番外編3-3






 ◇◇◇


「それで……最近の世界の動きっていうんですか?どんな感じなんです?」


 レインたちはメルクーアのSランクダンジョンをクリアした。レインの傀儡たちは数も強さも増えて一つの国の軍隊に匹敵する強さを得た。

 ただそれを公開してはいない。必要性も感じなかった。あの場にはオーウェンやシリウス、オルガやレダスもいた。どうせすぐに広がるだろう。とりあえず気になったので聞いてみる。


「……今日はこの話をする為に来たわけではないですが……聞かれればお教えする必要がありますね」


 シャーロットは前置きを挿みつつ話をする。本当にただ会いにきただけのようだった。


「まずはレイン様との会談を望む国が全世界となりました」


「………………はい?」


「現在、中小国や大国など世界各国から国と認定されている国家は45カ国ございます。我が国イグニスを除いた44カ国から何かしらの形で会いたいという申請が来ております。

 国家間の書類を担当する者がその処理に追われて泣いていましたね。今は人員を3倍にして対応しております」


「要は全ての国が俺に会いたいって言ってるって事ですか?……なんで?」


 レインは自分のように言葉遣いも知識もちゃんとしてない奴はどこからも求められないと普通に思っていた。


「前々から思っておりましたし、直接お伝えしたかもしれませんが、レイン様はご自分の価値を理解しておられないようです。レイン様…………『海魔城』攻略における貢献度の発表は確認されましたか?」


「…………なんですか?それ?」


 貢献度?初めて聞いたから確認どころか存在も知らない。……知ってないとヤバいやつか?


「……申し訳ございません。私が説明しておりませんでした。攻略貢献度というのはダンジョン攻略に伴い、誰が、どの程度貢献したかを数字で表したものです。

 貢献度の発表はAランク以上のダンジョンが対象で、大国に分類される国家の覚醒者が2カ国以上、中小国の覚醒者が5カ国以上参加した合同攻略戦において発表されます。

 興味がなければ見る必要はないです。実は私もちゃんと見るのは初めてす。ただ今回はSランクダンジョンなので、世界中の国々が貢献度表を申請しているんです」


「…………申請」


「はい、攻略完了後に生き残った者たちの証言などを踏まえて厳正に評価して発表されます。攻略に参加した国が優先的に資料として配布されます。その後、参加していない国も申請してお金を払えば資料が貰えるんです」


「へぇー……ダンジョンの内容とかは載ってるんですか?」


「それは載っていません。ダンジョン内部の情報は国益を考えれば広めるものではないと判断されます。ただ生き残った覚醒者たちに守秘義務はありません。

 なので私たちにはその情報を広めないようにお願いするしかないのが現状ですね。

 …………で、これがその貢献度表です。既に申請した国にも届いていると思われます」


 シャーロットは持ってきていた鞄から1枚の紙を取り出しレインへと渡した。


――Sランクダンジョン『海魔城』攻略完了に伴う各覚醒者の貢献度――


1位……イグニス 『傀儡の神覚者』レイン・エタニア

2位……メルクーア『氷牙の神覚者』レダス・イスベルグ

3位……イグニス Sランク覚醒者 ニーナ・オラクル

4位……メルクーア『凍結の神覚者』オルガ・イスベルグ

5位……ヴァイナー『殲撃の神覚者』オーウェン・ヴァルグレイ


以下は別途資料に記載。上記の覚醒者にはメルクーア王国規則に基づき褒賞金を渡すものとする。


――というような文章だった。


「……俺が1位?」


「そのとおりです。メルクーアはあのダンジョンを攻略出来たのはレイン様の存在が最も大きいと判断したようです。厳正といっても自国の覚醒者を優先してしまうのは仕方ない事です。

 それでもレイン様を1位としたのはそれだけ他の覚醒者たちの証言が揃っていたという事でしょう!!まあ、当然ですね!」


「うんうん!当然です!」


 ニーナも合わせて頷く。もしここに阿頼耶がいたら同じような行動をしていただろう。

 

 既に『決闘』で優勝し、名前が知られるようになったレインが攻略戦で1位になった事で、その実力が世界中に知れ渡った。だから全ての国がレインを引き抜こうと躍起になり行動を起こしているって事だ。


「え?……いやみんなの指揮をとったのはニーナさんじゃないですか」


「え?いやいやボスを倒したのはレインさんですよ?私はただ人を配置して自分の目の前にいるモンスターを斬り続けただけなんで……」


 多分、この議論は一生平行線になるからここでやめておく。

 

「それでレイン様はご自分の金庫の残高は確認されましたか?」


 逸れた話を戻すようにシャーロットが話す。


「……いえ、最近は買い物もアメリアたちに任せているので全然知らないですね」


 そもそもレインに物欲はない。神話級ポーション以外に欲しいと思った物がそこまでないせいでお金に関しても無頓着だ。


「そうでしたか。一応報告しておきますね。先日、国王陛下から直接金庫の方へ今回の褒賞金を入れさせていただきました。

 まずは当初の約束通り契約金として1,000億Zelですね。あとはメルクーアが獲得した魔法石の総額が120兆Zel規模だったとの事で、その20%である約24兆Zelがメルクーアから我が国へ支払われました。

 一部はレイン様が以前希望されていた各村へのダンジョン攻略対策へと回されます。これだけあれば全ての村や町に一定の兵士を配置できるでしょう」


「……そうですか。それは良かったですけど……そんなにお金いらないんですが……」


「あー……それと……ですね?向こう10年間は国内にメルクーア産の海産物が安価で数多く入る予定です。これで国内の食料問題も一気に解決できます。ただレイン様と『黒龍』の皆さんのおかげで得たお金を全て国の為に使うというのはあまりにも勝手と判断しました。

 お金は要らないと仰っておりますが、『黒龍』から参加されたSランクの方々にはそれぞれ100億Zel、そしてレイン様にはもう500億Zelを……昨日私が勝手に入れちゃいました!へへへッ!」


 シャーロットは自分の頭を撫でながら舌を少し出す。綺麗な人だから可愛く見えるが、オーウェンやサミュエルがやっていたら本気で殺していたかもしれない。


 

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