第281話
◇◇◇
「よし着いたな」
レインたちはレインの屋敷の庭に着地する。カトレアやニーナたちも一緒に転移した。
「着いたー!」
リンの元気な声が耳元で響く。アスティアに転移してもらう前もその後もずっとレインにしがみついていた。何故かレインの事をかなり気に入ったようだ。
その光景を見た姉のリルの方も次第に母親であるソフィーからレインの方へとやってきて、今では服の裾を小さく掴んでいる。これで子供たちからも顔が怖いだけで悪い人ではないと理解してもらえたようだ。
「では私はシャーロット様に報告してきます。レインさんはお疲れでしょうからここに来るように話をしてきます」
そう言ってニーナは屋敷を出て行った。
「レインさん!お帰りなさ……い?」
と、さらにレインたちの気配を察したアメリアも屋敷から出てきた。が、レインが抱えている子供を見て止まった。確実に変な誤解を生んでいる。
「えーと……その子は?」
「変な誤解するなよ?ヘリオスで保護したんだ。色々あってここで働いてもらうことにしたんだ。居候も増えたしいいかなって。部屋ってまだ余ってる?」
「え、ええ……レインさんのような部屋はありませんが、使用人用の部屋ならまだたくさんあります。……ただその子供も働かせるのですか?」
「いやいや働くのはこの子たちの母親だ。ソフィーさんだ。で、こっちがメイド長……で良かったっけ?まあ使用人たちをまとめてるアメリアだ」
「よ、よろしくお願い致します!」
前に一歩出たソフィーはアメリアに深々と頭を下げる。
「はい、よろしくお願いします。しかし……その子供たちはどうするのですか?」
「……そうだな」
ずっとお世話をするというわけにはいかない。いつかは働いてもらわないといけないが、ずっとここでというのも良くない。選択肢くらいは用意してあげないと可哀想だ。
「エリスと一緒に学園に行ってもらう?勉強ならクレアがいれば問題ないだろうしね」
アメリアにはまだ巨大ダンジョンの事は話さない。余計な不安を与える必要はない。どうせそのうち誰もが分かるようになってしまう。
「かしこまりました。レインさんはこの後どうされますか?食事もお風呂もすぐにご用意可能ですが……」
「とりあえずこの子たちをお風呂に入れてあげてくれ。食事も……子供が食べられそうなので頼む。あとクーデリカはいるか?」
「お風呂と食事に関しては承知しました。クーデリカ様でしたら今は暇つぶしといって買い物に行っておられます」
「そうか。……で、もう少ししたらシャーロットさんがここに来ると思うから応接室の準備もしてもらえる?それまでには俺もお風呂入って準備するよ」
「かしこまりました。では……ソフィーさんたちはこちらへどうぞ」
ここでソフィーたちはアメリアに任せた。レインも久しぶりに屋敷へ戻り休息を取れた。
◇◇◇
「レイン様……この度は本当にお疲れ様でした。向こうでの報告は兵が戻り次第受け取るとしましょう。それでニーナさんから緊急の連絡があると聞いておりますが……あの巨大ダンジョンと何か関係があるのですか?」
レインの屋敷にはシャーロットがいる。それにニーナとイグニス王立護衛隊の指揮官と呼ばれる人も来た。カトレアももちろん同席している。
現在、少し遅れているが聖騎士ギルドのSランクマスターも王都アルアシルからこちらに向かっているとの事だ。
撤退命令が出されてからまだ数時間も経過していない。しかし既に世界中に噂が流れている。
すべての超越者を動員した連合軍が撤退した。それと同時に世界を取り囲むように巨大ダンジョンが出現した。かなり離れた場所からでも直接視認できるし、魔力感知に長けた者なら直接見えていなくても察知できるような魔力量だ。
だから大国であればすぐに察知する事が出来るのだろう。
「はい、敵が来ます。それも1年後くらいに」
「…………敵……とは?」
「神魔大戦で神によって魔界へ撃退された魔王軍です。途方もない数のモンスターがあの巨大ダンジョンとSランクダンジョンから溢れ出し人類を滅亡に追いやります」
「………………っ!」
シャーロットは絶句する。他の者たちも同様だった。レインが冗談を言っているようには思えない。ニーナとカトレアの表情から見ても本当の事だと理解させられる。
「…………分かりました。では我々はどうするべきですか?」
「今の話を信じるんですか?」
自分から言っておいて何を聞いているのかとレイン自身でも思った。しかしシャーロットのような王女がレインの言葉をそのまま信じ、どうすればいいのかと聞いた。それだけ信頼してくれているという事だろうか。
「私はレイン様の言葉に絶対の信頼を置いております。故に私はレイン様の言葉を疑ったりはしません。それに今この状況でそのような冗談を言う人ではありませんからね。
では質問に戻ります。私たちはどうすればいいですか?人類を滅亡に追いやるほどのモンスターに対してどのように立ち向かえばいいですか?」
「……えっと……それを……相談しようかな……と」
「………………はい?」
「……え?」
魔王と魔王が率いるモンスターの大軍が来るのは知っている。とりあえず戦わないといけないという事も分かってる。戦う為にはみんなの協力が不可欠という事だって理解してる。
ただどうしたらいいのかと聞かれてもレインの頭では分からない。覚悟を決めたからといって頭が良くなるわけでもないし、いい案が思い付く訳でもない。
レインの乏しい頭脳はどこまでいっても乏しいのだ。
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