを形成しながら、オディウムの周囲をクルクルと旋回している。
レインはより警戒を強める。残っている盾と剣を追加で召喚し、同じようにレイン自身の周囲を旋回させる。アルティが言っていた援軍の到着までとりあえず抑え込む。援軍が到着すれば倒す方向で考える。
「………………………………」
オディウムは目を見開き杖をレインへと向けた。それに合わせて白銀の魔法剣は空を舞うように切先を向けてレインへと向かっていく。
それと同時に龍王白魔が動いた。黒色の魔法陣をオディウムの背後に2つ展開した。さらにレインを守る為の防御魔法の魔法陣も展開する。防御魔法は指示したが、後ろにある黒い魔法陣は分からない。これは龍王白魔なりに考えての行動だ。
「とりあえず……回避優先で行くから、足場竜頼むぞ?」
名前がないと不便だけど今更何か新しい名前を考えるのも面倒だ。だから足場竜という雑な名前を付けた。
足場竜は小さく唸り、返事をする。そしてこちらに向かってくる白銀の剣に対して後退しながら高度を上げて回避しようとする。高度を下げれば街へ落ちる可能性がある。だから空中へ切先を向けて何もない草原の方へ弾き飛ばす。
しかし、その白銀の魔法剣がレインの元まで来ることはなかった。
ガアアアアッ!!――と巨大な咆哮を上げながら黒い魔法陣から2体の龍王が出現した。出て来たのは飛行能力を持つ龍王嵐雪と龍王龍刃の2体だ。オディウムの隙をつくように魔法を放った瞬間を狙って出現し、まるで状況を理解していたかのようにオディウムへ炎と風の
死んでいて操られているとはいえオディウムは魔王だ。ただの魔王の兵士であるドラゴンの
いくら魔王といえどまともにくらえば負傷する。魔王としてのスキルがないオディウムであればそのまま消し飛ぶ可能性だってある。
オディウムはすぐに魔法剣の召喚を解除した。そして幾重にも折り重なるように
オディウムの防壁は3体の龍王から放たれた
そしてオディウムはレインの方をまっすぐ見て魔法の詠唱を始めた。
「〈
オディウムの持つ杖の先に白い光が集まっていく。その光を見たレインは心臓の鼓動が大きく跳ね上がる。あれを避けることは難しくない。ただあれが街の中央に落ちるとそれだけで人類の負けが決定的になってしまう。
「龍王ども!そいつに魔法を撃たせるな!!」
レインは魔法剣を回避するために距離をとっている。今から全力で接近しても間に合わない。間に合う可能性があるのは背後をとっている2体の龍王だ。
何としてでも魔法の発動を止めなければならない。発動させたとしても上空に撃たせるなどしないと地上がめちゃくちゃになる。これ以上自分と大切な人たちが暮らしている街に被害を出させる訳にはいかない。
レインの命令を受けた龍王たちは一斉にオディウムへと突撃する。まだ詠唱も白い光も集まりきっていない。これならまだ龍王たちの方が速い。
しかし、オディウムが展開した防壁から炎、風、光の
いきなりの反撃で龍王たちは反応できなかった。3体の龍王は同じ階級の龍王が放った
すぐに再生するとはいえもう間に合わない。オディウムの断絶魔法は完成し、今その杖から放たれる。
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