第5話 君との歩む道

あの後、雑談を少ししてすぐに昼食が運ばれてきた。


有明 暁都は出された昼食をぺろりと平らげて


向かい合ってぱくぱくとご飯を頬張る皆乃川 恋を微笑ましく見た


「……!す、すいません!食べるの遅くて…」

視線に気づいた恋はそう言って咀嚼を早める



「いや、可愛らしいなと思っていただけだ。俺こそじっと見つめてすまない。」


「か、可愛ら………し……い」

プシューっと音を立てて今にも顔から湯気が出そうだ。


「……許嫁殿はこの後何か予定は?」



「よ、予定ですか??今日は伯爵様が帰ってきてくださる日だったので丸一日予定は入れておりません。」


「そうか?」


「はい」

恋にとってはそれが当然であり淡々と伯爵様のための1日だと言っているようなものだ。本人はそれに気づいていないのがまだ面白い。


「では、食後の散歩を一緒にどうだろうか?帰ってきてすぐにこの屋敷にじゃまをしたから、2年だった街並みをまだよく見れていないのだ。森の中を通っていないので尚更」


「!ぜひ!案内いたします!」


恋はとても嬉しそうに笑うのだ


____食事を終えてすぐに二人は屋敷を出た。


皆乃川の屋敷から街までは割と近く街までの道のりには小さな森や野原、田畑があった。


「来る時にも思ったがこの辺りの自然は変わりないな」


暁都は恋には幅を合わせて二人は並んで道を歩く


「はい、2年経ってもずっと変わりありません。あ、今の時期でしたら街に行く途中の小川に大きな桜の木があってきっと満開ですよ!」


「そうか、それは楽しみだ」


小さな木々の間に隠れている動物を見ながら森林を抜け


ふかふかの土とやわからい新芽の出たばかりの草花が生い茂る野原を通り抜ける


途中立ち止まってみたり後ろを振り返ってみたりして


街が見えた。そしてその街の手前にあるのは恋の言った通り街の近くの小川にあるのは大きな桜の木だ。


二人はそこまでゆっくり歩くと足を止める。


「…ほう、これは確かに目を見張る」

桜の大木とその満開な花を見上げて暁都はそう言った。



「でしょ?わたしすごく好きなんですこの場所春にはこうやって花が舞って、夏になれば青々とした葉っぱが木陰を使っていて涼しくて葉っぱの間から差し込む光が幻想的で

秋になれば赤や黄色の葉っぱが小川に落ちてキラキラしながら流れていき冬には木も土も草も小川も雪で真っ白で。」

大切な人と綺麗な景色を共有したい一心で熱心に説明をする恋


「それは…さぞ美しかろう」



「ここは通るたびに絶対に立ち止まってしまうのです。ついつい立ち止まってしまうのはここだけではないのですが…」

そう言いつつも恋はとても楽しそうだ。


「ほう、……俺は2年前もこれからも幾度となく許嫁殿を尋ねるだろう…だが、少なくとも君に言われるまでこの場所に足を止めてこんなにも真っ直ぐに見ることはなかった。」

恋が説明し終わると景色を見ながら唐突にそういう暁都


「??」


「花が綺麗、風景が素晴らしい…頭で思っていても立ち止まることはなかった。ただただ通り過ぎながら見る風景と今、こうして止まって見ている風景とでは違うのだと許嫁殿のおかげで気づいた」


あまり意味がわかっていないようで困惑した顔の恋に続けてそう言うと景色から恋の方へと視線を移す



「!」

二人の視線が交わる


「俺にこの場所に止まることを教えてくれたこと感謝する。」


「いえ、そんな……そ、その…な、夏も、秋も、冬も…ら、来年の春も!いっ、一緒に見ましょう!こうやって立ち止まってみるのもいいですし。お弁当持って来るのも!」


今日きっと恋が1番勇気を振り絞った言葉だろう。

目を逸らさずにそう言い切った


「…!そうだな、ぜひそうしよう。」



そうしてまた街へと二人は歩きだしたのだった








_______乞い願わくば


今日の散歩道のように。


今後の君と過ごす時を

たまには立ち止まり後ろを振り向きながらでも君と一緒に歩んで行けるように。


季節の流れを時の流れをを


許嫁殿の隣で共に感じていけるように。












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