番外編3-4





 そしてレインの総資産は最低でも1,500億を超えた。家も土地も無料でもらっている。エリスが通う予定の学園もシャーロットが決めてくれた。


 エリスが通う予定の『王立イグニス学園』は貴族のように金がある奴が将来、爵位を継ぐための材料として入学するか、一種の才能を認められた数少ない平民が厳しい試験を突破して学費免除で入学する場所だ。

 エリスはレインの妹特典で試験もなく合格でき、年間数百万は必要な学費も免除となった。

 エリスの学力を心配したがクレアやアメリアからすると全く問題ないとの事だ。

 元々が頑張り屋な性格だという事とこれまでずっと抑制され続けた生活から解放され知識欲が爆発しているようだ。


 エリスの病気が治って、毒人形を撃退してから数日経った時に、アメリアにその事を聞いたら目を逸らしながら既にレインよりも頭が良いというような事をサラッと言われた時は吐きそうになったのを覚えている。


 エリスが入学するのはもう少し先だ。今は時期が中途半端で他の学生たちが入学するタイミングに合わせたらいいとシャーロットからアドバイスをもらった。


 だから入学へ向けての準備を必死でしている最中だ。その学園もレインたちが住む街『テルセロ』にあるから離れずに済んだ事がレインにとっては1番大きかった。


 とりあえず本来は大金が必要なはずの学園に関しても無料となった。お金に関してはもう考えると疲れるのでやめた。


「…………まあいいです。使い道はまた考えます。……あーそれで世界中の国が俺に会いたいっていうのはこれのせいなんですね?」


「そういう事になります。Sランクダンジョン攻略に最も貢献した者を自国ではなく他国の覚醒者から選んだ。そして『決闘』にも優勝したという実績がレイン様の評価を最高潮へと高めたのでしょう。……ただ……前にもお願いしましたが……あの……」


 シャーロットは言いづらそうに下を向く。何が言いたいのかはレインにも理解できた。


「別にこの国を離れようとは思ってませんよ?エリスもここが好きだって言ってますし、色々良くしてくれますからね」


 単純に引っ越しも面倒だ。エリスだっていきなり環境が大きく変わるのは嫌だろうからここでいい。


「ありがとうございます。これからも何かご要望があれば何でも仰って下さいませ」


◇◇◇


「お待たせ致しました」


 その後、すぐにアメリアたちが料理を運んで来た。エリスもほぼ同時に部屋に飛び込んでレインの横に座った。クレアも来て、セラやステラも揃った。


 そしてみんなで食事をする。少し早い昼食だ。レインはアメリアの料理を食べながら思う。アメリアが組んだ予定よりも明らかに早いし、人数も増えている。


 いつもアメリアたちはレインやエリスと一緒に食べない。後で食べているらしい。しかし今回はレインが同じ席につかせた。シャーロットやニーナ、アメリアたち4人が急遽加わる形となったのに全員が満足できる量を揃えた。


 みんなで食事を楽しみながらレインがポツリと呟いた。

 

「お前はやっぱり凄いよ。なんで最初はあんなに卑屈だったんだ?」


 レインはアメリアと出会った時のことを思い出す。まだ1年も経過していないからよく覚えている。自分は他の妹たちと違って何もできないとか言っていた。自分の命を犠牲に助けようとしていた。


「…………私はステラやクレアと比べたら得意な事などありません。ステラのように人を守れる力もなく、クレアのように先を見通すような知能もありませんから」


 アメリアは食べるのをやめて、俯きながら話す。レインにはよく分からない。アメリアにも十分過ぎるほどの才能があると思う。強さくらいしか取り柄のない自分とは比べるのも失礼だ。

 

「いや……確かにそうかもしれないけど、それ以外のことは全部出来るよね?」


「そんな事はありまッ」


「あります!!!」


 またセラがデカい声を出して立ち上がる。レインの横で黙々と食事をしていたエリスが驚いて咽せそうになったから背中を撫でた。この子……1回本気で怒らないとダメかもしれない。


「アメリアさんが何も出来ないとか言っちゃったら私はどうなるんですか?!アメリアさんなんて全部のことを普通の人以上に熟しちゃうじゃないですか!容姿端麗!眉目秀麗!才色兼備!全部持ってるじゃないですか?!」


「……セラ、今の言葉は意味が被っています。この場合は才色兼備だけで」


「ほら!頭も良いじゃないですか!私はかろうじて聞いた事がある単語並べただけで意味なんてよく分かってないんですから!」


 ……それはそれでどうなんだろう。セラを手放しで援護できない自分がいる。ただ自分も言葉の意味は理解していないから何とも言えない。


「そして!!そして!!ご主人様!!」


「……え?俺?」


 セラが突然、レインを指差す。ただすぐに立ち上がったアメリアに腕を下げられていた。指を差すなという事だろう。


「はい!アメリアさん最強の魅力はご存知ですか!」


「え?……えーと、料理が」


「ちっがぁぁう!!」


「……すいません。……と言いますか貴方……人が変わりました?」


 セラの普段と違う気迫に押されて敬語になってしまう。料理が冷めてしまうから食べながらでは駄目だろうか?

 

「アメリアさんの最強の魅力は!!」


 セラはアメリアの後ろに回り込む。アメリアは不思議そうに顔だけセラの方へと向けている。そしてセラは両手でアメリアのそれを鷲掴みにして持ち上げた。


 

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