第111話









 

「……では一緒に攻略してくれるとなった所で自己紹介といきません?あとスキルとか出来ることも全部でなくてもいいから教え合いませんか?連携とれた方が良いでしょ?」



 オルガが話し始めた。これに関してはレインも賛成だった。レインのせいでおかしくなった空気を変えてほしかった。



「そうですね。では私たちから簡単に説明しましょうか」



 ニーナが答える。まずはイグニスの覚醒者から順番に自己紹介していく流れとなった。




◇◇◇



 

「で……俺が最後ですね」



 既にニーナ、リグド、ロージアが話終わっていた。最後がレインの番だ。


 面白い事も言えないから最後だけはやめて欲しかったが、『黒龍』メンバーの間にレインが話すのも意味が分からないから最後にされた。



「レインです。レイン・エタニア。神覚者です。前衛の方が得意です。

 あとはスキル的にモンスターの数が多い所だと1番力を発揮できるかもしれませんね。……えー……よろしくお願いします」



「よろしくー」



 オルガが手を振って返事をする。他の人も軽く頭は下げてくれた。ただ1人を除いて。



「ではこちらも挨拶といきましょうか」



 向こうはやたらと明るい男性が話を進める。サミュエルを彷彿とさせる肉体の持ち主だ。



「俺はジェイです。身体強化スキルがメインでタンク的な役割をしてます。敵の攻撃を引き付ける役目は任せてくれ」



 ジェイは親指を立ててニカっと笑う。やはりアイツが出てくる。何となく仲良くやれそうにないタイプだ。



「アミス……そこのロージアさんと同じ強化支援型のスキルがある。ずっとではないけど空を飛ぶスキルを付与出来る。でも回復はできない……です」



 蒼い魔力のアミスは無口なタイプの様だ。無口すぎるとレインからも話しかけられないから連携は難しいかもな。


 回復は阿頼耶が出来るからダンジョン内では関わる事も少なさそうだ。



 そして……。



「はぁーい、私は『凍結の神覚者』オルガ・イスベルグとこっちは兄で『氷牙の神覚者』レダス・イスベルグ。さっきも言いましたけど、双子の兄妹なんですよ。兄妹で神覚者やってまぁーす!」



 兄妹で神覚者か……やはりすごいな。兄妹なら連携も問題なく出来そうだ。ただその男……レダスの視線が気になっていた。


 何となく睨まれているような気がしたからだ。単にそういう顔であってほしい。



「お兄ちゃんはレインくんと同じで前衛タイプかな?私は後衛の方が気楽で良いけど……どっちも出来るよ!任せてくれて良し!!」



「……と言う事だ。よろしく」



 兄は無口だ。メルクーアには良く話すのと無口なのしかいない。ニーナのようにバランスよく会話してくれる人が欲しい。



「ちなみに……スキルは何を使うんですか?聞いても良かったら教えてもらえると」



 レインはスキルを聞く。一応聞いておいた方がいいと思った。ニーナだって〈神速〉と〈領域〉の事は話している。



「スキルも兄妹で同じなんだぁー。〈氷結〉のスキルだよ。神覚者になった時に冷え性になるし、髪の毛も真っ白になっちゃってねぇ。

 本当に困っちゃうよ。まあ氷の武器を作ったり、投げたり、敵を凍らせたりと色々出来るよ」



「最後に私ですね。面白い事も言えないので簡潔に済ませますね。私は『狂濤きょうとうの神覚者』アリア・フォルデウムです。

 水を操る事が出来ます。……ただ創り出す事は出来ないので、いつもイスベルグ兄妹が創り出した氷を使わせてもらってます」



「……という事は水じゃなくて氷も操れるんですか?」



 ニーナが質問する。この場においてレインから質問が飛び出す事はない。



「氷も一応水なので。……ただ水の方が操りやすいです。海であれば割る程度のことは可能です。ただ魔力も神覚者の中では少なくて魔法も微妙でして……水がない所では本当に役立たずなので向こうの環境によっては……すいません……」

 


 この人のこの残念な感じ……誰かを思い出すような気がしないでもない。

 


「でもアリアちゃんは天然で可愛いんですよ!自分の家の扉も手前に引くタイプなのに、毎回押すんですよ!それで開かないって不安になってるんです。可愛いですよね!」



「………………え?俺?!」



 オルガ真っ直ぐこっちを見ていることに少しして気付いた。



「レインくんしかいないでしょ!アリアちゃん可愛いですよね!」



 そう言われても。自分の家の扉の開け方を間違えた事がないから分からない。扉の開け方を間違えたら可愛いのか?エリスがやってたら可愛いけど……いやエリスは何をやっても可愛いから参考にならない。



 そして当の本人であるアリアは顔を両手で隠して俯いている。長い髪の間から僅かに見える耳が真っ赤になっている。



「えーと……まあそうですね。可愛い?んじゃないですか?」



 とりあえずエリスがやってたらと考えて返事をする。というかそう答えないとこの空気とアリアが助からない。

 


「あ、ありがとうございます。これで終わりましたね。出発は……」



 ニーナが無理やり締めて話を変える。本当に助かった。このままだとダンジョンへ行く前に精神が滅びる人が出てくる所だった。



 ここからの仕切りはニーナとジェイに任せる。この2人が1番そういうのに向いてそうだ。ジェイはうるさいが何処かのバカじゃなくてちゃんと他の人の話も聞ける人だった。



「少し待ってほしい」



 レダスが声を出す。ここに来てちゃんと声を聞く感じがする。


 

「どうしました?」



「レインの力を見たい。神覚者なら新しいスキルがあるはずだ。敵の数が多いと有利?すまないが俺には分からない」



「そう言うことね。俺のスキルはこういうのを召喚するスキルだ」



 レインは上位騎士を1体自分の座る椅子の後ろに召喚する。『黒龍』のメンバーは慣れているから特に大きな反応はしない。

 

 ただ初めて見るメルクーアの人たちは一瞬で警戒態勢に入った。空気と魔力がピリつく。



 召喚された駒だが、見た目は全身真っ黒な鎧に身を包んだ剣と盾で武装した騎士だ。警戒するかと言われる方が難しい。全員がダンジョンの最前線で戦う覚醒者たちだ。



「なるほど……そういう事か。なあ?俺と手合わせしてくれないか?今後の連携のためだ」



「……俺と?」



「この城には訓練所があるんだ。そこでレインの力を見せてくれないか?頼むよ」



 手合わせの理由は連携じゃないだろうな。何となくだけど、この中で1番強い奴をハッキリさせておきたいんだろう。



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