第138話
「だから服脱いでって言ってるのよ。私とアンタは顔が似てるから入れ替わろうと思ってね。いきなり私が出てきたら何者かと思われるかもしれないじゃない?私が出ている間はレインの武器にでもなっててよ」
「…………最初からそう言ってください」
そう言って阿頼耶も本来のスライムの姿に戻った。そして着用していた防具だけがその場に落ちた。すぐに阿頼耶は武器の形に変わってレインの手に収まる。
「…………なんかこの感じも久しぶりだな」
やはり阿頼耶は手に馴染む。アルティから貰った剣を使っていたけど、あの場所でずっと使っていたのは阿頼耶だった。
「こんな感じ?勝手にサイズが変わるってすごいね。人間も面白いこと考えるね」
振り返るとアルティは既に阿頼耶が身につけていた防具を着用していた。話し方と髪の長さ以外はほとんど阿頼耶だ。いや瞳の色が違うな。あと抑え込んでいるのだろうけど、溢れ出ている魔力の質があまりにも異質だ。
「あとは……髪だね。死んでも切りたくないから結ぶか。紐ないね。魔法で縛るか」
何やらぶつぶつと呟きながらアルティは長い髪を後ろで一つに束ねる。それだけでもかなり印象が変わる。
「………何?惚れた?」
アルティは髪を結びながらレインの視線に気付いた。そしてニヤリと笑いからかってみる。
「いや……エリスがやったら可愛いだろうなぁって」
「ああ……そうですか」
「なんだよ?」
「別に?」
アルティは機嫌が悪くなってしまった。何故なのだろう?
「でもその姿で阿頼耶を名乗るのは無理があるだろ?見た目は似てるけど髪が……」
阿頼耶の髪は肩くらいの長さだ。しかしアルティは背中の真ん中くらいまでの長さがある。後ろで一つ結びをしているから少し短く見えなくもないが、阿頼耶よりは普通に長い。
「…………成長期って事にしといて」
「いやそれは無理がある」
「もうーうるさいなぁ。じゃあ……お団子みたいにしてみようか」
そう言ってアルティは手際良く髪を結んでいく。すぐに首の位置に髪で出来たお団子?と言っていいのか分からないものが出来た。アメリアがたまにあんな髪型をしていた。
「これでいいだろ?阿頼耶が突然おしゃれに目覚めたとか言っておいてよ。じゃあ行くよ!ここの主人はこの島の地下にいる。別に周りの海を枯らすまでモンスターを倒し続ける必要はないからね?」
アルティがとんでもない事を言い出した。その言葉にレインも耳を疑う。
「な、何で分かるんだ?」
「え?……魔力探知したらここの真下から大きな反応があったから。その反応がずっと地下を通って外側から黒い水になって溢れ出してるって感じかな?このままモンスターを倒し続けても主人の場所には辿り着けそうにないね」
「魔力……探知?それが俺にも出来たらもっと簡単に攻略できたのに」
「……まあまあそんなに落ち込む事ないんじゃない?私とレインでは生きてきた歴史が違うからね。そんなに焦る事じゃない」
アルティは少し俯いたレインの頭を撫でる。
「歴史って……アルティ何さ」
「歳聞いたら全部の骨をへし折るよ?」
「すいません」
「分かればよろしい。じゃあとりあえず行こうか」
そう言ってアルティは歩き出す。地面を見ながら何かを探しているようだ。レインはそれを追いかける。
しかしアルティは島の中心ではなく外側へと向かって歩いていく。下を向き、何かを呟きながら歩いている。
レインは声をかけようと思ったが、集中しているようなのでやめておく。アルティはそのまま森を抜けて海岸へと行く。そこは先程までレインがニーナたちといた所だ。
「レインさん?それにアラヤ……さん?」
ニーナは先程と同じ場所にいた。リグドはいなくなっていた。別の場所に呼ばれたんだろう。そしてニーナはやはり阿頼耶の違和感に気付く。レインだって誤魔化せるなんて思っていない。
「…………あなた、誰ですか?アラヤさんではありませんね?」
ニーナは警戒する。レインと一緒にいるから太刀を抜いてないだけだ。
「いやぁ?阿頼耶だよ。ねぇレイン?そうだよね?」
そう言いながらアルティはレインの肩に触れる。こいつは隠す気がないのかと思った。
「アラヤさんはレインさんをそう呼びません。そのような態度を取った所も見たことがありません。貴方は何者ですか?」
ニーナは太刀に手をかける。これはもう正直に話した方が良さそうだ。そもそもアルティに隠す気がない。
「アルティ、正直に話そう。……ニーナさん、すいません。前に話した俺の師匠の事を覚えてますか?」
「え?……あ、ああ…前にダンジョン攻略後にうちの新人たちの前で仰ってた御方ですね?……まさかその方が?どうしてここに?」
「俺が……」
「いやぁーこの子がSランクダンジョンに行ってるって聞いてね!流石に死ぬんじゃないかなぁって思って助けに来たんだ。まあ見た目が阿頼耶に似てるし、阿頼耶って事にしたら混乱少ないかなぁって思ったんだけど……無理だったね」
アルティはレインの頭をワシャワシャしながら話す。
「そうですか。……失礼ですが覚醒者としてのランクは?あと
やはり聞くよな……とレインは思った。阿頼耶はその辺りはちゃんと考えていた。でも今回はアルティだ。まともに考えているわけがない。
「ランクは……分からないね。昔から魔力を扱えたけど、人とは関わらずに生きてたからね。覚醒者なんてのはこの子に会うまで知らなかった。
だから
ちゃんと考えてたよ。申し訳ない。
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