0.エピローグ

 午前零時を過ぎた。真夜中だ。時計の短針と長針は、盤面の頂点で交わっていた。起き上がる気にならない。俺はベッドに倒れ込んだままだ。

お前のせいだよ。そう呟くと俺は天井と横を交互に見つめる。冷静に、落ち着いて。さっきからずっと、こんな風に無駄な行為を繰り返している。劣等感と焦燥感、そしてそれとは違ったまた何かの感情が俺の脆い自尊心を崩していく。

 前にも、こんな感覚を抱いたことがあった気がする。でも、その時とは事情が違う。ずっと、友達としての関係のはずだった。

 気が付くと、重なっていた時計の長針と短針は長針が少しずつ先へと進んでいく。ああ、もう日付が変わったんだな。眠くない目を無理矢理こすってみたが、自分自身は騙せない。妙に満たされている?脳内を、奴の歪んだ、美しい笑顔が駆け巡った。

 こんなはずじゃなかった…違う、違う…そういうものか?


 午後十二時は、午前零時だ。示す時間は同じ。でも、日付は違う。




     六時の夢、零時の夢 完

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六時の夢、零時の夢(改訂前) 日野唯我 @revolution821480

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