第10話 心臓の音
馬に乗って伯爵邸を出てしばらく
街と伯爵邸の中間あたり
いまだに目を瞑り鞍をギューと握る恋
緊張と怖さと暁都との距離の近さも合間って心臓が飛び出そうなほどバクバクと跳ね上がる。
「(どうしよう、暁都様にこの心臓の音聞こえちゃったら……恥ずかしい)」
さらに鞍を掴む手の力が強くなる、ずっとこの状態では疲労もするし何より手を怪我してしまう可能性があるのだ
その様子が目に入った暁都
「……許嫁殿」
「は、はい!」
「何があってもこの身に変えて君を守る。だから怖がらずに目を開けてみてはくれないだろうか?」
いつもと変わらぬ低音だったが
この時の声は今までにないほど優しく、甘く、心の奥底に届くほどの低音だったろう
「……は、はい…」
自身でもずっと目を瞑っていてはいけないと思っていた恋は暁都の言葉に勇気をもらいそっと目を開けた。
「!!た、高いです!」
「怖いか?」
「こ、怖くないです!……ごめんなさい、やっぱり少し怖いです。でも、伯爵様が一緒だから平気です。」
とそう言い真っ直ぐ前を見る恋
肉に食い込むほど強く鞍を掴んで手も目を開けて恐怖心が減ったからか程よくほぐれている
「…そうか」
怖さが軽減した恋を見た暁都はそう一言返した。
「伯爵様は本に出てくる魔法使いのようですね」
「魔法使い?」
「はい!私が怖がっていたり緊張している時に伯爵様がかけてくださる言葉はすごく安心するのです。緊張してたら怖かったのが嘘みたいにおもえるからまるで魔法だなって!」
「俺はそんな大層なもんじゃないが」
「そうでしょうか?
少なくとも私はすごいと思いますし。私も伯爵様のように誰かを安心させられるような言葉を使えればなぁと時折思うのです。
どうしたらそのような魔法が使えるのでしょう?」
「…いや、心配せずとも許嫁殿にはその魔法が既に使えているさ」
「そ、そうでしょうか??…うーん」
いまいちピンと来ない恋を見ながら暁都は恋と出会った時のことを少し思い出すのだった。
______________君は俺の言葉で安心できると言ってくれたが
だが、安心させてくれるのはいつ何時でも君の方で
初めて会ったあの日から心の中で苦しくもがき疲弊し切っていたにも関わらず常に緊迫していた俺を
心の底から安心させてくれたのは君の純粋な心と言葉だった。
君の言葉に何度も安堵し救われたのだ。
感謝しても仕切れないほどに。
________この二人の出会った過去はまだ少し先で振り返るとしよう
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