第4話 8+1


 体験入部が終わった翌週、ちゃんとした本入部の紙がホームルームで担任から配られた。高校生活が始まって一週間以上が経ち、徐々にクラスの人達と打ち解けた俺は友達もできていた。


 そんな友達と何部に入るか、体験入部は何部が楽しかったかなど色々話しながら、俺は入部届の欄にバスケットボール部と書いた。その友達は野球部やバレー部などこ運動系に入る人が多く、同じ運動部としてこれからも仲良くなれそうな感じだった。



 ――放課後――



 いつものように更衣室で着替えていると、扉から陽一よういちが入ってきた。


「お、よーいち! やっぱりバスケ部入るよな?」


 俺は気さくに彼へ話しかけた。彼はバッグからTシャツとバスパンを地面に置き、さらに中身をまさぐってバッシュを取り出した。

 そして俺へと笑いかけ、ガシッと肩を組んで来た。


「ったりめーだろー! 金曜他のやつとか来た?」


 体験入部最終日に顔を出さなかった陽一よういちは、かえで潮田うしおだ大地だいちの存在を知らない。1回体験入部に来てくれただけだけれど、俺は彼らにもバスケ部に入って欲しいと期待をしていた。


 陽一よういちと先週の話をしていると、ゾロゾロと更衣室に人が入ってきた。そこには俺たちの知り合いは誰一人も見えず、迫り来る部活の時間に焦りながら俺達2人は体育館へ向かった。



 ――体育館――



 体育館の前で待機していると、部活開始の予鈴が鳴った。しかし一向に先輩達は現れず、俺たちは内心バクバクだった。ひょっとしたら今日は部活無いんじゃないか、どこか別の場所にいるのか、ハブられているのか、など色んなことが頭を巡る。


「アキラー、よーいちー」


 俺と陽一よういちを呼ぶ声がした。振り返ると、そこには制服を着た将暉まさきが手を振っていた。彼に近寄ると、彼は呆れた顔をして言った。


「今日は教室でミーティングだぞ? 何動く気満々の格好してんの笑」


 えー!? と、2人して将暉まさきを見た。俺達には連絡が回っていなかったのか、それとも俺が話を聞いていなかったのか。どちらにせよ、将暉まさきが助けてくれた。


 急いで荷物を担いで、ミーティングをする3年3組へと走っていった。



 キーンコーンカーンコーン――



 部活開始のチャイムがなると同時に、俺たち3人は教室のドアを思い切り開け滑り込んだ。田中たなか先生や先輩達、見覚えのある1年生の全員に笑われた。


「さて、入部届をもらった1年はこれで全員集まった。今からミーティングをする。新太あらた。」


「気をつけー礼」


 気の抜けたキャプテンの号令がかかり、ふにゃふにゃなまま全員でお願いしますと田中たなか先生に言う。


 今回のミーティングの内容はとてもシンプルで、全員の自己紹介と、今後どういうチームにしていきたいか、というものだった。

 

 楽しく思い出になるバスケをするのか、本気で勝ちに行くチームを目指すのか。


 当然ながら前者の方が練習は楽だ。ゲーム中心の楽しい練習をメインにし、走り込みや体作りなどは一切行わない。お遊びバスケで高校3年間を過ごすことになる。


 しかし、新入部員の1年生を含めて、男子バスケ部全員の意思は最初から決まっていた。


田中たなか先生、目標はデカく行きましょう。全国で」


 キャプテンが上を指さしながら言う。その目標に男子の中で異議を唱える物は一人もいなかった。全国というワードに、俺たち1年生はビビりつつも楽しみにしていた。特に煌星こうせいかえで大地だいちがやる気満々だった。


「全国目指すとか楽しみだね〜」


「練習頑張ろう!」


「行けんべ多分」


 それを聞いていた周りの先輩は小馬鹿にしながら笑っていた。それでも、目指す場所は大きくデカく、そして楽しんで目指そうと、田中たなか先生とキャプテンは全体を鼓舞した。


 ここから俺たち9人のバスケ部としての生活が始まる。ポイントガードの煌星こうせい潮田うしおだ、シューティングガードの大地だいち陽一よういち、シューティングフォワードの俺となぎ、パワーフォワードのかえで、センターの悠馬ゆうま、マネージャーの将暉まさき。バランスの取れたチームになれそうで、俺はこの時、すごくワクワクしていた。

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