第174話
「あー……それ俺もくらったよ。それも魔法なのか?」
レインはカトレアの横に立つ。そして気になった事を聞いてみる。
「あれは召喚した時のおまけみたいな物です。天使の足元にあんな感じの爆発が起きます。レインさんとの愛の巣を壊す訳にはいかないので少し離れた場所に召喚したんです」
「……なるほど」
大天使が放つ光で周囲が照らされる。その天使が見る先、レインたちの視線の先にあった森は無くなっていた。そこには円形に窪んだ巨大な更地だけが残っていた。
"…………俺の魔力も減ったな。傀儡も何体か巻き添えになったな。こんな爆発をよく生き延びたもんだな"
「ふむ……出口が出現しないという事はあの辺りにボスはいないという事ですね。こうなったら私もレインさんの駒のように手当たり次第、暴れ回らせて破壊の限りを尽くしましょうか!」
カトレアは手を叩いて魔法を詠唱する。
「〈
またまたレインにとって嫌な思い出しかない天使が4体召喚された。あの時は厄介この上なかったが、今は味方だ。それがどれだけ頼もしいか言葉には言い表せない。
「レインさん……レインさんの駒はどの辺に集中してますか?少ない所に天使たちを突撃させます」
「えーと…………あっち?」
レインの傀儡はバランスよく散っている。が、番犬を向かわせていない方が若干手薄ではある。だからその方向を指差した。
「ありがとうございます。天使たち……あちらの方向にいる生命体を殲滅なさい」
カトレアの命令を受けた天使はすぐに行動する。4体の天使は物凄い速度で飛んで行き、大天使もそれについて行くように少し遅い速度で飛んでいった。
そしてすぐにその方向から爆発音が聞こえるようになった。レインはその方向にいる傀儡に指示を飛ばす。
"お前たちは左右に分かれて別の傀儡たちと合流しろ。天使は味方だから攻撃するなよ。万が一天使が攻撃されれば助けてやれ"
「さて……天使たちは広範囲の破壊魔法を使います。これでかなり効率は良くなったはずです。出口の出現を見逃さないようにして私たちは寝ましょうか!もう私はお付き合いしてるんですから!」
「………………付き合うって何するんだ?」
「え?!…………いやぁ…私も男性の方とお付き合いした事ないのでよく知りませんが」
「知らないのにあんな結婚、結婚言ってたの?」
「まあ細かい事はいいんです!恋人関係でなければ、こんな風に手を繋いだり身を寄せたりする事もありませんから。でも……もしレインさんとそういう関係になれたらしたい事があったんです。抵抗しないで下さいよ?」
カトレアはレインの正面に立ち真剣な顔で問いかける。
「…………場合による」
「大丈夫ですから!」
カトレアはレインにジリジリと近付く。そして腕を回して顔を近付ける。
「この前のお礼です。でも唇にはしません。それは結婚した時の為に残しておきます。今は……これで……」
カトレアは目を閉じてレインの頬へキスをした。抵抗するも何も、首をガッチリ固定されているせいで動けない。頬に感じる柔らかな感触に少しだけ動揺した。
カトレアは俯きながらレインから離れた。レインも今自分が何をされたのかを理解して赤面する。手でその部分に触れて黙る。
「………………へぁ」
「おい!」
カトレアが変な声を出して前向きに倒れた。ギリギリでレインが受け止めたが、自分からやってもこうなるならやらないで欲しかった。
◇◇◇
「………………んん」
カトレアは陽の光に起こされる。知らない間にベッドに寝かされていた。寝惚けた頭を左右にフラフラと揺らしながら昨日の事を思い出す。
"わ、私!レインさんにキ、キキ、キス……した。ほっぺただけど……キスした。もう完全に恋人ですよね?初めて……人生で初めて好きになった人と関係を持てるなんて……"
カトレアは横で寝息を立てているレインを見る。そして微笑みながら頭を撫でた。
「…………なんて愛おしい御方。あんな事をした私を拒絶せずに接してくれて、微笑んでくれて、触れ合ってくれる」
カトレアはレインに近付く。そのまま寝ているレインの頬に昨日と同じように口付けをする。
「…………もう一度……もう一回…………あともう一回だけ」
そう呟き何度も口付けをした。それだけでレインは起きず、違和感から逃れるように寝返りをうった。
「好きです……レインさん。本当にどうしようもないくらいに愛してます。もうどうしていいか分からないくらいに。早くここを出て世界に私との関係を発表しないといけませんね。貴方は優しいから……敵でなければ誰にでもその瞳を向けてしまう。…………どうして涙が出るんでしょう」
カトレアは涙を流す。手で拭った側から滴り落ちる。そしてそれはレインの顔にパタパタと落ちていく。一度寝たらなかなか起きないレインであっても目を覚ます。
「…………カトレア?泣いてるのか?……大丈夫か?」
レインは手を伸ばす。ただ寝起きの目が開かない感じと陽の光の眩しさのせいで距離感が分からない。とりあえずカトレアがいる所へ手を伸ばす。
「…………レインさん…私の瞼に爪が刺さってます。痛いです。もう涙も止まりましたよ?別の理由で泣く所でしたけど」
寝起きはとことんポンコツとなるレインには、頬に手を添えるという高等技術は難しすぎるのであった。レインは大丈夫だと分かったらまた寝てしまった。
「私ももう一度寝ましょ……」
カトレアがもう1度寝ようとした時だった。カトレアは、今いる拠点を中心とし広範囲に展開した探知魔法に複数の反応があったのを察知した。
「この反応…………相手は普通のモンスターではありませんね。でもどうやってレインさんの駒と私の天使の攻撃を掻い潜ったの?……とりあえずレインさんを起こさないと………………氷魔法で!」
その数秒後、拠点周辺にレインの叫び声が響き渡った。
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