第7話 春の大会


 ――春の大会会場校前――


 とうとうこの日が訪れた。体調も万全でやる気もバッチリ。俺と陽一よういちは一足先に会場校へ着き、先輩達や顧問が来るのを待っていた。


 会場校を出入りする人の中には、ほかの学校のバスケ部や観客の大人や子供など数多く居た。当然ながら知り合いなんて1人も見当たらず、会場校も籠高と離れており、全く知らない場所で緊張もしていた。


「めちゃくちゃ頑張ったし、せっかくなら試合出たいよな〜」


 陽一よういちがそう呟いた。たしかに、試合に出てみたいという思いでキツい練習を頑張ってきたし、何より高校レベルの試合を実際に体感したかった。体験入学初日に感じた、体の接触も技術も体力も、何もかも中学とは違う。そんな高校の本気の試合をしてみたい。


「見るだけでも結構楽しみだけどね〜」


 そんなこんなで話をしていると、1人、2人と、先輩が現れた。次第に全員が集まり、キャプテンの号令で会場校に入る。


 校門から中庭を歩いていると、広い校庭やテニスコートではサッカー部やテニス部などが活動し、校舎からは吹奏楽部の練習音が鳴っていた。

 

 そんな風景を横目に体育館を覗く、とんでもない熱気と盛り上がりをしていた。ちらりとしか見えなかったが、とても速い速攻や当たりの強いディフェンスなど高校ならではの試合をしており、俺の中では心が踊る音が聞こえていた。


 俺達籠高バスケ部は荷物置き場に荷物を置き、現在の試合のハーフアップ前に少し体を温める事になった。もも上げやジャンプ、ダッシュ、腰を落としてのカニ歩きなどのフットワークを順々にこなし、段々と身体が熱を帯びてきた。


「身体冷まさないよーに各自よろしこー。あと、アキラとよーいちはこっち来て!」


 フットワークが終わり、俺と陽一よういちはキャプテンに呼ばれた。ササッと要件を聞きに行くと、キャプテンはカバンから2着のユニフォームを取りだした。


 番号は、『13』番と『14』番。俺と陽一よういちはその赤ベースの籠高のユニフォームを手に取り、俺は13番、陽一よういちは14番を着た。


あか色でイカしてるだろ?」


 キャプテンはニカッと笑った。



 ――試合開始3分前――



 試合前のアップを終え、田中たなか先生を中心にして話を聞く。戦術や相手の動きなどの話や、スタメンの発表をした。


 スタメンは3年生4人、2年生1人。最初からスタメンにはなれないと思っていたが、まじかで高校ガチンコ試合を観察できる。本当にワクワクしていた。


「行ってこい!」


 田中たなか先生の一声に、全員で「おう!」と掛け声を出す。


 相手のスタメン5人、籠高スタメン5人がコートのセンターサークル付近に並び、主審及び副審がコートに入る。そして主審はボールを持ちながらTOにハンドサインを送り、両チームの真ん中に立つと宣誓する。


「こちら、白対赤です。気をつけ、礼」


 主審の宣誓後、両チームはお辞儀をして、騒がしい体育館にも轟くように挨拶をする。


「「お願いします!」」


 会場は応援や声援に包まれ熱気が増し、両チームのスタメンは試合体勢に入る。センターサークルを分断するハーフラインにジャンプボールを行う選手が向かい合うと、主審がボールを宙へ放る。


 会場の視点は宙にあるボール1点に集中し、ジャンプボールをする選手は空高く飛び上がる。


 両選手の指先は同時に触れるが、僅かに相手チームの方へ傾いた。


「すっげぇ面白そう……!」


 思わず言葉が出てしまうほど、ワクワクした試合が始まった。

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Meteor Crimson mochi @m0ch1

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