第227話
◇◇◇
ゴロゴロしていたら2日なんてあっという間に過ぎてしまう。
朝早めに阿頼耶に起こしてもらい寝惚ける頭を必死に叩き起こしてモソモソと食事を取る。
そんな事をしながら阿頼耶に今回の参加を教えてもらう。結局神覚者は3人だけらしい。ただSランク覚醒者が過去最高に参加しているらしい。人数は20人くらいとの事だ。という事は1番多い人で3回か4回くらい勝たないと決勝には行けない。
そして人数が多いせいでこんな朝早くに起こされる事態となった。
「レインさん…決闘の職員が迎えに来ております」
「早いな。すぐ準備して行くよ」
◇◇◇
「レイン様、この度も参加していただきありがとうございます。ルールの説明などは必要でしょうか?」
レインは職員の女性と2人で歩きながら闘技場内を進む。ここからはカトレアとも気軽に会えない。もちろん阿頼耶とアメリアにもだ。負けるか、1日の試合が完了するまでは控え室で待機する事となる。
ただレインは今回も1回戦目からの試合となった。ちゃんとくじ引きで決めているから公平らしいが信じていない。控え室ではなくそのまま懐かしく感じる大きな扉の前に立った。
「…………神覚者じゃなければいいなぁ」
もしこれで反対側の扉からカトレアが出てきたらどうしようかと思う。
しかし……。
「お待ちください」
入場しようとした時に止められた。あのうるさい審判の声も聞こえない。
「何があったんですか?」
「レイン様の不戦勝となります」
問いかけた女性職員がそう言った。何とも申し訳なさそうな顔をしている。
「え?不戦勝?何でですか?」
「相手の覚醒者はSランクだったのですが、相手がレイン様だと知ると棄権しました。戦わずして逃げるより観衆の面前で成す術なく敗北する方が恥だと考えたようです。ですので2回戦進出です。おめでとうございます」
「………………どうも」
全然嬉しくない祝福だった。
◇◇◇
「…………はぁー……暇だな」
決闘が始まってから2日目の控え室。今日は準決勝が行われる予定だ。シャーロットさんからの依頼でカトレアと一緒に『決闘』に参加したが、レインの対戦相手はほとんどが試合開始直後に棄権した。
相手がSランクばかりでそもそも勝ち目がないと思ってしまっているのが原因の一つだろう。前回は反対に神覚者ばかりだったからこういう事もあるのかもしれない。
盛り上がりに関しては言うまでもない。どちらが勝つか予想する事すら出来ず賭け事としては破綻している。そもそも試合が行われないのだから当たり前だ。
カトレアに関してはちゃんと戦闘をしているらしいから羨ましい限りだ。たまに大きな振動が起きている。
闘技場に入るというか入り口の前で何もせずに控え室に戻される。今回は神覚者よりもSランクの方が多いし、出場者自体もかなり多いらしい。だから試合の数も多いからただただ待たされる時間が圧倒的に長い。
カトレアも出場しているから控え室も別だし、出場者用の部屋も当然別々だ。
「この調子なら決勝はカトレアと戦う事になるだろうなぁ。多分勝てるだろうけど………いや勝てるかなぁ」
レインは遠距離攻撃手段が乏しい。自分だけで戦うなら完全に近接戦闘特化だ。カトレアの魔法とは相性が本当に悪い。学園でもボコられた。
レインがカトレアと戦う事を想定して動きを考えていたその時……。
ズズゥン……と闘技場全体が深く振動した。闘技場で大きな爆発があったようだ。
「……カトレアか?あの天使たちを召喚したのか?」
単騎でもめちゃくちゃ強いカトレアがあれを召喚する必要があると判断するほどの相手がいたのか?
「…………今回出てる神覚者って3人だったよな?俺とカトレアともう1人初出場の奴がいるはずだから……そいつか?」
レインは優勝経験者だから参加者のランクと人数は教えてもらえた。ただ名前などは今回から教えてもらえなくなった。
色々不都合があったとの事で名前と出身は伏せられたみたいだが、どうせ名前を見ても分からないし、覚えられないので気にしていなかった。
ズドンッ!――とまた大きな爆発音と振動がこの控え室まで伝わる。天井からパラパラと埃のような、壁の破片のような物が落ちてくる。
「これ……カトレア本気だよな?そんなに強い奴がいるのか?」
その後も爆発音や振動がずっと続いている。これまで全ての試合が数分で終わっていたのに今回はかなり長い。今行われている試合で勝った方が間違いなく決勝でレインとあたる。確実にカトレアが来ると思っていたが違うのだろうか。
待つのに飽きたレインは控え室を出ようとする。基本的には控え室で待つようにと言われているが、外に出ても駄目とは言われないと思うから見学に行きたくなった。
レインが部屋を出ようとドアノブを握ったタイミングで控え室がノックされた。
レインは慌てて手を離して椅子に超高速で座る。勝手に出歩こうとした事がバレるのは嫌だ。控え室の外を誰かが走っているのは分かっていたが、まさかここに来るとは思わなかった。何故ならまだ戦闘の音は聞こえているから。
「は、はい!」
「失礼します!レインさん!!」
入ってきた……というより突入してきたのは久しぶりに見た気がするローフェンだった。馬鹿みたいな魔力を放っているのに何故気付かなかったのか自分でも分からない。ちゃんと見てなかった。
「ど、どうしました?あと久しぶりですね」
「あ…お久しぶりです……って!今はそんな事どうでもいいです!カトレアさんを止めてください!もう勝ち目はないのに……自分を回復しながら無理やり戦ってるんです!私や審判では試合を止めるどころか近付く事も出来ません!」
ローフェンの言葉に一瞬だけ固まる。だがすぐに立ち上がってローフェンの元へ行く。
「…………行きます!後から治癒系の覚醒者と一緒に来てください!!」
「は、はい!」
レインはローフェンを置いて走った。カトレアが負けている?勝ち目がない?あのカトレアを圧倒できるような奴が初出場?どこの誰なんだ?
レインの疑問は尽きない。ただ今はとにかくその試合を止めないといけない。カトレアが死んでしまうのだけは絶対にあってはならない。
ローフェンがいるとはいえ安心しきるのは良くない。レインはうろ覚えの通路を走った。
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